電子音響音楽アトリエ・コンサート
Ateliers et Concerts de Musique Électroacoustique

コンテンポラリー・コンピュータ・ミュージック・コンサート
CCMC 2003
2003 年 2 月 22 日(土) 23 日(日) 東京日仏学院 エスパス・イマージュ

主 催 : 東京日仏学院
音と音楽・創作工房 116(ACSM116)

協 力 : 株式会社サウンドクラフト

2 月 22 日(土)

■ 第1部 16:30〜

柴山 拓郎Takuro Shibayama
宮木 朝子 Asako Miyaki
山本 裕之 Hiroyuki Yamamoto
志賀 浩義 Hiroyoshi Shiga
井澤 岳野 Takeya Isawa
中嶋 恒雄 Tsuneo Nakajima
さとうじゅんこ Junko Satoh
寺嶋 春菜 Haruna Terashima
向山 千晴 Chiharu Mukaiyama
小野 理恵子

■ 第2部 18:00〜

檜垣 智也 Tomonari Higaki
成田 和子 Kazuko Narita
吉原 太郎 Taro Yoshihara
菅谷 昌弘 Masahiro Sugaya
葛西 聖憲 Masanori Kasai
岡本 久 Hisashi Okamoto
松本 日之春 Hinoharu Matsumoto

■ 第3部 20:00〜

ドゥニ・デュフール Denis Dufour
スパイラルSPIRALE op.112

ドゥニ・デュフール Denis Dufour
知られざる大地TERRA INCOGNITA op.101
pour deux acousmoniums et deux interprètes 1998

2月 23 日(日)

■ 第4部  16:30〜

鶴田 聖子 Seiko T suruta
梶井 聡 Satoshi Kajii
勝藤 珠子 Tamako Katsufuji
足本 憲治 Kenji Ashimoto
高原 聰子 Satoko Takahara
平野 砂峰旅 Saburo Hirano
内藤 正典 Masanori Naito
武野 晴久 Haruhisa Takeno

■ 第5部  18:00〜

田中 司恩 Shion T anaka
種子田 郷 go taneda
山本 雅一 Masakazu Yamamoto
由雄 正恒 Masatsune Yoshio
豊住 竜志 Tatsuji Toyozumi
菅野 由弘 Yoshihiro Kanno
上原 和夫 Kazuo Uehara

■ 第6部  20:00〜

講演 ドゥニ・デュフール「現在のアクースマティック・アートの傾向」(通訳付)

Conférence Denis Dufour “ Les tendances actuelles de l’art acousmatique dans le monde”

ドゥニ・デュフール Denis Dufour
追放 EXIL op.85

ドゥニ・デュフール Denis Dufour
3つの楽章からなる組曲  SUITE EN TROIS MOUVEMENTS op.22

ドゥニ・デュフール Denis Dufour
大地は丸い  LA TERRE EST RONDE op.122

曲目解説/プロフィール

1-1 柴山 拓郎 Takuro Shibayama
ピープル People
曲目解説 最初に3分前後という時間の枠組みを決めて作りました。3分間に、ハッキリとした「起承転結」のような時間構造を持たせ、聴き手の次なる瞬間への期待を裏切らないような時間のデザインを心がけました。 素材はほとんど録音したままの音で、それらををどう切り張りするかということに制作上のポイントを絞りましたが、 後半に出てくる女声コラール風の部分だけは元の素材に対して細かな加工をしました。

プロフィール 東京音楽大学大学院修士課程(作曲専攻)修了。 古楽器奏者と作曲家によるグループ「アルコバレーノ」メンバーとして、毎年古楽器のための新作を発表。1996 年頃か ら、インスタレーション作家井上尚子氏へ音響を多数提供。「トキノコダマ」(曽我部清典氏)「風の記憶」(門光子氏) 「HORIZON」(松居直美氏)の各CDに作品が収録されている。 現在、作曲家宮木朝子氏と共に門光子氏の次作CD制作に深く関係中。 作曲を西村朗、池辺晋一郎、湯浅譲二、遠藤雅夫の各氏に師事。
現在、東京電機大学情報社会学科助手。

1-2 宮木 朝子 Asako Miyaki
ユタ – メーディウム YUTA – MEDIUM
曲目解説 medium:media(メディア)の語源。媒介、媒体、霊媒。ユタ(巫者)。
大洋と砂漠、奪われた青のあとに残る鉱物的なその存在。響いた声もまたなにかを奪われる。すべてはディストーショ ンされ、現像された痕跡となり瞬間のなかに静止する。
2002 年 5 月。奄美大島の節田の海岸における自然発生的な島の唄者たちによるセッション、波の音と人々のさざめきや 笑い、同じ旅の中で出会ったユタの声。その「記憶のなかでディストーションされた音響は、時間と空間を越えて海流 に乗り、アイヌの歌声、さらに遠く砂漠の地の歌声と触れる。奇妙な記憶の溯行は尚も続き、「羊水という海」をテー マとしたソロヴァイオリンの変調された音響、そして何かを発見しようと求める、言葉を持たない嬰児の声へと辿り着 く。

プロフィール 桐朋学園大学音楽学部、同研究科にて作曲、電子音楽を学ぶ。
美術/映像作家の兼古昭彦氏との共同制作による<Sweeter than…>-映像と sound installation-が 2001 年 ICMC Commission Award に推薦され、<Boundary Air-境界->-video installation,ライヴエレクトロニクス-は現代音楽祭”Il giardino della musica” (1999/ミラノ)、新しい世代の芸術祭’99(1999/東京)などにて上演される。 現在洗足学園大学音楽学部音楽・音響デザインコース非常勤講師。

1-3 山本 裕之 Hiroyuki Yamamoto
遠近法 Perspectivae
曲目解説 素材の多くは街中で採録したものを使っている。それらを編集しながら私が特に気になったことは、本来「現象」であるはずの音を、切り取られたオブジェクトとして扱うミュージック・コンクレートの手法である。音に形を与えて素材 を扱いやすくするのは一見合理的に思われるが、それでは音の「現象」的な面が見えにくくなり、ともするとその本質 を見失ってしまいかねない。例えば聞こえるか聞こえないかの境界線上にある音、すなわち存在の不明瞭な音はあって しかるべきだし、そういう方面に私の音楽的な興味はある。 不明瞭といえば「意味の不明瞭性」は逆にミュージック・コンクレートの得意技であり、例えば全く無関係の複数の素 材を短い時間内で衝突させることによって意味の撹乱を起こす、という場面もこの作品の随所にもぐり込ませてある。 また素材がもともと持っている遠近感、例えば近接録音とそうでないものの遠近感の関係もザッピング編集で不明瞭に している。 つまり私は「不明瞭・曖昧」が好きなのだ。これは普段アコースティックな現場で実践していることの延長である。

プロフィール 1967 年生まれ。現音作曲新人賞受賞(1996)、BMW musica viva 作曲賞第 3 位(ドイツ/1998)、2002 年度武満徹作曲賞第 1 位など各種作曲コンクールに入賞している。

作品は Le Nouvel Ensemble Moderne (Montreal)、Nieuw Ensemble (Amsterdam)、バイエルン放送交響楽団 (Munich)など、各 地の演奏団体により演奏されている。
2002 年第 51 回神奈川文化賞未来賞受賞。作曲家集団「TEMPUS NOVUM」メンバー。「音ヲ遊ブ」(http://www.netla- puta.ne.jp/~hyama/)を主宰。コンピュータ音楽は素人。

1-4 志賀 浩義 Hiroyoshi Shiga
虚 hollow
曲目解説 ホーキングという物理学者が提唱したものの中に「虚時間」という概念があります。この概念は私が知っている時間の概念とはどうやら別のものらしいのです。無論、私には到底理解が出来ません。この「虚時間」というのはどうやら体 験することもできないようなのです。しかし、私の理解できない時間の概念、時間の感覚、それを自分なりに解釈して みたいと思いました。「虚(うつろ)」という言葉の意味を辞書で引くと、「気力や生気を失い、ぼんやりしているさ ま。むなしいさま。空虚。」という意味と、「中がからで何もない・がらんどうなこと(さま)」という意味がありま す。私にとっての「虚(うつろ)」を表現することにより、私の中での「虚時間」が形になったと思っています。

プロフィール 1974 年 12 月 山口県生まれ 東京都葛飾区在住 音響技術専門学校を卒業後、音響に関する数々の仕事を経験。主にライブハウスやイベントの P.A、レコーディング等で サウンド・エンジニアとして活動中。1999 年 作曲家、コンピュータープログラマーと「Inner-Ear Project」発足。サウ ンドインスタレーションの制作をはじめる。2001 年に開催された インターネット博覧会 愛知県パビリオン 「遊び の企画会議」に参加。その後発足した 遊びのプログラム開発をおこなうグループ「CAFE2002」(旧:遊びの企画会 議)に参加。

1-5 井澤 岳野 Takeya Isawa
花は蕾より生まれし、空に映える Hana wa tubomi yori umaresi sora ni haeru
曲目解説 花は蕾より生まれし、空に映える いつだったか空は海の色を写して青いという話を聞いた事がある。花というとても小さな世界にも心を澄ませば、そこ に色々な物象の投影があるかもしれない。
美しいばかりでなく、時には醜い姿も…
曲は非常に短く終わります。開幕前の小さな序曲です。

プロフィール 1960 年千葉県生まれ。桐朋学園作曲科を卒業後、同大学においてソルフェージュを教える。 現在、明治学院大学非常勤講師、作曲家協議会会員。
作品にシアターピース Brain storm,ピアノのための 6 preludes、他。

1-6 中嶋 恒雄 Tsuneo Nakajima
小さな祈り A piece for peace by digital processing
曲目解説 この3月、36 年間勤めた大学を退官してようやく時間のゆとりができた。成田和子さんのお勧めで pro-tools を購入し、 夏のパリでのセッションに参加し、初めての作品ができてうれしい。1974 年か 1981 年にかけて日本音響デザイナー協 会に所属して、毎年電子音楽作品を発表したが、アナログからデジタルに機器が変化するとともに会も自然消滅し、電子音楽とはすっかり縁が切れていた。 近年の機器の発達はすばらしい。しかしどのように機器が発達しようとも、これを使うのはやはり人間。機器を使うた めの哲学が必要となる。今日の世界は、あいも変わらず自己主張と力のぶつかり合い。科学の発達を平和と人々の共存 のために使わずに、他にうち勝ち、優位を保つために使うのでは何のための進歩、発達であろうか。私は、優れた機器 を使うからには、アコースティックでは表現出来ない仕方で、心の安らぎを表わしたいと思う。ちなみに曲尾の歌は、 拙作「万葉による挽歌」からの引用である。

プロフィール 1961 年 東京芸術大学音楽学部作曲科卒業。 1966 年 同上指揮科卒業。

1964 年 毎日・NHK音楽コンクール作曲部門第2位。 1998 年 山梨文化奨励賞受賞。 現在、山梨大学名誉教授。財団法人音楽文化創造理事、 日本歌曲振興会”波の会”理事、音楽教育振興財団評議員。

1-7 さとうじゅんこ Junko Satoh
乳 lait
曲目解説 歌う私を「世界」が通り抜けていく。
媒体となり、外側の意識がひらく、その感覚だけを、 私は歌うことなしに、取り出して味わうことがある。 それは音なき音ともいうべき舌触りで脳に巣食い、 私の眠りを妨げたりもする。
混乱との共存。

プロフィール 東京藝術大学音楽学部声楽科ソプラノ専攻修了。 ミュージッククリエイション夏期アトリエ 2001 ・2002 参加。
ジャワガムラングループ「カルティカ」にて活動中。
http://sound.jp/suara/

1-8 寺嶋 春菜 Haruna Terashima
スタート Start
曲目解説 生まれる。成長の繰り返し。自分の世界を広げる。
破壊は恐怖を伴う。いつまでもぬるま湯にはつかっていられない。上へ、上へ、目指すならば勇気が必要。 今、飛び立とう。私はここに留まって終わる事を望まない。力を振り絞って、立ち上がろう。 自分の魂を信じて。負けない。怒りも悲しみも力に換えて幸せに向かって。

プロフィール 1980 年生まれ。宮城県仙台市出身。宮城県第三女子高等学校卒。米ミズーリ州ワシントンハイスクールに交換留学生と して1年間在籍。東北芸術工科大学映像コース卒。
映像における音響の新たな可能性を追求したいと考え、夏期アトリエ 2001 参加。映像を省いた音響作品に興味を持ち、 東北芸術工科大学 2001 年度卒業制作展記録映像の音楽担当。 現在同大学院ヴィジュアル・コミュニケーション・デザイン専攻修士課程在籍。

1-9 向山 千晴 Chiharu Mukaiyama
緑の海・森の青 La mer verte, La forêt bleue
曲目解説 海・風・大地・森、そしてそれぞれの香や色彩など。
具体的な中から思い起こす画一的なイメージ。 何が本質で、何を真実ととらえるのか? アクースマティック[acousmatique]。 抽象世界へのいざない。

プロフィール 札幌在住。1994 年、札幌市新人音楽会作曲部門賞受賞。 2001 年、2002 年と「INA/GRM」夏期アトリエに参加。
2002 年 8 月 南フランス・クレの「FUTURA02」にてアクースモニウムのインタープレテションセミナー受講。 同年 12 月、フランス、ペルピニャン「SYNTAX2.1」(オーディトリアム・ジョンケージ)に出品。 現在、札幌デジタル・アート専門学校講師。 (社)日本作曲家協議会、札幌音楽家協議会、北海道マルチメディア協会各会員。

1-10 小野 理恵子 Rieko Ono
panel-1 panel-1
曲目解説 これまで曲など作った事はありません。曲を作る時、初めから映像作品にする事を考えていました。いままで私が扱った事のある(映像の素材として録音された音)は画を説明するものとしての音。今回は映像のアイディアはまっさらの 状態で作曲に臨み、その後映像作品として完成させました。以前の『映像から音を発想するやり方』から『音から映像 を発想する』ことを行いました。気をつけようと思った事は決して音を説明する画にならないようにという事です。互 いが良い効果を作りだせればいいです。特に何も考えないで御覧ください。目はつぶらないで。

プロフィール 1979 年生まれ。宮城県仙台市出身。東北芸術工科大情報デザイン学科映像コース卒。 在学中はビデオ作品を制作。就職と同時に上京。それからの 2 年間は不規則的に個人制作を行う。音楽教育は全く受け ていない、普通に音楽が好きな人。それだけで夏のパリの作曲のアトリエに参加してしまった…。しかし、参加できて良 かった。周囲の人達に感謝したい。

2-1 檜垣 智也 Tomonari Higaki
呼吸する肉体の記憶または4つの接触
La mémoire du corps qui respire ou quatre contacts
曲目解説 僕は僕の音楽に呼吸を取り戻したかった。肉体的な緊張と緩和の記憶を呼び起こし、その動力を使って、音の流れに逆 らわず、音のモフォロージーを理解して、音楽を創りたかった。
音の素材は何でも良かった。ある朝のドゥニのレッスンの口実のために、スタジオへ通う歩道のアスファルトがめくれ ている場所から石(なんのとりえもない)を拾って、録音した。本当に口実のための素材だったが、結果的にそのまま作品の音になった。別に好きでも嫌いでもないどうでもいい音だったが、何度も繰り返し聴いているうちに、石からで る音が好きになった。何でも良かったはずなのに、これしかないと思えるようになっていた。本当は、何でも良かった から、これでもいいと思えたのかもしれない。再び石の音を録音した。今回録音するとき注意したことは「呼吸に合わ せ、楽器を演奏するように石を演奏する」ということ。まずいろいろな奏法や音色を探し、自由に音が出せるように練 習する。録音する時は、あるフレーズを考えて演奏したり、即興演奏したりする。うまくいくまで何度もやりなおす。 そして録音されたフレーズを注意深く何度も聴きながら、音の流れと呼吸について感じる。次にとても気に入った部分 (それはほとんど直感に頼った。)を選び出し、その部分の音の流れと呼吸に決して逆らわず、さらに自然な流れ、豊 かな呼吸をするために装飾を施す。肉体の呼吸との関連を注意深く観察しながら。こうして最初の部分(I.突然の刺 激)ができた。 この作品は、「I.突然の刺激」「II.連続した緊張」「III.反復する快楽」「IV.最大の高揚そして弛緩」の4つの部 分よりできており、連続して演奏される。

プロフィール 1974 年山口県生まれ。大阪芸術大学で七ッ矢博資氏、愛知県立芸術大学大学院で岡坂慶紀氏に器楽の作曲を師事。現 在、ペルピニャン・コンセルバトワール(フランス)でドゥニ・デュフール(器楽、電子音響音楽の作曲)、ジョナタン・ プラジェ(電子音響音楽の作曲)各氏のもとで研鑚中。国際電子音響音楽フェスティバル FUTURA2000、2002(FUTU- RA/フランス)など、日本とフランスを中心に作品を発表している。。

2-2 成田 和子 Kazuko Narita
流れ Fluidité
曲目解説 毎度のことながら、“あわててつくる”ことになってしまいますが、音との対話は、私にとって大切な時間です。音を通して自分と見つめ合うことでもあります。音は私を捕らえ、私を裏切り、私を喜ばせ、私を戒め、私を救う? そんな 音の流れの中に居たいと思うのです。

プロフィール 主にフランスで音楽を学ぶ。室内楽曲、管弦楽曲、電子音響音楽など内外で多数演奏されている。 東京音楽大学非常勤講師、同志社女子大学学芸学部音楽学科助教授。

2-3 吉原 太郎 Taro Yoshihara
祝詞〜I. 全ての起源 norito 1
曲目解説 希望、想い、願いを音と時間に託したい、という気持ちが素材選定、コンセプトに大きな影響を与えた。ネットワークを経由して集められたメッセージテキストを音声変換した素材は全体を支配するコア・メッセージとして拡張し受け継 がれる。
今存在するこの瞬間・時間、を別の空間へ向けて保存したい?いう夢が制作の動機となった。

プロフィール 昭和音楽大学音楽学部作曲学科応用音楽コース卒業、同音楽学部研究生課程修了。 山梨大学大学院教育学研究科音楽教育専修修了。作曲を豊住竜志、藤原嘉文、電子音楽を成田和子の各氏に師事。
2001 年夏期アトリエ参加、日本電子音楽協会会員、Group Invisible Note メンバー、ネットワーク上での音楽共同制作に 関する研究グループ代表。
山梨大学講師、昭和音楽大学講師

2-4 菅谷 昌弘 Masahiro Sugaya
バラード Ballard
曲目解説 バラードが好きだ。無機質な、限りなく死に近い、そういったバラードが好きだ。電子音楽を作っていると、その虚構性を含めてバラードを連想している。そこで起きる現象の意味、目的を即断出来ない状態でいることも関連しているの かもしれない。ただ出会っている、ただその空間に浸されている、というような感覚。それはまるで枯山水のど真ん中 に突っ立っているような気分だ。 時間だけ取り去ってしまったような空間。そんな場所を空想して「バラード」を書いている。

プロフィール 東京音楽大学作曲科、同作曲研究科卒業。作曲を三枝成彰、湯浅譲二、松村禎三、各氏に師事。 パパ・タラフマラ、山崎広太の舞台音楽作曲、GONTITI の編曲、NHK テレビドラマの音楽作曲など。

2-5 葛西 聖憲 Masanori Kasai
Etude 2003 Etude 2003

曲目解説  第1回の夏期アトリエに参加させてもらい、その後数曲、コンピュータを使っていわゆるミュージック・コンクレート 作品を創ったが未だに習作の域を出ていない。 今回は、一昨年及び昨年のスピーカー配置と異なっているため、音を回転させることによるごまかしはできなくなった が、違う意味で立体感を出せるセッティングなのでそれをうまく生かせるように工夫したつもりであるが・・・。

プロフィール  同志社女子大学教授、京都市芸術大学非常勤講師。

2-6 岡本 久 曲目解説  Hisashi Okamoto
記憶 Mémoire 「音」との出会いは一期一会、今聞こえた音は、もう次の瞬間どこにもない。

曲目解説 私はしばしば各地に出かけ録音を行う。それを聞き返すたび、そのときの記憶がはっきりと蘇えってくる。 貴重な音素材を手に入れることができたという喜びや満足感よりも、普段ならそんなに長くいるはずもない場所で過ご し、草木のようにじっとしながら全身に伝わる空気の微かな変化をとらえ、自分だけを残して周りが過ぎていくような 心地よいともいえる不思議な感覚が、私にはかけがえのないものに思える。 そうしたひと時から私が持ち帰ることができる唯一のものは、単なる「音」だけに過ぎないが、それによって蘇える全 身の記憶は私の創作の原点となっている。
この作品制作の期間中、INA-GRM スタジオにおいて貴重な助言を下さいました Denis DUFOUR 氏に心より感謝の意を 表します。

プロフィール 大阪芸術大学芸術学部音楽学科作曲専攻卒業。作曲を原嘉寿子、七ツ矢博資両氏に師事。和声法および対位法をサルバ トーレ・ニコローシ氏に師事。 電子回路技術およびコンピュータ・ソフトウェア技術を独学にて習得。ソフトウェア業界での実務において実績を積 む。作曲活動およびコンピュータを利用した音楽制作やサウンド・インスタレーションの制作、マルチメディア・コン テンツの設計・開発など幅広い活動を行なっている。 神戸山手女子短期大学表現芸術学科専任講師。大阪芸術大学、京都造形芸術大学非常勤講師。

2-7 松本 日之春 Hinoharu Matsumoto
途切れたアリア Aria interrompue
曲目解説 この作品、「途切れたアリア」は、1975 年、パリ 16 区サントルブールダンにあった、今はなき ORTF-GRM の電子音楽スタジオ ST52 で制作した、私にとって、それ以前、それ以後の作品の分水嶺となった作品なのです。パリの CNSM の 作曲科の学生であったその頃、日本で学んだ「音楽」を、「それは私たちの音楽のコピーだ」と言われ、では、歴史・ 文化のしがらみから解き放たれた全く新しい世界を見つけてやろうと考えていました。そんな私に、1945 年、シェフェ ールが全く新しい音楽表現方法として、20 世紀のもっとも大きな芸術運動シュールレアリスムの流れの中ではじめたミ ュージックコンクレートは、「これだ!どの国のどの文化も負い目なく一斉にゼロからスタートできる表現方法!」と 思わせたものでした。この GRM-ST52 で 80 時間を費やした作業、テープの切り張りとミキシングの膨大な積み重ねの エレクトロアクースティック部分、と最初からその部分へ舞台上でミキシングされることがプログラムされたインスツ ルメンツ部分とのミュージックミクストを ORTF の番組用に制作したのが本日の Version(放送録音)です。このインス ツルメンツ部分だけをモディファイした Version は同じ年のトリスタン・ミュライユ率いるイティネレールのコンサート で委嘱初演されました。

プロフィール 1945 年東京生まれ。1968 年東京芸術大学音楽学部卒業。1970 年東京芸術大学大学院修了。1968 年毎日音楽コンクール 入賞。1969 年エリザベート国際音楽コンクール入賞。池内友次郎、三善晃、島岡譲の各氏に師事。1970 年フランス政府 給費留学生としてパリ国立高等音楽院に留学。1975 年パリ国立高等音楽院作曲科首席卒業。同年パリ国立高等音楽院電 子音楽科首席卒業。アンドレ・ジョリベ、イヴォ・マレク、ミシェル・フィリポの各氏に師事。
また G.R.M.(フランス国営放送局所属音楽研究グループ)、及びブールジュ実験音楽グループに属し、電子音楽作品を多 数制作・初演。フランス国営放送局委嘱作品「遠い声」、イティネレール委嘱作品「途切れたアリア」等多数の作品を パリで初演。帰国後、音楽集団アンサンブルヴァンドリアンに参加、第 1 回中島健蔵賞をグループで受賞。 民音現代音楽祭オーケストラ委嘱作品「レ・レオニード」、室内楽シリーズ「アルシファーズ I XI」、歌曲「7つの 歌」「オフェリア」「5つの歌」、20 世紀の吟遊詩人自主制作オペラ「幸福の王子」の他管弦楽曲、室内楽曲、声楽 曲、邦楽曲、テープ・電子音との複合音楽等多数の作品がある。 現在京都市立芸術大学音楽学部教授、東京芸術大学音楽学部講師、日本現代音楽協会・作曲家協議会会員、日本電子音 楽協会副会長。吟遊詩人 21 主宰。

3-1 ドゥニ・デュフール Denis Dufour
スパイラル SPIRALE op.112 曲目解説 2001 年 4 月(2001 年 10 月改訂)
Imeb 委嘱作品
Imeb のスタジオ Charybde にて製作(ブルジュ)
初演:2001 年 6 月 15 日、Synthese 2001 音楽再三か作品として、ブルジュの文化会館にて、Imeb のサウンドプロジェク ション装置をジョナタン・プラジェが演奏。

  1. 7’55”
  2. 1’10”
  3. 2’39”
  4. 2’40”
  5. 4’24”

「世界の創造」という主題で作品を委嘱され、この機会にやりたいと思ったことは、ブルジュのグループとその創始者 たち、フランソワーズ・バリエールとクリスチャン・クロジエに敬意を表することだった。と言うのも、Gmeb が存在し なかったらアクースマティック/コンクレート (1) クリエーションの世界は現在のような広がりも表情も持たなかっただ ろうからだ。その発展ぶりを我々が完全に把握しているとはいまだに言いがたいのだが、東欧やキューバ、南アフリ カ、その他各国で孤立していた作曲家の多くが 1970 年以降、Gmeb との関わりの中で研究を深め、数々の芸術作品を生 みだした。それはクリエーターたちが粘り強く体系的な仕事を行ったことによる部分が大きい。

現在の Imeb の壁には、電子音響作品の世界で活躍する人々全員の写真が並んでいる。本で見かけた名前や先駆者たちの 名前もあれば、新人作曲家や研究家の名前もある。みんなブルジュを訪れたことのある人々だ。Gmeb は GRM とたもとを分かったグループの一つ(そうしたグループの一つに過ぎない)という考えにとらわれてしまったパリやフランスの 人々は、Gmeb がこの世界の歴史でどれだけ中心的な存在だったかを推し量ることができなかった。
SPIRALE で意図したのは Imeb の日常の音や物音をベースに、ほとんどプライベートな内輪感覚で Imeb の世界を描くこ とだ。マイクを手にして Imeb の階段や廊下、スタジオ、事務室を歩き回り、片言、しゃべり声、笑い、足音、機械音、 デッキの音などを拾った。そしてそこから音のスパイラルのようなものを織りあげた。最小のものから偉大な作品、偉 大なプロジェクトが生まれる証として。 ここで働いていると、窓を通じて届くある種の「音の公害」、世の中の絶え間ない雑多なざわめきから決して逃れられ ない。そこでわたしはそうした音も活用することにした。車で混雑しているロータリーや絶えずホワイトノイズを響か せている噴水の単調な水音、横断歩道を通る歩行者の声・・・・ 素材はまず、この上なく伝統的なやり方で処理し、テープレコーダー(スタジオに常備されている)で入れ替えたり、 速度を変化させたりした。次にコンピューターを使って作品を組み立て、この組曲を完成させた。連続する五つの楽章 は、いまも活発に活動を続けるひとつの組織、音楽クリエーションの世界に消えない刻印を残し、常に創造的であり続 ける(そして絶えず新しい物を生み出している)世界を表現した。

D.D.
(1) ここでコンクレート音楽とアクースマティック音楽は同じジャンルを指している。すなわち、スピーカーで聴かせる ためにもっぱら媒体に録音された作曲作品のジャンルである。

avril 2001 (révision octobre 2001)
Commande de l’Imeb
Réalisée au studio Charybde de l’Imeb (Bourges)
Création à Bourges le 15 juin 2001, Maison de la Culture, par Jonathan Prager sur un dispositif de projection du son de l’Imeb, dans le cadre du festival Synthèse 2001.

  1. 7’ 55
  2. 1’ 10
  3. 2’ 39
  4. 2’ 40

5. 4’ 24

Répondant à une commande sur le thème de la création du monde, j’ai voulu me saisir de l’occasion pour rendre hommage au Groupe de Bourges, et à ses fondateurs Françoise Barrière et Christian Clozier. Il me semble en effet que sans le Gmeb, le monde de la créa- tion acoumatique/concrète (1) n’aurait pas eu le visage et l’ampleur qu’il connaît aujourd’hui, et que nous n’évaluons pas encore très bien : les pays de l’Est, Cuba, l’Amérique du Sud et bien des compositeurs isolés dans leur pays ont, depuis 1970, développé une recherche et une importante production artistique en lien avec le Gmeb, ceci pour une grande part dû au travail opiniâtre et systéma- tique de ses créateurs.

En parcourant les murs de l’Imeb actuel, on passe devant des photographies où tous les acteurs importants du monde de la création électroacoustique sont présents : tous les noms que l’on a pu lire dans les livres, de ceux des pionniers jusqu’à ceux des plus jeunes compositeurs et chercheurs qui sont passés à Bourges. Entretenus dans l’idée que le Gmeb était avant tout (et seulement) un groupe dissident du GRM, beaucoup à Paris et en France n’ont pu, à distance, mesurer à quel point il était au centre de l’histoire mondiale de ce genre.

Dans Spirale, j’ai voulu de façon tout à fait intime, et presque privée, rendre compte du Monde de l’Imeb, en partant des sons et des bruits de son quotidien. J’ai promené mes micros dans les escaliers, les couloirs, les studios et les bureaux, arrachant un mot, des éclats de voix, un rire, des bruits de pas, de machines, de magnétophones pour en tresser une sorte de spirale sonore qui manifeste que des plus petites choses naissent de grandes réalisations, de grands projets.

Comme tous ceux qui travaillent ici, je n’ai pu échapper à une certaine pollution sonore qui, au travers des fenêtres, nous livre la rumeur permanente et diverse du monde, et j’en ai joué : rond-point encombré de voitures, crachement constant et monotone des fontaines qui ne cessent en contrebas de débiter leur bruit blanc, interpellations de piétons au passage clouté…
J’ai traité d’abord ce matériau de manière on ne peut plus traditionnelle aux magnétophones (toujours opérationnels dans le studio), multipliant transpositions et variations de vitesse. J’ai ensuite construit l’œuvre avec les moyens informatiques, pour aboutir à cette suite de cinq mouvements enchaînés qui décrit l’univers toujours créatif (et sans cesse réinventé) d’un organisme vivant qui marque désormais de son empreinte ineffaçable le monde de la création musicale.
D. D.
1. Les appellations musique concrète et musique acousmatique représentent ici un seul et même genre : celui des œuvres composées et fixées exclusivement sur support pour être données à entendre sur des haut-parleurs.

3-2 ドゥニ・デュフール Denis Dufour 知られざる大地 2つのアクースモニュームと2人の奏者のための TERRA INCOGNITA op.101
pour deux acousmoniums et deux interprètes 1998

曲目解説 1998 年
Ina-GRM の委嘱作品

ピエール・シェフェールに捧げる
スタジオ Motus で4トラック製作
録音及び音素材準備:アニェス・ポワッソン
初演:1998 年 6 月 18 日、Son-Mu 98 参加作品として、パリのラジオフランス会館オリヴィエ・メシアンホールにて、 ジョナタン・プラジェ(アクースモニューム GRM)とドゥニ・デュフール(アクースモニューム Motus)が演奏。 今回のコンサートではステレオバージョンで演奏される。

1. de inventione (発見)  5’32”
2. de quaestione (探検)  8’30”
3. de imperio (征服)  7’13”
4. de servitute (隷属)  3’59”

発見から探検へ、探検から征服へ、征服から隷属へ。こうした過程を経ることをシェフェールは時に拒んだ。彼こそ紛 れもなく、20 世紀音楽におけるもっとも斬新な未開地のパイオニアではあったのだが。 <我々の王国はこの世のものではない>。ホフマンが音楽家たちについて語った言葉通り、ピエール・シェフェールは 既存のもの、既得のもの、慣れ親しんだものでは満足しない。彼もインドを探した。そして、針が狂ったように振れる 羅針盤を奇妙な磁場に置くことで、新世界に到達した。<クロムシューズにアスベストグローブ、ナイロン服 の・・・・>探検者たちのための<スキーリフトやキャタピラー、カンダハルクリップ、超軽量合金>(1)の世界に。観 察対象物よりも、探検者たちの観察そのものが重要なパラダイムの世界。そこはジャングル、今日のテクノロジーの急 激な発展を見越したかのような、機械や記号、信号のジャングルだ。豊穣なこの地は、幾台かのターンテーブルの砂漠 から生まれた。シェフェールは『ファンタジア』の魔法使いの弟子のごとく、このツールを無限に増やし、細胞分裂さ せた。オーケストラが出現する僅かな可能性に賭けて。 やみくもに次々と創りだされた世界を探検する際の指針は、本能的な意思であり、<若い獣たちが自らお手本を示して いるような、走る、伸びをする、戦う、フェイントをかける、試みる、筋肉を自由に働かせる・・・>といった動き だ。 実体なき世界や、愛撫さえできるロボットたち。日々生まれ続けるこうしたものに、ピエール・シェフェールは<ネア ンデルタール人の音楽>で対抗する。<本物の原点に立ち返る必要性は、もっとも革新的な音楽家たちによってまさし く主張された>のだった。 「音楽学の三つの袋小路」(音楽概念、インストルメンタルリソース、美的解釈の三分野における行き詰まり)から音 楽の世界や音楽観を救うために、シェフェールは原型に遡ろうと考えた。それによって、人工的に補強されすぎた音楽 研究を一掃し、革新的ながら、実は太古から存在するひとつの音楽観を新たに築くことを狙ったのだ。(形式よりも) 形態を、(音の高低よりも)行程を、(楽器よりも)響きを重視するような、いわば原始主義。それは戦後の音楽を徹 底的に刷新する彼なりの試みだった。野放図な実験家や器用な初心者を率いて、彼は<クラケット、椰子の実、クラク ション、自転車の警笛、らっぱや銅鑼、鳥笛など>を発見する。

ドゥニ・デュフール(パリ国立高等音楽院で 1974 年から 1976 年までシェフェールに学ぶ)の作品は、シェフェールが 迷いながらもやみくもに突き進み、街なかで再び創りだしたプリミティヴアートに呼応している。発見に至るまでの間 に(グルジエフなど)幾人かの師はいたものの、新たに見いだしたものに関してはシェフェール自身が師であった。お かげで、シェフェールも言う通り、<一般化>のイニシアティヴを弟子たちが取る余地が残された。 未知の世界はこの作品でジャングルと化す。徐々に現れるのは、ドクター・モローの島(訳注、H.G.ウェルズの小説) に生息する怪獣以上に非現実的な生き物たちだ。ネルヴァル(訳注:フランスのロマン派作家)の『オーレリア』の妄 想を逆体験しているかのような終わりの部分同様、ロウ盤のきしみ音が元になっている。鐘の音を分離した、かの有名 なアタック音をほうふつとさせるような、いわば核分裂の礎となる音である。
作品は四つの時代(それは我々が歩んできた道の四段階である、発見、探検、征服、隷属をなぞっている)にまたがり、冒険という危ういマットレスの上に歩みを進める。時には深く切り立った峡谷の急流を行き、時には袋小路に突き 当たり、時には素敵な谷にたどり着く。<おまえの唇・・・> (2) の堂々たるエコー音と咳の発作を昇華させた音が、宇 宙の図書館から届いたかのように響きわたる。 居住不能な街や脳裏を駆けめぐりながら我々は、未来に放り出された 一人の原始人の足跡を辿る。私たちも皆、そのような原始人なのだ。指針となるのは本能のみ。おしゃべりな脳のどこ かにその本能を閉じこめてしまっていなければの話だが。ようやく動作が語りはじめた。 <確かに、既成概念を根底から見直す作業に心底楽しく取り組んだ例はない>のだから、脳天気で無邪気なパワーを結 集させなければ、怖くて魅力的な怪物たちの徘徊するこの世界へは飛び込めまい。シェフェールの『音楽的客体概論』 の前文に倣い、デカルトの言葉を引用してこの文章を締めくくろう。<それまで信じていた意見をすべて捨て去り、新 たに一から始めること>。

ジェローム・ニロン
(1) <>書きの部分は全てピエール・シェフェールの著作『音楽的客体概論』と日誌『コンクレート音楽を求めて』から の引用文
(2) これはピエール・シェフェールが「見つけた」フレーズの断片の一つで、シェフェールは 1948 年に製作された初期 のコンクレート音楽作品の一つ、”Etude Pathetique(悲壮のエチュード)”のなかに使用している。

1998
Commande de l’Ina-GRM
Dédiée à Pierre Schaeffer
Réalisée en 4 pistes au studio Motus
Prises de sons et préparations des éléments sonores par Agnès Poisson
Création à Paris le 18 juin 1998, auditorium Olivier Messiaen de la Maison de Radio France, dans le cadre de Son-Mu 98, par Jonathan Prager sur l’acousmonium GRM et Denis Dufour sur l’acousmonium Motus
Pour ce concert sera jouée la version stéréo

1. de inventione 5’32”
2. de quaestione  8’30”
3. de imperio  7’13”
4. de servitute  3’59”

 De la découverte à l’exploration, de l’exploration à la conquête et de la conquête à l’asservissement, il y a des étapes que Schaeffer s’est par moment refusé de franchir, défricheur pourtant d’une des terres inconnues les plus réellement nouvelles de la musique du XXe siècle.

“ Notre royaume n’est pas de ce monde ” : comme les musiciens dont parle Hoffmann, Pierre Schaeffer ne se satisfait pas du donné ni de l’acquis, ni de l’habitude. Lui aussi cherche l’Inde, et en portant l’aiguille affolée de sa boussole dans de drôles de champs magné- tiques, il atteindra le Nouveau Monde. Un monde fait de “ remonte-pentes, d’autochenilles, d’attaches kandahar, d’alliages ultra- légers ” (1) pour des explorateurs “ chaussés de chrome, gantés d’amiante et vêtus de nylon… ” Un monde qui tire ses paradigmes plus de l’observation des explorateurs que des choses explorées. Une jungle, oui, mais une jungle de machines, de signes et de signal, reflet extrapolé – et presque anticipé – de la prolifération technologique d’aujourd’hui. Une jungle peuplée à partir du désert de quelques tourne-disques, instruments qu’à la manière de l’apprenti sorcier de Fantasia il souhaita multiplier sans fin, espérant qu’un orchestre finirait par surgir de cette miraculeuse division, sans trop y croire.

Car cette volonté brute, ce jeu “ dont les jeunes animaux eux-mêmes donnent l’exemple : courses, étirements, luttes feintes, essais, libre exercice des muscles… ”, c’est elle qui guide notre explorateur, lancé dans ces univers qu’il invente à mesure, les yeux fermés. Au monde fantôme qu’il voit se créer chaque jour, à ces robots qui vont jusqu’à offrir des caresses Pierre Schaeffer réplique par une “ musique de Neandertal ”, s’il est vrai que “ la nécessité d’un retour aux sources authentique a été, précisément, affirmée par les musi- ciens les plus modernistes ”.

Des “ trois impasses de la musicologie ” (celle des notions musicales, celle des sources instrumentales et celle du commentaire esthé- tique) il veut s’extraire, extraire le monde musical et la perception, par le retour à des archétypes qui refondent une perception nou- velle, et pourtant immémoriale, enfin débarrassée de l’encombrante prothèse de l’étude : celle des morphologies (plutôt que celle des formes) celle des parcours (plus que celle des hauteurs) celle des timbres (plus que celle des instruments). Ce primitivisme, c’est sa manière à lui d’inscrire la musique de l’après guerre dans sa nouveauté définitive. Suivi de quelques sauvages expérimentateurs – et habiles inexpérimentés – il va donc dégoter des “ claquettes, des noix de coco, des klaxons, des trompes de bicyclettes, une gamme de trompes, des gongs, des appeaux ”.

L’œuvre de Denis Dufour (qui fut son élève au CNSM de Paris de 1974 à 1976) fait écho à cette hésitation sauvage et entêtée, à cet art primitif réinventé au cœur des villes. Car s’il y eut des maîtres dans la révélation (Gurdjieff en fut un pour Schaeffer) Schaeffer fut lui-même un maître dans la trouvaille, ce qui n’est pas plus mal, et qui a le mérite de laisser au disciple l’initiative de la “ généralisa- tion ”, comme il dit.

La Terre inconnue se transforme ici en jungle progressivement peuplée de créatures plus improbables que celles de l’Ile du docteur “More” (une presqu’île, en fait) à partir d’un craquement initial, un bon vieux craquement de disque de cire, comme la fin passée à l’envers d’un rêve de Nerval (dans Aurélia). Fission fondatrice comme le fut la séparation du fameux son de cloche de son attaque. Dansée en quatre époques (reprenant les quatre étapes de notre parcours : découverte, exploration, conquête et asservissement) elle déroule ses pas sur le matelas peu sûr de l’aventure, s’engouffrant tour à tour dans les rapides les canyons, et les culs de sacs et débouchant parfois sur une vallée heureuse. Comme venus d’une bibliothèque en orbite, défilent quelques échos majestueux de “ sur tes lèvres… ” (2) et sa quinte (de toux) quintessentielle. Parcourant les espaces inhabitables de nos villes et de nos esprits, nous suivons les traces d’un homme primitif, projeté dans l’avenir, comme nous les sommes tous. L’instinct ici seul nous guide, pour peu que nous ne l’ayons pas claquemuré dans quelque case bavarde de notre cerveau. Enfin le geste parle.
Comme “ il est, croyons-nous, sans exemple qu’une révision radicale des idées reçues ait amais été entreprise de gaieté de cœur ”, on aura besoin de toutes les ressources de l’ingénuité, de toute l’énergie de l’innocence pour rebondir dans ces univers inquiétants et séduisants comme savent l’être les monstres (ceux qui se montrent). Reprenant comme le suggérait Schaeffer dans son préliminaire au Traité des objets musicaux l’ascèse de Descartes : “ se défaire de toutes les opinions qu’on avait reçues jusqu’alors en sa créance, et commencer tout de nouveau par les fondements ”.

Jérôme Nylon
(1) Tous les termes entre guillemets sont tirés du Traité des objets musicaux ou du premier journal d’A la recherche d’une musique concrète de Pierre Schaeffer.
(2) Il s’agit d’un des fragments de phrases “trouvés” et utilisés par Pierre Schaeffer dans l’une de ses premières compositions de musique concrète réalisée en 1948, l’Etude pathétique

1953 年、リヨン生まれ。パリ国立高等音楽院でイヴォ・マレク、ギー・レベル、ピエール・シェフェール、ミッシェ ル・フィリポに作曲を学ぶ。 今日に至るまでに器楽(管弦楽、室内楽、声楽)作品、電子音響作品、およびアクースマティック作品を多数作曲、作 品数は 120 以上に及ぶ。

1976 年から 2000 年まで Ina-GRM に所属。その活動は、クリエーター、教育者、コンサートや専門イベントのオーガナ イザー、刊行物やレコードのシリーズ物のディレクターに加え、数々の器楽アンサンブルの創設者兼ディレクターとし ても活躍している。また、FUTURA(アクースマティック芸術および媒体芸術国際音楽祭;クレストにて)や Syntax フ ェスティバル(映画とビデオ、電子音響音楽;ペルピニャンにて)、MOTUS プロダクションの創設、運営も手がけてい る。

リヨン、次いでペルピニャンの音楽院でアクースマティックおよび器楽作曲クラスを受け持つ。2001 年 9 月より、ブル ターニュの現代アートセンター兼交流文化センターであるドメーヌ・ド・ケルゲアネックに滞在、作曲活動を続けてい る。

Né à Lyon en 1953, il suit au CNSM de Paris les cours de composition avec Ivo Malec, Guy Reibel, Pierre Schaeffer et Michel Philippot.
Compositeur avec plus de 120 opus à ce jour, il est l’auteur de nombreuses œuvres instrumentales (orchestrales, de chambre, vocales), électroacoustiques et acousmatiques.

Il est membre de l’Ina-GRM de 1976 à 2000. Créateur, enseignant, organisateur de concerts et de rencontres professionnelles, directeur de collections discographiques et de publications, il fonde et dirige plusieurs ensembles instrumentaux, le festival interna- tional d’art acousmatique et des arts de support Futura (Crest), le festival Syntax (Perpignan) et la structure de production Motus.
Il enseigne la composition acousmatique et instrumentale aux conservatoires de Lyon puis de Perpignan. Depuis septembre 2001 il est compositeur en résidence en Bretagne au Domaine de Kerguéhennec, centre d’art contemporain/centre culturel de rencontre.

4-1 鶴田 聖子 Seiko Tsuruta
ゴールド・ラッシュ Gold rush

曲目解説  広くゆったりとした南米の静かな月の夜、ある山の深い奥底でなにか起こる夢を見た。そこはいったいどこだろう。そ こと同じ場所を探しに旅にでよう。そして、旅でいろいろなところにゆき、様々な時間を体験するなか、イマジネーションがフラッシュバックされてゆく。そんなことからイメージしてみた。この曲の前半は、美しいゴールド、古典的な ゴールドのイメージを表現し、後半は、消費社会やコマーシャリズムに毒されたダークなゴールドのイメージがさまざ まな時間のスピードに混乱し、錯乱してゆく。私にも、ある夢を見て、目にはみえない果てしないゴールドラッシュが 昨年到来したのである。これから何か見えてくるかもしれない。まだまだ習作はつづく。

プロフィール  ピアノ科卒業後、コンピューターによる作曲をはじめ、現在、ショー、空間音楽の作曲をてがる。 主な仕事:川瀬敏郎『花の晩餐』舞台音楽、MIND SCAPE MUSEUM(企画展)、内海清美『源氏物語館』空間音楽、 音響計画など。
FUTURA ‘ 01 出品、FUTURA ‘ 02 にて、アコウスモニウムの演奏法を学ぶ。 現在、ペルピニャン・コンセルバトワールにて、D.デュフール氏、J.プラジェ氏に電子音響音楽を師事。

4-2 梶井 聡 Satoshi Kajii
レディ・ラヴレイス変奏曲 Lady Lovelace Variations
I…… ARIA
II….. Variatio 1
III…. Variatio 16
IV… Variatio 30
V…. ARIA D’ADA

曲目解説  アコースティックなサウンドにミュージック・コンクレート的なリズムを演奏させてみたい、と考えて作りました。一 口で言うと<<montage rhythmique>>、無理数のリズムを3本のラインで絡み合わせている点がこの曲の要である。全部で 30 個作る予定の変奏曲の中から3つを提示します。音源はサンプラーで、その調律は最後のアリア以外は 12 等分平均 律ではなく 18 世紀の数ある不等分音律のうちの一つを採用しています。

プロフィール 1972 年生まれ。1999 年 INA-GRM 夏期アトリエ参加。

4-3 勝藤 珠子 Tamako Katsufuji
帰る場所、それが家 family なんでも言えるから「家族」なのか。

曲目解説  ケンカができるから「家族」なのか。 たとえ、本当の自分をさらけ出すことができなくても、 それごとまるごと受け止めてくれるから「家族」。それが、「家」。 この作品で、ノスタルジックなものを表現しようとは思わない。
ただ、
今この題名でつくりたいと思った。それだけの理由です。

プロフィール   1973 年、大阪に生まれる。大阪芸術大学音楽学科卒業後、サウンドエンジニアを職とする。一方、個人の作品や、ダン ス、芝居とのコラボレート作品をパリ、東京、大阪等で発表。
夏期アトリエ 2000 に参加。2002 年、オムニバス CD『L’Objet Sonore』をリリース。

4-4 足本 憲治 Kenji Ashimoto
慣性 I Inertia I
曲目解説 複数の振り子をイメージし制作した。「慣性」のシリーズは、重力場のようなものを表現できないかと遊び感覚で始めたもの。映像や踊りを伴っても面白いかと考えているが今回は音楽だけで。このような場をご提供いただいた皆様に感 謝。

プロフィール 2001 年夏 CCMC アトリエに参加。クラシック音楽に軸足を置きつつ、映画音楽、CM 音楽など何でも手掛けている。 JFC コンクール他入選。国立音大非常勤講師。URL:www.Enso-ka.com

4-5 高原 聰子 Satoko Takahara
Jardin naïf Jardin naïf
曲目解説 Jardin naïf とは直訳すれば「素朴な庭園」という意味であるが、この作品は昨年訪れた「無縫庵」という、極々小さな庵の空間をイメージして制作した。その名のごとく、一見自然のまま全く手を入れず、荒れ放題であるかに見えて、実は 細部にわたるまで緻密に計算し尽くされ、非常に丹精込められている。豪快に見えながら、実は繊細である薄明かりの 中、そこで演奏した体験と、その「隠れた計算」の美学は、私にとって非常に新鮮な驚きであった。

プロフィール 雅楽(笙)奏者。東京芸術大学音楽学部楽理科卒業。同大学院修了。笙演奏および雅楽合奏、左舞を故・多忠麿、芝祐 靖、多忠輝、東儀雅季、宮田まゆみの各氏に師事。
国立劇場雅楽公演、東京の夏音楽祭、米国タングルウッド音楽祭、ACL マニラ大会などに出演。 古典雅楽のみならず、新作、他ジャンルとのコラボレーションにも積極的に取り組む。GRM 夏期アトリエ 1999、2000 年参加。FUTURA2001 参加。

4-6 平野 砂峰旅 Saburo Hirano
Voices with contact noise Voices with contact noise
曲目解説 2002 年に発表した映像を伴ったライブ作品「SightSound -voice-」を元に 8ch のテープ再生のために制作した作品である。Sight Sound は sight singing(初見歌唱)から発想を得た造語で、楽譜(視覚情報)がその場で演奏(音)になること から、映像による演奏、また逆に音により映像を生成、加工するというコンセプトの作品シリーズであるが、今回は、 視覚情報を伴わない作品形態なのでタイトルも異なるものとなっている。作品名は、使用した音素材から来ており、主 に声とコンタクトノイズ(接触雑音)により構成されている。声に関しては民謡の歌声を元に音声分析合成によりさま ざまな個性をもつ声をつくりだし、素材としている。
声:菊池悠子
バンダイキャラクター研究者育成支援制度 平成 13 年度助成研究 Special Thanks: 河原英紀(STRAIGHT software for Voice processing)

プロフィール 京都精華大学芸術学部 デザイン学科 映像分野 九州芸術工科大学音響設計学科在学中より、ビデオ、実験映像のサウンドトラックの制作を始める。卒業後、コンピュータミュージック、インタラクティブアートなどを手がける。伊奈新佑氏や、小杉+安藤氏らとのコラボレーションに よるマルチメディア作品を数多く制作している。最近は、声を伴ったライブコンピュータミュージックを制作。
第1回 Ina-GRM ミュージック・クリエーション夏期アトリエ参加。

4-7 内藤 正典 Masanori Naito
ゴミ箱の音楽 II The Trush Music II
曲目解説 破棄した作品、没にしたフレーズや音素材、いらないものが発する音など、本来なら「使えない音」を集めて作品化するコンセプトの第2弾。いわば、リサイクルのよう な供養のような作業でもある。前回は、破棄したピアノ小品を集 め、切り刻み、加工し、全くの別物として蘇らせることを試みた。今回は、我が家には弾けもしない楽器がゴロゴロし ているので、それを用いてみることにした。楽器自体はゴミではない が、私が演奏すれば完全にゴミである。その聴く に耐えない演奏(演奏とは言えるような代物ではないが)を、いかに作品化するかが課題である。このような日の目を 見ることのない素材に光を当てるきっかけを作ってくれたテクノロジーの発展と CCMC の企画に心から感謝します。

プロフィール 1965 年東京生まれ。洗足学園大学音楽学部作曲専攻卒業。
1996 年より作曲家集団“MINUS SIX”に加盟。1998 年に第 2 回夏期アトリエに参加。 現在、都内を中心に創作活動を行っている。

4-8 武野 晴久 Haruhisa Takeno
「風の鼓動」 – Beat of the Wind –
曲目解説 「風の音は、さまざまな楽器に応用され美しい音色を聴かせる。笛の音は、言わば風の音である。
本来風は目に見えず、音もきこえない。ただ、風が通り過ぎた時、物との摩擦によってその足音を聞くことができる。 自然の中に身を静かにおいたとき、風があたかも地球の呼吸のように聞こえ、同時にまた、地球の鼓動さえも感じるの である。」

プロフィール 愛知県在住。愛知県立芸術大学卒業。同大学院音楽研究科及び研修科終了。作曲を石井歓、志田笙子、中田直宏の各氏 に師事。

現在、愛知県立芸術大学、名古屋芸術大学、三重大学などで後進の指導にあたっている。

5-1 田中 司恩 Shion Tanaka
深シキ響 Fuka-shiki-Hibiki
曲目解説 この作品は過去に録音した様々な音源の中から特徴的なものを集め、部分的な集大成とした作品である。音源は、雅楽、ガムラン、声明、自らの演奏によるディジュリドゥやホーミー、口琴などである。制作に当たって、楽器や声の持 つ音色の響きと、その空間が持つ響きの 2 点を作品の重要な要素とした。 編集においては、音色の響きと空間の響きをそれぞれ独自に編集したものを時間軸上に配置していき、またそれ以外に コンピュータ上でハーモニーを付加したものと残響を付加したものとを組み合わせている。どうか、この作品の持つ 「深み」をじっくり味わってみて頂きたい。

プロフィール 1978 生まれ。大阪市在住。大阪芸術大学音楽学科音楽工学コース卒業。 学生時代に録音、電子音楽の制作を学ぶ傍ら、現代音楽の世界を知り興味を持つ。また自身によるパフォーマンス、サ ウンドインスタレーション、映像作家への楽曲提供など活動は多岐に渡る。最近は自らディジュリドゥ奏者として、ア ーティストとのコラボレーションや、バンドの演奏に参加。またエンジニアとしてインディーズバンドのアルバムの録 音、制作を手掛ける。
大阪電子専門学校非常勤講師 大阪芸術大学非常勤副手

5-2 種子田 郷 go taneda
支柱 prop
曲目解説 聴くという意識から離れた時、はじめてきこえてくる音。
無数の音の粒が現れ、そして消えていく。
ピッチが隙間をつくりだし、あつまりがリズムを生む。
空間に支柱が浮かびあがる。

プロフィール go taneda http://sound.jp/suara/ インドネシア・ソロでジャワガムランを学ぶ。
aki.nagatani & danscapes ・ Pappa TARAHUMARA にて音楽担当。 CD[WD]プロデュース。CD[satu]・[dua]発表。[suara01]イベント主催。 インド・ボンベイ映画[A girl who sleeps all the time]音楽制作中。

5-3 山本 雅一 Masakazu Ymamoto
sotto voce sotto voce
曲目解説 私は普段自分の周りに空気と同じくらい渦巻いている音は楽音、騒音を問わず自分の中の音楽を形作るための要素としてそこに存在していると認識している。しかし、製作課程においてそんな音達と真正面から向き合った時にやはり(古 典的な意味での)音楽は私の生活の中に常に確実に侵食し続けているという事実を実感してしまう。どんなに見ないよ うにしても、そして離れてみても。それはどこからともなくうたや律動となって私に覆いかぶさり、知らず知らずの内 に私の耳もとでずっと囁いている・・・どうやらそれは抗えないようである。しかし、それは私自身の真実であり、ま た歴史の積み重ねでもある。結局、この作品は私の記憶を電子的にコラージュした結果に過ぎない。

プロフィール 山梨大学教育学部卒業、同大学院修了。
大学院 3 年次ににオーボエとクラリネットのための「PRIME」が日本現代音楽協会主催「現代の音楽展 2001」公募コン サート『オーボエ・フェスタ』に入選 。バリオホールにて演奏される。 作曲を藤原嘉文氏に、電子音響、コンピュータ音楽を成田和子氏に師事。
現在、山梨大学教育人間科学部非常勤講師。
CCMC ヘの参加は昨年に引き続き 2 回目となる。

5-4 由雄 正恒 Masatsune Yoshio
キコエタモノガキコエタトキ Kikoeta mono ga Kikoeta Toki
曲目解説 モウワスレテシマッタノデショウカ?
キコエテルノニ・・・
シラナイフリ?
マジムズイ!? サンカクニワミッツノチョウテンガアリマス△ チョウテンヲメザソウトスルトトンガッテイキマス▼ ジカンガナイソウデス・・・ トケイノハリハトンガッテマス→ マルクナルトイイヨ○ ソシタラドコカニススムデショ◎ テイウカ、シラナイシィ〜(-。-;)

プロフィール 神戸出身。作曲家、メディアマスター No.75。 音譜<->演奏<->音響の関係の中にコンピュータを介在させ、音組織の選定からそれを一般的な楽器の演奏を通じて音響 処理を行い、またそれを楽譜にフィードバックさせるなどの作品を発表している。 昭和音楽大学、岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー卒業。作曲を佐藤洋一、上原直、岩下哲也、豊住竜志、三輪眞弘 の各氏に師事。現在、昭和音楽大学専任講師。

5-5 豊住 竜志 Tatsuji Toyozumi
「フェーズ」・・・電子音響のための “Phase” . . . for electronic sound
曲目解説 タイトルは(目または心に映る変化するものの相、面、位相)の意味を持ち、この曲では時間軸のなかに違った角度か ら多面的な相をもたらす音楽のあり方を追求しようとした作品です。構成は伝統的な3部形式+CODA の形式をもとに偶発的ともいえるさまざまな音(具体音も含む)のからみからできている自由なものです。それらの様相を聴きながら楽 しんでいただければ幸いです。
制作は 1989 年に行われ、使用機材は QX1,QX3,(シーケンサー)、4CH のマルチトラックテープ、音源は TX816 を用 いた自作の音色を中心に S50 等のサンプラーも使用しています。
初演は 1991 年の第4回 MUSIC TODAY 作曲賞本選コンサート(企画・構成武満徹)で行われています。

プロフィール 1965 年生まれ。愛知県立芸術大学大学院音楽研究科修了。作曲を石井歓、兼田敏、岡坂慶紀、松井昭彦の各氏に師事。 大学卒業時に桑原賞を受賞。在学中に独奏オーボエと管弦楽のための「ディアーナ」が第 57 回日本音楽コンクール作曲 部門第 3 位入賞。その他神戸国際フルート作品作曲コンクール 1987 および第 4 回 MusicToday 作曲賞(武満徹監修)入 選。1997 年には「ピアノ協奏曲」が第 19 回日本交響楽振興財団作曲賞に入選する。1998 年、オペラ「KIGU」・・・ベ トナム民話によるを作曲し浜離宮朝日ホールの初演を皮切りに、ベトナム、トルコにて演奏会形式による海外初演も行 われる。昭和音楽大学専任講師

5-6 菅野 由弘 Yoshihiro Kanno
冥府の風 Hades Wind
曲目解説 「冥府の女」と題する日本舞踊のために作曲した作品の、冒頭部分を独 立させた曲である。文字通り、冥界に吹く風。
風が歌い、風に包まれ、風に消えてゆく。後に残る足跡もやがては消し去られ、全ては記憶の中へ。

プロフィール 東京芸術大学院作曲科修了。
1979 年「弦楽四重奏曲」がモナコ・プランス・ピエール作曲賞。
1994 年、電子音楽「時の鏡——風の地平」がユネスコ主催、IMC推薦作品。 作品は、雅楽、聲明、古代楽器のための「西行—光の道」、聲明とパルサー波によるコンピュータ音楽「虚空星響」、 オーケストラのための「崩壊の神話」、オーケストラと雅楽のための「蜘蛛」など。
CD は作品集 I「星の死」、II「砂の都市」、III「崩壊の神話」など。

5-7 上原 和夫 Kazuo Uehara
Aqua Aqua
曲目解説 豊かな森に湧き出る“水” 小川となり大河を形成し、やがて大海に注ぐ。
天空へと上昇し、雲となり、雨を生成し再び大地に降り注ぐ水、、、そして森を潤す。 この作品は生命の根源である水 (Aqua)の循環をテーマに制作した。 音素材には雅楽器音、具体音、電子音などを用いた。

プロフィール 1949 年生まれ。
1973 年ニューヨークで個展。83 年ブールジュ国際電子音響音楽コンクール入賞。1985 年アルス・エレクトロニカ招待参 加。1990 年ニューヨーク州芸術評議会委嘱による作品 NY で上演。国際コンピュータ音楽カンファレンス 1996 作曲部 門審査員。近年、国際交流基金の派遣及び招聘等により欧米、アジア各国で公演。2001 年 GRM コンサート・シリーズ において委嘱作品上演(パリ)。1980 年代より5回にわたり国際音楽祭を企画プロデュース。 著作に「コンピュータ・ミュージックの世界」CDに「COSMOS I」、「禅問答」など。現在、大阪芸術大学教授。

6-1 ドゥニ・デュフール Denis Dufour
追放 EXIL op.85
曲目解説 1995 年 11 月スタジオ Motus にて製作
初演:1995 年 11 月 30 日、ジャンティイービデオフェスティバル参加作品として、ジャンティイー市役所大ホールに て、アクースモニウム Motus を使ってドゥニ・デュフールが演奏。 原点からの撤退という後ろ向きのテーマを扱った本作品は、元の音波のプリミティブな反響室のようものとして捉えら れる。最初の息吹、夜が明けた後の風景の物悲しさ、都市地獄への幽囚・・・・。同時に、ここは、戦いに再び戻る前 の通過儀礼としての砂漠であり、一瞬にして過去のことや自分自身のこと、未来のことを知る森なのだ。(シェフェー ルが言っていたように)アクースマティック作品というものが、明確に表現された感動や感情というよりも、物質や有 機体、漠然と感じとった図式から成るものである限り、次のようなメッセージは無用のものとして退けられるだろう。 すなわち、「一番の隠れ家は、無防備のままでいることだ」
ジェローム・ニロン

novembre 1995
Réalisée au studio Motus
Création à Gentilly le 30 novembre 1995, grande salle de l’Hôtel de Ville, dans le cadre du festival Vidéo de Gentilly, par Denis Dufour sur l’acousmonium Motus.
Jouant de la thématique régressive de l’origine et du repli, l’exil est ici entendu comme une chambre d’échos primitifs recueillant des ondes fondatrices : souffle premier, langueur des contrées sorties de l’aube, enfermement dans l’enfer des villes… C’est aussi un désert initiatique, une forêt où l’on apprend en un instant tout du passé, de soi-même et de l’avenir avant de replonger dans le combat. Pour autant que l’œuvre acousmatique n’est pas tant (comme le rappelait Schaeffer) faite de sentiments, d’émotions manifestées et articulées mais plutôt de matières, d’organismes, de schèmes informulés seulement pressentis, débarrassés d’un inutile message, qui serait celui-ci : le plus grand des refuges, c’est de ne se protéger de rien.
Jérôme Nylon

6-2 ドゥニ・デュフール Denis Dufour 3つの楽章からなる組曲
SUITE EN TROIS MOUVEMENTS op.22

曲目解説 1981 年 1 月 Ina-GRM 委嘱作品

Ina-GRM スタジオ 116C にて製作
製作アシスタント:シルヴェール・ベルトランド
初演:1981 年 7 月 28 日。シャルル・リューのコルドリエ修道院にて、Trio GRM Plus (TM+) のプロジェクション装置を 使ってドゥニ・デュフールが演奏

  1. 14’05”
  2. 2’40”
  3. 4’25”

この組曲は、1977 年から 1980 年にかけて製作された三つの作品の素材を使って作られている。その三つの作品とは、 アンジェ城のタペストリーを表現した『L’Apocalypse d’Angers アンジェの黙示録』、そしてドミニック・デュピュイの二 つのバレエ作品の曲として作られた『Objet-Danse 物=踊り』と『Le Cercle dans tous ses etats あらゆる状態の円』であ る。もとの作品から素材をいったん解放し、純粋に直感や心地よさの法則に従って再編成しようという意図である。構 造は、次々と新たなものに交替していくという単純な原理に基づいている。最初は超高音がプリミティヴなメロディー を奏でるロンド形式で始まる。次いで、次第に強くなるパーカッションが連続性を強調し、持続させる。最後に、無気 力さと活発さの間を行きつ戻りつ、メリハリを利かせて終わる。作曲の最終段階でシルヴェール・ベルトランドがサポートしてくれたおかげで、この作品に独特なバランスがもたらされたと思う。
D.D.
janvier 1981
Commande de l’Ina-GRM
Réalisée au studio 116 C de l’Ina-GRM
avec l’assistance de Silvère Beltrando
Création à Charlieu le 28 juillet 1981, Cloître des Cordeliers, par Denis Dufour sur le dispositif de projection du “Trio GRM Plus” (TM+)

  1. 14’05”
  2. 2’40”
  3. 4’25”

Cette suite a été composée à partir de matériaux élaborés entre 1977 et 1980 pour des œuvres destinées l’une – L’Apocalypse d’Angers – à l’illustration des tapisseries du château de cette ville, les autres – Objet-Danse et Le Cercle dans tous ses états – à deux ballets de Dominique Dupuy. J’ai pensé les réorganiser en les libérant de leur argument, selon les pures lois de l’intuition et du plaisir. Sa structure utilise un principe simple d’alternance : forme rondo d’abord, dans laquelle une écharpe de sons suraigus joue une mélodie primitive. Puis incrustations de percussions crescendo soutenant et ponctuant un continuum étal. Enfin succession d’instants contrastés hésitant entre atonie et vigueur. Silvère Beltrando m’a assisté dans la dernière étape de composition de l’œuvre, et je crois que je lui dois son équilibre si particulier.
D. D.

6-3 ドゥニ・デュフール Denis Dufour
大地は丸い LA TERRE EST RONDE op.122
曲目解説 2002ドメーヌ・ド・ケルゲアネック委嘱作品
ジョナタン・プラジェに捧げる
スタジオ Motus にて製作
初演:2002 年 5 月 29 日、Ebruitez-vous! (言いふらそう!)フェスティバル(リゾム)参加作品として、レンヌのシテ ィーホールにて、ジョナタン・プラゲが Motus と Cidma の二つのアクースモニウムで演奏。 この作品の本質的な部分は、風の音、空気や吐息の音、布のこすれ合う音・・・ホワイトノイズから作られている。そ れらの音は音楽家にとって、彫刻家における石膏原料のような、いわば原料である。どんな目的や欲求、憧れにも適応 し、どんな形や書法にもなじみ、些細な干渉を起こさないニュートラルな基体とも言うべきもの。創造主が地球を作る ために手の中で転がした原始の泥のようなものだ。

2002
Commande du Domaine de Kerguéhennec
Dédié à Jonathan Prager
Réalisée au studio Motus
Création à Rennes le 29 mai 2002, salle de la Cité, dans le cadre du festival “Ebruitez-vous !” (Rhizome), par Jonathan Prager sur les acousmoniums Motus et Cidma.
La Terre est ronde puise dans le bruit blanc (superposition de toutes les fréquences) dans le bruit du vent, de l’air, du souffle, le frotte- ment des étoffes…sa substance essentielle, sa chair. Matériau premier qui ressemble pour le compositeur au plâtre pour le sculpteur : un substrat neutre qui se plie à tous les projets, à toutes les envies, à tous les rêves, adoptant toutes les formes et les écritures sans émettre aucune interférence d’ordre anecdotique. Boue primitive que le Créateur a roulé dans sa main pour façonner la Terre.

プロフィール

1953 年、リヨン生まれ。パリ国立高等音楽院でイヴォ・マレク、ギー・レベル、ピエール・シェフェール、ミッシェ ル・フィリポに作曲を学ぶ。 今日に至るまでに器楽(管弦楽、室内楽、声楽)作品、電子音響作品、およびアクースマティック作品を多数作曲、作 品数は 120 以上に及ぶ。
1976 年から 2000 年まで Ina-GRM に所属。その活動は、クリエーター、教育者、コンサートや専門イベントのオーガナ イザー、刊行物やレコードのシリーズ物のディレクターに加え、数々の器楽アンサンブルの創設者兼ディレクターとし ても活躍している。また、FUTURA(アクースマティック芸術および媒体芸術国際音楽祭;クレストにて)や Syntax フ ェスティバル(映画とビデオ、電子音響音楽;ペルピニャンにて)、MOTUS プロダクションの創設、運営も手がけてい る。
リヨン、次いでペルピニャンの音楽院でアクースマティックおよび器楽作曲クラスを受け持つ。2001 年 9 月より、ブル ターニュの現代アートセンター兼交流文化センターであるドメーヌ・ド・ケルゲアネックに滞在、作曲活動を続けてい る。

Né à Lyon en 1953, il suit au CNSM de Paris les cours de composition avec Ivo Malec, Guy Reibel, Pierre Schaeffer et Michel Philippot. Compositeur avec plus de 120 opus à ce jour, il est l’auteur de nombreuses œuvres instrumentales (orchestrales, de cham- bre, vocales), électroacoustiques et acousmatiques. Il est membre de l’Ina-GRM de 1976 à 2000. Créateur, enseignant, organisateur de concerts et de rencontres professionnelles, directeur de collections discographiques et de publications, il fonde et dirige plusieurs ensembles instrumentaux, le festival international d’art acousmatique et des arts de support Futura (Crest), le festival Syntax (Perpignan) et la structure de production Motus. Il enseigne la composition acousmatique et instrumentale aux conservatoires de Lyon puis de Perpignan. Depuis septembre 2001 il est compositeur en résidence en Bretagne au Domaine de Kerguéhennec, centre d’art contemporain/centre culturel de rencontre.