コンテンポラリー・コンピュータ・ミュージック・コンサート
CCMC 2002〜音と音楽・創作工房116 作品展〜

2002 年 2 月 10 日(日)〜11 日(月) 東京・日仏会館ホール

主 催 :音と音楽・創作工房116(ACSM116) 後 援 : フランス大使館、日仏協会
協 力 : サウンドクラフト

2 月 10日(日)19:00〜

■ 第1部

岡本 久 OKAMOTO Hisashi
土屋 雄 TSUCHIYA Takeshi
武野 晴久 TAKENO Haruhisa
菅谷 昌弘 SUGAYA Masahiro
中村 滋延 NAKAMURA Shigenobu
ロバート・ダロル(映像) DARROLL Robert/古川 聖(音)FURUKAWA Kiyoshi
三輪 眞弘 MIWA Masahiro
上原 和夫 UEHARA Kazuo

2 月 11 日(月)

■ 第2部 15:00~
Ina-GRM ミュージック・クリエーション夏期アトリエ in Paris

神崎えり KOUZAKI Eri
さとうじゅんこ SATOH Junko
さかい れいしう SAKAI Reisiu
篠田 昌伸 SHINODA Masanobu
田口 雅英 TAGUCHI Motohide
寺嶋 春菜 TERASHIMA Haruna
向山 千晴 MUKAIYAMA Chiharu
磯部 嘉之 ISOBE Yoshiyuki
足本 憲治 ASHIMOTO Kenji
小野 直樹 ONO Naoki
福原 聡太郎 FUKUHARA Toshitaro
吉原 太郎 YOSHIHARA Tarou

パリの Ina-RGM より
フランソワ・ドナト François DONATO

■ 第3部 17:00~
ワークショップ
パリの Ina-GRM で開発された音楽ソフトウェアについて

■ 第4部 19:00~
檜垣智也 HIGAKI Tomonari
上山真貴子 KAMIYAMA Makiko
山本雅一 YAMAMOTO Masakazu
高原聰子 TAKAHARA Satoko
鶴田聖子 TSURUTA Seiko
内藤正典 NAITO Masanori
勝藤珠子 KATSUFUJI Tamako
成田和子 NARITA Kazuko
葛西聖憲 KASAI Masanori

 

曲目解説/プロフィール

1-1 岡本 久 OKAMOTO Hisashi
反映 Reflection
曲目解説 今鳴ったあの音はどこへ行ったのだろうか?音はすぐに思い出になる。テープに記録した音は私にそのときのことを何よりもずっと鮮明に思い出させてはくれるが、もうそこには誰もいないことまで教えてくれる。

プロフィール 大阪芸術大学芸術学部音楽学科作曲専攻卒業。作曲を原嘉寿子、七ツ矢博資両氏に師事。和声法および対位法をサルバ トーレ・ニコローシ氏に師事。電子回路技術およびコンピュータ・ソフトウェア技術を独学にて習得。ソフトウェア業 界での実務において実績を積む。作曲活動およびコンピュータを利用した音楽制作やサウンド・インスタレーションの 制作、マルチメディア・コンテンツの設計・開発など幅広い活動を行なっている。 神戸山手女子短期大学表現芸術学科専任講師。大阪芸術大学、京都造形芸術大学非常勤講師。

1-2 土屋 雄 TSUCHIYA Takeshi
漲りて、そして四方に… Expands and Flows
曲目解説 我々が社会において日常的に体験している、情報を伝達する或いはされることは、その根本的な行為そのものの意味す ることこそ変わらないが、その方法については時代、文化によって様々である。殊に現代社会においては、めまぐるしい発展をし続け、入り雑じった、不定形なコミュニケーションがもはや標準であるのかもしれない。 この作品は、この情報の洪水とも言える状況の中、我々は一体、誰に、何を、何故「発する」のかをあらためて問うと 同時に失われていくものに対する、戸惑いと叫びでもある。 これらのリアリゼーションにあたっては、様々なアプローチが考えられたが、現在の感情を確定的に描きたかったこと もあり、メディア作品という形で作曲した。

プロフィール 1997 年東京音楽大学大学院修士課程修了。作曲/理論を有馬礼子、池辺晋一郎、西村朗、湯浅譲二の各氏に、三絃を杵屋 五三吉氏に師事。また、IRCAM でコンピュータ音楽、電子音響を学ぶ。
1993 年から 1997 年まで作曲グループ「現在形の音楽」の活動。1996 年第 13 回現音作曲新人賞入選。1997 年第 66 回日 本音楽コンクール入選。1998 年 CDMC 委嘱作品「SYNC」がパリと東京で初演。1999 年日本音楽集団より委嘱され「情 報転写 V」を初演。主要作品は NHKFM 等でも紹介されている。また電子音楽分野での活動としては、自作品の他、西 村朗、野平一郎、松平頼暁作品のプログラミング、電子音響を担当する。

1-3 武野 晴久 TAKENO Haruhisa
「トリップ」 Trip
曲目解説 日常生活の周辺や自然の中には、周期的な運動をするものがたくさんあり興味深い。そのリズムや鼓動を頼りに、幻想を旅してみたいと思った。構成は古典的で、最初に提示した素材を繰り返しながら、新しい音を加えつつ変化してゆ く。

プロフィール 愛知県在住。愛知県立芸術大学および同大学院終了。作曲を石井歓、小林秀雄、中田直宏に師事。 現在、作曲活動のかたわら、愛知芸大、名古屋芸大などで後進の指導にあたっている。

1-4 菅谷 昌弘 SUGAYA Masahiro
SHIBUYA
曲目解説 2 月 10 日に発表する曲の解説。〆切に合わせて書かねばならない。なのに曲名はおろか、肝心の曲が全く出来ていない。これから作るのだ。この仕事に取り掛かれるのは来週以降になるはず。下手をすればもっと先か。あってはならな い事だけれど、最悪は出来ない可能性だってある。その場合どうするか。こういう状況は、表現を生業とする者ならよ くある事に違いない。皆どうしているのだろう。
“ Invisible City ”。これはその次に作らなくてはならないダンス公演のための音楽、そのダンス作品のタイトルだ。出来れ ばこの音楽と今回の新作を兼ねられればいいのだが。「見えない都市」。例えばこれが「見えない森」もしくは「見え ない庭」であるなら、それも可能だ。8 トラックによる音響彫刻と考えてしまえば、音楽を作るというより、不可視の 森、あるいは不可視の庭を作るという事と同じではないか。8 つのスピーカーで囲んだ庭。そこで音だけの、見る事の出 来ない空間を提示する。で、それは結局のところ「音楽」に他ならないものだと思うのだが。

プロフィール 1959 年東京生まれ。 東京音楽大学作曲科卒業作曲を湯浅譲二、松村禎三両氏に師事。

1987 年から 2000 年までパパ・タラフマラに参加。音楽を担当する。山崎広太ダンス作品の音楽、ギターデュオグルー プ GONTITI の編曲、NHK テレビドラマ(芸術劇場スタジオ演劇、中学生日記等)NHK FM シアターなどの音楽を作 曲。
東北芸術工科大学講師。

1-5 中村 滋延

曲目解説
映像音響詩について:私の作品の系譜の中に視覚的要素を音楽構成に取り入れた作品群がある。その視覚的要素に舞台 上の演奏者・演技者の動作を取り入れたものをミュージックシアター、視覚的要素に映像を取り入れたものを音楽系メ ディアアート、とそれぞれ呼んでいる。音楽系メディアアートの中で映像作品としてビデオなどの映像メディアに固定 された作品群を特に「映像音響詩」と呼んでいる。映像音響詩にあっては映像パートと音楽パートは分けてとらえられるものではなく、創作過程においても同時に扱われる。私とすれば、映像パートの制作に関わっている時であっても、 それは作曲の仕事そのものである。なお、映像音響詩は映像パートの素材の違いによって、「実写型」「抽象型」「引 用型」の3つに分けられる。(これらの型の違いの詳細については、http://www.tcn.zaq.ne.jp/s_nakamura/jp_kiyo00.html に詳述されている。)

“Common Tragedies in urban life”:2000 年 4 月制作のこの作品は都会生活の悲劇的側面をシニカルに表現しようとした作 品である。この作品は「抽象型」映像音響詩である。

“Lust”:2000 年 4 月制作の「引用型」のこの作品には3つの創作上のねらいがあった。そのひとつは,抽象的な形象を 素材として画像パートを構成することであった。2つめのねらいは,抽象的な形象の中に実写画像をモチーフとして取 り入れることであった。3つめのねらいは,その画像パートの抽象性と意味性に即応する音響パートをつくることであ った。この作品は 2001 年の ICMC2001 キューバ(国際コンピュータ音楽会義 2001 キューバ)における音楽部門入選作 として上演された。

プロフィール 作曲家・メディアアーティスト。現在九州芸術工科大学音響設計学科教授。
様々な編成の作品を 100 曲以上制作。1990 年代以降、視覚的要素を構成に取り入れた作品で注目をあつめる。作品は ICMC(国際コンピュータ音楽会議)や国際メディアアート賞(ドイツ)などでたびたび取り上げられる。1991 年から 2001 年まで京都芸術短期大学・京都造形芸術大学で映像と音楽の教育に携わる。1997 年から 1998 年にかけて ZKM(芸 術とメディア工学のセンター/ドイツ)滞在芸術家、1999 年及び 2000 年日本音楽コンクール(NHK ・毎日新聞社主催) 作曲部門審査員。(経歴等の詳細は http://www.tcn.zaq.ne.jp/s_nakamura/jp_main.html )

1-6 ロバート・ダロル DARROLL Robert(映像)
モエスフィールド Moes Field 古川 聖 FURUKAWA Kiyoshi(音)

曲目解説 Several entries in a diary form four sections of this composition. The sections encompass very diverse pictorial elements but the semi- otic connectedness of these elements is not predetermined for the viewer who will find whatever “meaning” is pertinent to him at that time. The four parts are based on various techniques of collage and the juxtapositioning of visual elements in long intertwining lines of change which often attain such a high degree of complexity that only single lines can be followed in each viewing. The film is intended for repeated viewing and intuitive reinterpretation despite the fact that during its production I was guided by a very specific content.

プロフィール 古川 聖:1959 年東京生まれ。入野義郎氏に師事。ベルリン、ハンブルク音楽大学でイサン・ユン、ジョージ・リゲテ ィの各氏に師事。以後ヨーロッパを中心に活動。1990 年代より CCRMA 、ZKM 等を拠点とし、創作活動を行う。
Robert Darroll:Robert Darroll was born in England in 1946. After studying painting he devoted himself mainly to experimental film in the field of abstract cartoon, computer animation and video processing, often in close collaboration with composers. Works include “The Korean Trilogy”, “Memb”, “Moes Field”,”Stele”, “Neumata I”

1-7 三輪 眞弘 MIWA Masahiro
ディテュランブ DITHYRAMBE
曲目解説 「DITHYRAMBE」は友人の結婚祝いとして計画され、デュッセルドルフ、ロベルト・シューマン音楽大学の R37 スタジオで制作された。縁起の良い結婚のプレゼントに仕上げるべく、この作品では能の「高砂」及び作曲者夫婦の声のサ ンプルが素材として使われている。音高分析された能の謡をもとに、これらの素材はこの作品のために書かれたコンピ ューター・プログラム「高砂」によって演奏され、テープに定着された。(新しいカップルの明るい未来を祝う目的で 制作を始めたものの、作業を続けるうちに非常にシリアスな音響になってしまい結局、結婚パーティー会場での初演は 見送られた)タイトルの Dithyrambe(ギリシャ語では Dithyrambos)は古代ギリシャのディオニソス祭で歌われた情熱的 な合唱(曲)のことで、ギリシャ悲劇の源と言われている。

プロフィール ベルリン芸術大学、ロベルト・シューマン音楽大学で作曲を学ぶ。オペラ「新しい時代」、著書「コンピュータ・エイ ジの音楽理論」、作品集CD「赤ずきんちゃん伴奏器」、「東の唄」、「昇天する世紀末音楽」シリーズ、「新しい時 代信徒歌曲集」「言葉の影、またはアレルヤ」などを発表し、多岐に渡る活動を続ける。
現在 IAMAS(岐阜県立情報科学芸術大学院大学)教授。Http://www.miwa.to/

1-8 上原 和夫 UEHARA Kazuo
ECLIPSE 〜音と映像による
曲目解説この作品は INA-GRM の委嘱により 1999 年にパリで制作され、2001 年の GRM のシリーズコンサートで初演された。 これまでにソウル、北京、神戸、大阪、京都などで、それぞれ異なるヴァージョンで作品上演をおこなった。ADAT に 記録されたマルチチャンネルの音楽に映像やダンス、ライブ・エレクトロニクスが加わる形で、上演の都度ヴァージョ ンを変えてきたが、作品を変容させながら新たなヴァージョンを生み出す手法は、テープに定着された作品でありなが らも可塑性を生み出す一つの方法であると考えている。今回の CCMC のコンサートでは、ADAT による音と、映像によ るシンプルな構成を用いる。“ ECLIPSE ”の音素材は薩摩琵琶の弾法と語りを主にしており、さまざまなデフォルメを加 えながら音楽の全体像を作り上げている。琵琶の素材音の演奏は琵琶奏者、那須錦鈴氏の協力による。タイトルは、1999 年夏にパリにむかうフランス国有鉄道の車窓から体験した皆既日食の感動から得たもの。

プロフィール  1973 年 N. Y. で個展。1983 年ブールジュ国際電子音楽コンクール入賞。1990 年N.Y.州芸術評議会より作品委嘱。 ICMC 93、1995〜99 入選上演。ICMC 96 審査員。近年、国際交流基金の派遣や現地招聘により欧米、アジア各国で公 演。1980 年代より 5 回にわたり国際音楽祭を企画プロデュース。現在、大阪芸術大学教授。日本コンピュータ音楽協会 代表。

ビデオ映像  市川 衛:1978 年京都大学理学部卒業。1979 年〜1984 年パイオニア株式会社。1997 年有限会社インターアート設立。 2000 年より大阪芸術大学助教授。 活動領域は、インタラクティブアート、デジタルコンテンツ制作、マルチメディアプログラミング。

CG 制作 浦部裕幸

2-1 神崎 えり KOUZAKI Eri
命の音 Le Son de la Vie
曲目解説 この作品では自分の内側から聴こえる音だけを用いて加工を施し、それらの音を構築してひとつの作品に仕上げました。背景は常に心臓の鼓動の音であり、最初と最後では原音のまま単独で提示されています。それは作品全体のテーマ でもあるからです。“J’existe”とはフランス語で“私は存在する”という意味、この言葉をあらゆる形で曲の随所に織り込ん だことには理由があります。昨年、私は突然の大病に冒され、生死の境をさまよいました。周りの人達と共に命と向き 合った 21 歳の夏、そして今自分は確かに生きているということ、その証のようなものを音にして残したいと思い、この 曲を作りました。聴いて下さった方達が“生きる”ということを少し意識してみる、自分の作品がそんなきっかけになれ れば幸いです。これからも自分が生きている証を音楽で残していきたいと思っています。 ミュージック・コンクレート作品の制作は私にとって初めての試みであり、表現したいものと自分の技術が伴わず戸惑 うこともありましたが、先生方の温かな御指導と他の講習生の皆さんの協力を得て、なんとか形にすることができまし た。この場を借りてお礼申しあげます。2週間、本当にありがとうございました。

プロフィール 東京都生まれ。1998 年国立音楽大学作曲学科入学、作曲を福士則夫に師事。2001 年第 17 回学内フーガ作品演奏会にて 島岡賞授賞。同年、第 20 回作曲学科定期演奏会、審査員の満場一致により出演。現在同大学同学科 4 年に在籍。

2-2 さとう じゅんこ SATOH Junko
jus
曲目解説 [ jus = 果汁。肉汁。]私が「うたう」時、私は常に私の身体の中に、私の意識の中に、私の歴史の中に囚われていて、そこから切り離される ことはない。そんな時間的物理的な不可能を実現する道具を得る、という動機からパリでの 2 週間が始まった。初めて のヨーロッパを呼吸しながら、自身の客観になる感覚を探った。そのはじめの小さな一歩としての、「jus」。

プロフィール 秋田市生まれ。東京藝術大学音楽学部声楽科ソプラノ専攻修了。

2-3 さかい れいしう SAKAI Reisiu
たちどまる Elle s’arrête
曲目解説 例えば、めまいの中で聞こえる、距離のつかめない遠のいた音から現実の音への移動の瞬間のような、自分の耳のカクテル効果に気づく瞬間のような、パラメータを変えたことに気づく瞬間のような。曖昧に、確実に、変化していく音へ の尽きない興味が私を動かした。ミュージックコンクレートの技法においてそれはどのように実現できるか?新たな興 味として加えられた、電子音とそうではない音のはざまを行き来すること。これらの音を客観的に扱って構成していく 試みの、これは第一歩。

プロフィール 石川県生まれ。 近作に、ダウンロードサイト「こえうぇぶ」、サンプリングCD「reisiu.voice」(KACA0099)、インスタレーション 「Line in」など。Http://reisiu.I.am

—6—

2-4 篠田 昌伸 SHINODA Masanobu
笑いの旅立ち Voyage de rire
曲目解説 僕の電子音楽の第 1 作となった。素材には、ピアノ内部奏法の音と、人の笑い声を使った。ミュージックコンクレートの制作は、いままで楽譜によって作曲をしていた自分にとっては大きな視点の変換を強いられるものだった、すなわち ピッチでなく音色を主体とする思考である。楽音も具体音も同列のものととらえられなくてはならない。何か新しい作 曲の視点を探していた僕には今回の制作はとても実りあるものになった。ただ、時間軸に音を配置していく方法はそれ までの作曲となんら変わるものではなかった。今回の制作でも、コラージュすることに腐心するあまり、音の加工には 深く入っていけなかったのが残念である。なお、笑い声には、自分の声以外に、同じ受講生の足本さん、福原さん、佐 藤さんにも参加いただいた。彼らに感謝の意を表したい。

プロフィール 1976 年生まれ。東京芸術大学作曲科卒業、2001 年同大学院研究科修了。作曲を、尾高惇忠、土田英介に師事。 作曲グループ”next””chronoi-protoi”などで新作を発表するほか、同人の新曲初演なども行っている。

2-5 田口 雅英 TAGUCHI Motohide
音響彫刻 I Sound Sculpture I
曲目解説 私は、音楽としてすでに認知された形から、自由に抜け出す為の方法を模索しようとしている。この作品も、そのような意図をもって作られた。作曲に当たって、具体音を録音することから始めたのだが、その前に考えたことは、なぜ具体音を使うのか、具体音を使うことによって何が可能になるのか、ということであった。器楽音と違って、具体音はす べて何らかの意味性を背負っている。それらをひきはがし、音を抽象化して既成の「音楽」という形にあうものに加工 することは、私には具体音の持つ大きな可能性を捨てさる行為に思えた。具体音の持つ意味性は、既成の「音楽」とい う形には全く不向きである。だが私は、不向きだからこそ、それに向いた別の構成法を考えることが可能になるのでは ないかと考えた。この作品では、その具体音を、本来あった形と別な形で並べたり変形を加えたりすることにより、意 味のレベルでの錯綜,混乱,切断,つながったものが生みだす新たな意味の発生等々の状況を作り出すことを試みた。 既成の聞き方にとらわれず、音の意味の世界を自由に読みといて頂ければ幸いである。

プロフィール 大阪教育大学卒、茨城大学大学院修了。作曲,音楽理論を松永通温,松尾祐孝,早川和子の各氏に師事。
1999 年現音作曲新人賞入選。2002 年 2 月国際若手作曲家ミーティング(オランダ)にて新作が演奏される予定。

2-6 寺嶋 春菜 TERASHIMA Haruna
A. I.
曲目解説 「 A. I. 」、「 I 」、「 a – I 」。「 artificial intelligence 」、「 I 」、「 love 」。主題は自分。2001 年夏、私は変わりたかった。溜まっていたモノ達を吐き出したかった。殻に閉じこもり、愛を求め、気付き、だんだんと心を開く。小さな子 供のように怯えながら作り笑いをしていた私は、人の優しさに触れ、愛に触れ、解放されていく。自分を嘲け笑ってい るように聴こえていた意味不明な言葉達は、だんだんと、私を心地よく包んで行く。楽しい、嬉しい、有難う。壁を一 つまたひとつと外してみれば、流れ込んでくる沢山の人達の愛。思っていたよりも少しだけ、私の生きる世界は居心地 が良かったのかもしれない。また失望し、こんなはずではなかったと、首をかしげ腕を組み肩を落とすのだろうけれ ど、山あり谷あり。明けない夜は無いと生きて行きたい。馬鹿にされても笑われても自分に嘘を付くこと無く歩いて行 きたい。21歳夏、大切な人達に出会いました。

プロフィール 宮城県仙台市生まれ。三歳よりピアノを始める。中学時、市の作曲コンクール参加、佳作受賞。高校時、交換留学生と して一年間渡米宮城県第三女子高等学校卒業。

現在、東北芸術工科大学映像コース在籍。

2-7 向山 千晴 MUKAIYAMA Chiharu
水の話 Une histoire d’eau
曲目解説 以前 石狩在住の詩人で版画家の「大島 龍」氏より詩をプレゼントしていただきました。そのたくさんの詩集の中には膨大な言葉の泉が湧いていて、この世界をぜひ音で表現したいと考えました。中でも次からなる一遍が、今回の制作 の源となっています。

みどりの海が/おまえの裸身(はだか)を湛えている/おまえは羊水を叩いている/ 水位は真昼におしあげられてゆく/ぐんぐん/みちて/あふれて/道の汀で足の裏を濡らしている/ なにがみえる 目がみえる/なにがきこえる 耳がきこえる/ ぼくたちは語りつぐ/ぼくたちはすぐに忘れ去られるだろう/ 銀-リンリン/銀の獅子/その咆哮から/おまえの産声はあがる/

限られた音素材でみどりの海を表現し得たでしょうか?タイトルの「水の話-Une histoire d’eau」は 尊敬するヌーベルバ ーグの巨匠、ジャン・リュック・ゴダールとフランソワ・トリュフォーの共作短編映画のタイトルからとっています。

プロフィール 札幌在住。作曲を浅野宏之、丸山和範各氏に師事。94 年札幌市民芸術祭新人演奏会作曲部門賞受賞。現在音楽制作業を 営む。

(社)日本作曲家協議会会員、札幌デジタル・アート専門学校デジタル・ミュージック科講師。 —7—

2-8 磯部 嘉之 ISOBE Yoshiyuki
アシタチ Ashi-tachi
曲目解説 この曲は足音(靴音)と一部床を叩く手の音を用いて作成しました。雑踏の中を一人進んで行くという、一個人対集団というような感じです。何故このようなものをテーマとしたのかというと、単純に僕が自分の靴の音が好きだからで す。ならば、何故足音だけでなく床を叩く手の音も用いたのかというと、これも単純に、「足を使うなら、手も使お う」という考えからです。そして、そこからイメージを膨らませて思い付いたのがこれです。

プロフィール 1979 年東京生まれ。4 歳からピアノを始め、16 歳からソルフェージュ、17 歳から音楽理論を勉強。また、16 歳の頃か ら友人達とアマチュアロックバンドを組んで当初はギター、そしてその後ドラムを担当。主に、都心のライヴハウスで 演奏をしていた。2001 年夏、「フランス国立視聴覚研究所(INA)音楽研究グループ(GRM)コンピュータミュージッ ク制作アトリエ」に初参加。現在、国立音楽大学作曲学科第4学年に在籍。

2-9 足本 憲治 ASHIMOTO Kenji
シリ・トレ・ソン Chili-tres-son ( pour 4ch. )
曲目解説 GRM が他機関と共同で「音の分類に関する研究」を行っていると伺った。あらゆる音を、その長さ・高さや音色(金属的、等)によって分類しようとするもので、方法論や検索法などについて研究しているそうだ。簡単に分類すると言っ ても、殆どの音が鳴り始めてから終わるまでの間に多様な変化を伴う為、単純ではない。「似ている音」を様々な観点 からグループ化する為の基準や方法を確立するには人の知覚の研究が不可欠という。今回の作品では、そのことに考え を巡らせつつ音のシリトリを試みた。音のそれぞれの要素に関し、高低の動きのシリトリを旋律法、音色の変化のシリ トリを和声法、強さの変化のシリトリをリズム法、等とでっちあげている。制作の過程では、音の各要素同士が如何に 複雑な関わり合いを持っているか改めて痛感させられた。4 チャンネル作品を制作し、2 チャンネルに変換したものを収 録していただいている。お世話になった諸先生方はじめその他大勢の方々、並びにたばこを切らした私に何本も恵んで 頂いた方々に多謝。

プロフィール 14 歳の頃、音楽教師(男)に憧れ音大教育学科を志すが、何故か作曲学科へ。国際作曲コンクール入選他。日フィルなど 各方面への編曲提供多数。現在、国立音大 media-center 非常勤職員、慶応義塾高音楽科講師。
著書:「GM Program Number Guide」(龍吟社/リズムエコーズ刊)。

2-10 小野 直樹 ONO Naoki
insupportable
曲目解説 初めての海外旅行。行きたかったフランス。何もかもが初めての体験で、フランスの夏が暑い事や、日本での外貨両替は、お札でしか取り扱ってない事、そして、フランスで両替して、小銭を手に入れた友達と、飲み物の自動販売機の前 で立ち尽くす自分・・・。初めての海外旅行、フランスでの滞在一日目の感想は、欲しい飲み物(コカ・コーラ)を飲 めなかった事から、「insupportable」、耐えられない、だった。 この作品は、その時の気持ち、「insupportable」と、その時の欲しかった飲み物、コカ・コーラ等の炭酸の缶ジュースを 音素材として創りました。私は、炭酸の缶ジュースという物には、固体(缶)、液体(ジュース)、気体(炭酸)とい う三つの要素を持っている物体だと、滞在一日目に思い、この炭酸の缶ジュースが持っている三つの要素を使い、作品 を仕上げました。この作品の構成は、序奏から始まり、一楽章から続けて二楽章、間奏、三楽章、フィナーレ、となっ ています。 初めての海外旅行。行きたかったフランス。「insupportable」と思った私の気持ちは、またフランスに行った時、「excel- lent」と思うのだろうか。

プロフィール 1996 年、国立音楽大学音楽デザイン学科に入学。作曲を莱孝之に師事。1998 年、国立音楽大学作曲学科に転科。作曲を 故溝上日出夫、理論・分析を小河原美子に師事。現在、国立音楽大学作曲学科 4 年生。

2-11 福原 聡太郎 FUKUHARA Toshitaro
「Kikansha」
曲目解説 乗り物の車内騒音は非常に多くの音から成り立っているが、その全ての音が乗り物の挙動と一致しているため、音同士がシンクロしていることを認識することができる。そして注意深く観察すると、たまに意外なほどおもしろい音のパタ ーンが聞くことができる。そう言った偶然に生まれた音のパターンを分析して、自由自在に操り、音楽にしたいとつね づね考えていたが、試しに実験してみた最初の作品がこの曲である。乗り物の車内騒音のため、音のパターンは徐々に 変化する。また、使用している音は非常に短い音のみである。また、乗り物であるため、最初は車輪が転がり始めるシ ョックから始まり、徐々に速度が上がっていく構成になっている。

プロフィール 慶應義塾大学環境情報学部卒。在学中よりコンピュータを用いて作曲を始める。スタンフォード大学サマーワークショ ップ、GRM 夏期アトリエ参加。現在、慶応義塾大学清水浩研究室にて電気自動車 KAZ の音をデザインするかたわら、 環境情報普及センターからの依頼で安全のための自動車の音を岩竹徹教授と共同研究している。

2-12 吉原 太郎 YOSHIHARA Tarou
妄想都市 La ville imaginaire
曲目解説 パリ滞在中に耳にしたもの、それは CITE-PASSY の毎日の往復の中での出来事、幻想、夜中のケネディ通り、グルネル橋、METRO、そして日本の夏(盆踊りや蚊、蝉、怪談、海)を回想したり、そんなエッセンスを散りばめながら私の妄 想の中で増幅されていく音達。パリにいることで逆に日本をリアルに思い出すことができることに気付く。明らかにこ の世には存在しない音の集合体によって生み出される新しいサウンドに、時には幻聴、錯覚ではないかと感じることも 度々あった。この不思議な体験の中でこれまでに経験したことのない思考プロセス、判断が働いた。そんな一夏のなか で生まれた作品です。

プロフィール 昭和音楽大学音楽学部作曲学科卒業、同研究生課程修了。現在山梨大学大学院音楽教育専修在籍中。作曲を藤原嘉文、 豊住竜志、電子音楽を成田和子の各氏に師事。日本電子音楽協会会員、全日本電子楽器教育研究会会員、日本音楽知覚 認知学会会員。最近の活動としては、ライブコンピューターとエレクトーン、コンピューターグラフィクスのための作 品や SRS 立体音響システムを使った作品を製作している。

2-13 フランソワ・ドナート François DONATO
哀れみの総体 Corps de Compassion
曲目解説 ベルリンの Inventionen 2000 音楽祭のためのベルリン工科大学および DAAD 委嘱作品。ベルリン工科大学およびパリのIna-GRM で製作。 これまでいつも、漠然とながら感じていたことがある。それは音というもの、そして音の一番洗練された表出である音 楽というものが、物質や精神のもっとも捉えがたいレベルを現出させる力を持っていることだ。はかないがゆえに却っ て、生物と無生物の関係を規律する原理を捉えられるかのように。もっと具体的なイメージで言えば、わたしには音 が、このおかしな世界を分散させないための「接着剤」であるかのように感じられる。そしてその感覚は時を経るに連 れて強まりつつも、はっきりした形を取ることはない。これからお聴きいただく曲は、そうした感覚に満ちている。そ れは素材や構造の選択に影響を及ぼし、最終的には作品の意味にまで、固有の不明瞭さをもたらす。おわかりのよう に、この作品にはあらかじめ決定されたプロセスというものはない。ただ単に、聴く時間と、音を超えた沈黙があるだ けだ・・・・

プロフィール 1963 年、モン・ド・マルサン生まれ。20 歳まで独学で音楽を学ぶ。その後 1984 年から 1987 年までギー・マヌヴォー、 マリーフランソワーズ・ラカーズ、マリー=ノエル・モワイヤルについて音楽知識を深める。1987 年から 1989 年ま で、ジュヌヴィリエ音楽院のジャン・シュヴァルツの講座でスタジオ経験を積むと同時に創作の場を得る。1989 年から 1990 年まで、リヨン国立高等音楽院の SONUS 部門でドゥニ・ロランとフィリップ・マヌリに学ぶ。音楽情報処理の知 識を習得(C サウンド、MAX 等)1989 年から 1991 年まで Ina-GRM の活動に参加する機会を得る(コンサートの進行 役、作曲家のアシスタント)1991 年より GRM で一般イベントのコーディネートおよび創作スタジオ内での作曲家のテ クニカルアーティスティックサポートを任されている。エレクトロアクースティック音楽の分析考察セミナーに複数参 加。1992 年から 1994 年まで、オルセー大学の基礎エレクトロニック楽員で最新音響創作技術を教える。1994 年より、 エレクトロアクースティック音楽振興およびスピーカー・オーケストラ演奏実践を目的とするペイザジネール協会の活 動メンバー。

主要作品:Triadis (1988), L’ange ebloui (1991), Annam (1993), Annam Sarvam (1995) ディスコグラフィー:Annam- INA e 5003 (Musidisc 発売)

4-1 檜垣 智也 HIGAKI Tomonari
チェンバロとCDのための 「想」第二番 For Cembalo and CD “Sou” NO.2

曲目解説 サンプリングした音とそれを編集した音の間に何かのつながりを感じながら、円を描くように際限なく繰り返している 行為の中に音楽のようなものが少しずつみえてくる。サンプリングした音の記号性・意味性をどこまで残し、どこまで 破壊(編集)するのか?そのバランスがこの音楽のようなものの全て。

プロフィール 1974 年山口県生まれ。愛知県立芸術大学大学院作曲専攻(作曲)修了。2000 年、4 台のCDプレーヤーのための「取替 え可能な 12 のクリスマスの空音」(愛知公園協会委嘱)を発表。また、同作品のおさめられたCDを愛知県児童総合セ ンターよりリリース。

演奏 戸崎廣野(チェンバロ):上野学園大学卒業、同専攻科修了。英国王立音楽大学・ドイツ国立ケルン音楽大学卒業。国 内外でのリサイタルに加え『チェコ・フィル八重奏団』との共演、各地音楽祭・ホール主催演奏会等に出演。録音、放 送の分野でも活躍。上野学園大学、名古屋芸術大学講師。

チェンバロ製作者 安達正浩:1960 年生まれ。東海大学応用理学修士過程修了。1990 年に渡仏し、吉田令氏のもとでチェンバロ製作の伝統 的工法を学ぶ。帰国後、名古屋にて「クラブサン工房アダチ」を設立。チェンバロ奏者の森まりな、戸崎廣野らと 「ラ・クレ・ダムール」を結成。全国各地でコンサートを行っている。

4-2 上山 真貴子 KAMIYAMA Makiko
In rain
曲目解説 いると、音は何かに遮られているようにあいまいで、小さい。全てのものは、水の中で生まれる。それはとても不思議だけれど、ゆるぎない真実である。人もまた、全てのものと同じように、母なる海で時を過ごし、生まれてくる。しか し、そのときの記憶はほぼ全ての人が、忘れてしまっているだろう。果たしてどんな音がしていたのか。私はそこに何 故か惹かれ、雨という私にとって一番身近な自然現象を利用し、その世界を私なりに再現しようと試みた。

プロフィール 1978 年生まれ。山梨大学教育人間科学部音楽教育専修 4 年次生。作曲を藤原嘉文、電子音楽を成田和子氏に師事。

4-3 山本 雅一 YAMAMOTO Masakazu
−幻境− Arcadia
曲目解説 今回初めてのミュージック・コンクレートへの試みに際して、コンピュータ音楽をご指導頂いた成田和子氏の「主観的になれ」という言葉は衝撃的だった。それはコンピュータ音楽に限らず、私自身の作曲に対する姿勢についても根本か ら見つめ直すきっかけでもあった。一分の妥協の許されない緻密な作業にならざるを得ない気の遠くなるような製作過 程の中で、自分が音そのものに敏感になっていく瞬間があるのを感じた。自分なりに幻想的な世界を描いたつもりであ るが、共感していただけたら幸いである。なお、サンプリングに使った音源は数種類の楽器、紙、ビニール袋などであ る。

プロフィール 山梨大学教育学部音楽科卒業、同大学院教育学研究科修了。作曲を藤原嘉文に師事、コンピュータ音楽を成田和子氏に 指導を受ける。

4-4 高原 聰子 TAKAHARA Satoko
fuyu ( hiver – flottement – richesse – éphémère )
曲目解説 【冬】……「ひゆ(冷)」の意から。一説に、寒さが威力を「ふるう(振)」意。→ふゆ(振)。また、寒さに「ふるう(震)」意。また「ふゆ(殖)」の意からなどともいう。
【浮遊・浮游】…… 1. 浮かび泳ぐこと。ふわふわとただようこと。2. 世俗の外に超然としてあそぶこと。3. 行先を決め ずにあちこちとあそび歩くこと。
【富裕】……富んでゆたかなこと。裕福。
【蜉蝣】…… 1. かげろう。2. 人生のはかないことのたとえ。(岩波書店「広辞苑」第五版より) 今回の作品「fuyu」は、上記のようなイメージから発想し、制作した。

プロフィール 雅楽(笙)奏者。東京芸術大学音楽学部楽理科卒業。同大学院修了。 笙演奏および雅楽合奏、左舞を故・多忠麿、芝祐靖、多忠輝、東儀雅季、宮田まゆみの各氏に師事。国立劇場雅楽公 演、東京の夏音楽祭、米国タングルウッド音楽祭、ACL マニラ大会などに出演。古典雅楽のみならず、新作、他ジャン ルとのコラボレーションにも積極的に取り組む。GRM 夏期アトリエ 1999、2000 年参加。FUTURA2001 参加。

4-5 鶴田 聖子 TSURUTA Seiko
雨のダンス Dance de la pluie
曲目解説 「雨」という自然現象。、単純にいってしまえば水滴が落下する運動の集合体である。空から地上の色んなものに到達する、この時間や力が働いているはずの現象は、時間の感覚を麻痺させたり、聴感上ある種独特の空気感を伴う一つの 切り取られた風景のようだ。だが、これがひとたび意識のチャンネルを切り替えることによって「雨」というべールの 向こうにあらゆる音楽成分が潜んでいることをいつの頃からか感じていた。あるチャンネルでは無数のマレットやステ ィックが何かを叩いているようでもあり、あるいは不定型な物質同士の衝撃によるパーカッションが織り成すポリ・リ ズムでもある。あるチャンネルでは空間を往航するサラウンドのシーケンス・フレーズである。またあるチャンネルで はあらゆる帯域を自由に奏でるアンビエントなメロディでもある。これら点や線、または面の集合を音楽と言うフィル ターを通じて私なりに新たな現象として再構築(リミックス)してみた形が今回の作品である。

プロフィール ピアノ科卒後、映像製作に携わりコンピューターミュージックを始める。ショー音楽、映像音楽を中心に活動。コラボ レーションを中心に空間音楽、舞台音楽をてがける。GRM 夏期アトリエ参加、2001 年 FUTURA 参加。ミュージックコ ンクレートに目覚める。おもには、ART LIFE21(シンポジウムテーマ曲)、AQUACHIARA(ファッションショー)、 MIND CAPE MUSEUM(空間音楽、企画展音楽)、ORIBE 展岐阜県立美術館(空間音楽、茶室音楽)花人川瀬敏郎「花 の晩餐」(舞台音楽)、和紙人形作家内海清美「密、空と海」、いまはむかしミュージアム(音響設計および空間音 楽)

協力者 百々政幸 MOMO Masayuki:シンセサイザープログラマー。幼少よりシンセサイザーに親しみ、電子音楽に没頭する。 シンセサイザープログラマーとして数々のアーティスト作品に参加。AMBIENT7, SOYUZPROJECT, TIMECONTROL, F.E.O.B など数々のテクノ系ユニットに在籍、音楽活動を続ける。

4-6 内藤 正典 NAITO Masanori
ゴミ箱の音楽 Trash Music
曲目解説 今回、作品を作るにあたり、敢えて「いらない音」を集めた。ボツにしたフレーズや音素材、破棄した作品、また、曲の中で不要と思われる個所、更には、生活環境の中での不要と思われる音、不要なものが発する音を集め、それらを切 り刻み、加工し、蘇らせることを試みた。こうして集められた音素材も制作の過程でかなりのものが削ぎ落とされた が、これらに関しても、またの機会に作品化したいと思う。日の目を見ることのない音を採用する切っ掛けを与えてく れた、この企画に感謝いたします。

プロフィール 1965 年東京生まれ。洗足学園大学音楽学部作曲専攻卒業。
1998 年に第 2 回夏期アトリエに参加。それ以来、コンピューターを用いた創作に傾倒していく。現在、都内を中心に作 品発表などを行っている。

4-7 勝藤 珠子 KATSUFUJI Tamako
torutatorute……shushu?
曲目解説 torutatorute……おまじないではありません。
Torutatorute……呪文でもありません。
私の中に眠っていた torutatorute……目覚めさせたり、起こされたり…….
Shushu?……見えてるの? Can you see?

プロフィール 大阪芸術大学音楽学科音楽工学コース卒業。上原和夫に師事。 現在フリーのサウンドエンジニアとして活動する一方、芝居やダンスとのコラボレーション作品等を発表。2000 年ミュ ージッククリエーションに参加。

4-8 成田 和子 NARITA Kazuko
”空間の鳥”へのオマージュ Hommage à l’oiseau d’espace
曲目解説 ブランクージの彫刻”空間の鳥”が好きである。あの鳥はどのように舞うのであろうか、どんな歌声でさえずるのだろうか。”空間の鳥”のいる風景を音で表わした作品である。

プロフィール 主にフランスで音楽を学ぶ。室内楽、管弦楽、電子音楽など多数の作品が内外で演奏されている。 同志社女子大学、東京音楽大学、山梨大学で教える。

4-9 葛西 聖憲 KASAI Masanori
Etude 2001 Etude 2002

曲目解説 昨年は、せっかく作った 8 チャンネルの ADAT の再生がなぜかできず、予備に作っておいた 2 チャンネルでの発表でし た。今年はどうなることやら・・・と、また、懲りずに 8 チャンネルでの音響空間にこだわってみました。昨年は、コ ントラバスのピッチカートが素材でしたが、今年も、またもや弦楽器が素材の弦楽合奏という雰囲気です。まだまだ実 験段階の模索的作品ですが、うまく 8 チャンネルで再生できれば、多少、通常とは違った音響空間が味わえると思いま す。

プロフィール 同志社女子大学助教授、京都市芸術大学非常勤講師。