音楽と映像のコンサート

マルチ・チャンネル・スピーカー・オーケストラによるライブ公演 (アクースモニウム+8チャンネルマルチシステム)

CCMC2005
2005 年 12月10日(土)11日(日)東京日仏学院エスパス・イマージュ(飯田橋)
Samedi 10 et dimanche 11 décembre 2005
Institut franco-japonais de Tokyo, Espace-images

CCMC2006

2006年 2月18日(土)19日(日)ジーベック・ホール(神戸)
Samedi 18 et dimanche 19 février 2006
Xebec Hall

主催:東京日仏学院、音と音楽・創作工房 116 (ACSM116)
協賛:TOA 株式会社、サントリー株式会社
制作協力:ジーベック、有限会社サウンドオフィス
助成:芸術文化振興基金

2005年 12月10日(土)東京日仏学院エスパス・イマージュ

14:00 第1部 映画上映(フランス国立視聴覚研究所 INA のアーカイヴ)
エドガー・ヴァレーズへのオマージュ
« Les Grandes Répétitions – 大リハーサル »
リュック・フェラーリ企画、パトリス・ジェラール監督
E. ヴァレーズの作品のリハーサル、O. メシアン、A. ジョリベ、 M.デュシャン、H. シェルヘン、P.シェフェール、I.クセナキスやP.ブーレーズらがヴァレーズのことを語る歴史 的な瞬間をとらえたドキュメント

15:30 第2部 音楽と映像 ~クリストフ・シャルル展

17:00 第3部 作曲家によるマルチ・チャンネル・スピーカー・オーケストラ・ライブ
成田和子
足本憲治
内藤正典
福原聡太郎
安野太郎
菅谷昌弘
西岡渉
吉原太郎
(8チャンネルマルチ作品またはアクースモニウムによる自作自演)

2005年 12月11 日(日)東京日仏学院エスパス・イマージュ

14:00 第1部 マルチ・チャンネル・スピーカー・オーケストラ・ライブ
~フランス・アクースマティック作品の現在
デゥニ・デュフール作曲 « Suite en trois mouvements »
クリスチャン・ザネジ作曲 « Le paradoxe de la femme-poisson » より
ミッシェル・シオン作曲 « La messe de terre » より « Gloria »(映像付き)
ダヴィッド・ベアー作曲 « Connecté »
アクースモニウム演奏:鶴田聖子、渡邊愛

15:30 第2部 音楽と映像 ~フィリップ・シャトラン展

17:00 第3部 作曲家によるマルチ・チャンネル・スピーカー・オーケストラ・ライブ
高原聡子
仲條大亮
志賀浩義
行田朋弘
長瀬元
金井勇
宮木朝子
柴山拓郎
(8チャンネルマルチ作品またはアクースモニウムによる自作自演)

チケット
一日券 : 二日共通券 :
1,500 円(会員 1,000 円)
2,500 円(会員 1,500 円) 東京日仏学院 03-5261-3933 http://www.institut.jp/

2006年 2月18日(土)ジーベック・ホール(神戸)
15:00 公開講座
「音と音楽」 講演者:岡本 久

17:00 第1部 Motus 夏期アトリエ 2005

大畠 和也
原田 豪
村田 光俊
大川 剛

18:30 第2部 作曲家によるアクースモニウム・ライヴ・コンサート

葛西 聖憲
吉原 太郎
柴山 拓郎
岡本 久
田中 司恩
檜垣 智也
かつふじたまこ (映像:大和川レコード)

2006年 2月19日(日)ジーベック・ホール(神戸)

12:30 公開講座
「コンピュータ音楽」 講演者:岡本 久

14:30 第1部 CCMC 公募入選作品コンサート1

工藤 健
永野 隆満
山田 美慧
金子 雄大
佐藤 亜矢子
及川 潤耶

15:30 第 2 部 CCMC 公募入選作品コンサート2

村岡 睦稔
渡邊 愛
長瀬 元
森田 信一

16:30 第3部 CCMC 公募入選作品コンサート3

パ音社
ryowta-kanasaki
宮内 康乃 (映像:加茂 匠)

17:00 第4部 CCMC 公募入選作品コンサート4

大畠 和也
和泉 雅弘
泉川 秀文
奥野 和憲
かつふじたまこ
森本 泰啓

18:30「2006 年度 ACSM 116 賞」発表と授賞式

19:00 招聘作家 上原和夫、中村滋延 両氏によるワークショップとコンサート

上原和夫 【ワークショップ】
「コンピュータ音楽の応用領域 〜LOHAS的側面」
ドレーク・ミュージック・プロジェクト(障害者支援のテクノロジー音楽)
環境へのアプローチ(サウンド・インスタレーション)

【コンサート】

  1. 1  Pont de l’Alma de Paris パリのアルマ橋 (realized at INA-GRM)
  2. 2  Eclipse INA-GRM 委嘱作品 (realized at INA-GRM)
  3. 3  Assemblage2004
  4. 4  Meteora II メテオラ II (映像及びライブ・パフォーマンスを伴う)

中村滋延 【ワークショップ】
映像を伴ったコンピュータ音楽における響きの理論

【コンサート】

1 映像音響詩《曼陀羅幻想》Audio-Visual Poem “Mandala Fantasy”

2 映像音響詩《ナーガ変奏曲》Audio-Visual Poem “Naga Variations”

3 映像音響詩《ラーマヤナ異聞,その2》Audio-Visual Poem “Another Story of Ramayana No.2”

曲目解説/プロフィール

CCMC2005

2005 年 12 月 10 日(土)東京日仏学院エスパス・イマージュ
第1部 14:00 映画上映
(フランス国立視聴覚研究所INAのアーカイヴ)
エドガー・ヴァレーズへのオマージュ
“Les Grandes Répétitions – 大リハーサル”
リュック・ファラリー企画、パトリス・ジェラール監督

【解説】O.メシアン、A.ジョリベ、M.デュシャン、H.シェルヘン、P.シェフェール、I.クセナキスや P.ブーレーズらが E.ヴァレーズのことを語る歴史的な瞬間をとらえたドキュメント、E.ヴァレーズ 82 才の 1965 年 11 月 6 日にアメリカ で行われたヴァレーズ作品のリハーサル、パリで行われた C.シモノヴィック指揮アンサンブル・アンテルコンタンポラ ンによる“Ionisations – 電離” のコンサート、B.マデルナ指揮による“Déserts – 砂漠”のコンサートなど、近代文明 特有の騒音を自らの音楽に取り入れた“自分の音を彫刻した建築家”ヴァレーズが現代音楽と聴衆に与えた衝撃をクロ ーズアップする。

第2部 15:30 音楽と映像 〜クリストフ・シャルル展 und[i]rected

第3部 17:00 作曲家によるマルチ・チャンネル・スピーカー・オーケストラ・ライブ

成田 和子
「動物たちの風景 – Paysage zoologique」
【解説】時間の中の音を動物たちにたとえて、空間に配置したり動かしてみた。楽器の音も雑音も、人間や動物の声や何だかわからない音も同じ次元に共存する。

【作曲者プロフィール】1997 年より、パリで開催されている“ミュージック・クリエーション夏期アトリエ”、“MOTUS夏期アトリエ”、“CCMC コンサート”に携わる。作曲家、同志社女子大学学芸学部音楽学科助教授。

菅谷 昌弘
「不可視の庭」
【解説】ファントムセンターという言い方がある。ステレオシステムにおけるセンター、中心を意味している。ステレオ、その2つのスピーカーの間に第3のスピーカーは存在しない。けれど、2つのスピーカーから同一音量が放たれれば、 何も無いはずのど真ん中、センターに音像が定位する。ファントム(phantom)とは幻影、幽霊のような、という意味が あるから、とても理に叶った言い方だ。家庭用ステレオ装置に始まり携帯オーディオプレイヤーに至るまで、もうすっ かり音響機器が生活に溶け込んでしまった。その幽霊(=ファントム)にも慣れてしまったわけだ。そもそも音だけが そこにあるという現象自体、とても奇異な事かもしれない。しかし音響装置を用いた作品の場合、むしろこの「実在し ない存在」を扱うという意識こそ、創作の強い動機になってくる。空間に見えないものを配置していく、という意識。 そういう作業から園を空想している。例えば室町期の作庭家、善阿弥、相阿弥らの仕事へと思いを馳せるのだ。

【作曲者プロフィール】パパ・タラフマラの音楽作曲(1997 年初演「船を見る」、2005 年「HEART of GOLD-百年の孤独」 など)、ゴンチチの編曲(「放課後の音楽室」映画「誰も知らない」ドラマ「大人の夏休み」サントラなど)を手掛ける。

西岡 渉
「mountains」
【解説】大切な事が沢山あり過ぎて、結局グチャグチャになってしまい、何がなんだか思い出せないという事もある。 必要な大切な事だらけが、ほとんど雑草の様に自分勝手に地表を覆う。10 月 10 日、まだ蚊が居てよく眠れない。気に なり出すとまた耳元を通らないかと待ってしまうのだった。シグナルとノイズの関係にフォーカスした。

【作曲者プロフィール】2002 年より音楽制作を始める。レコーダーは生まれて初めて買ったわけではないし、たぶん、私 が生まれた時から家にあった。その時はテープ。今はメモリー。メモリーに録音するなんてロマンチックすぎる。でも、 合っているとも思う。それで最近レコーダーを買った。そしたら、なんだかすごく嬉しい。本当はこの音楽のために買 ったのだが。

吉原 太郎
「鏡の中へ」
【解説】静かで受動的に写し出すそれは無言でただひたすらにその存在を薄めているようである。心の奥底まで映されているとは知らずに前を行交う人々。彼らの行く末を静かに見守っているのだろうか。

【作曲者プロフィール】昭和音楽大学卒業、山梨大学大学院修了。INA-GRM 夏期アトリエ 2001 に参加。作曲を豊住竜志、藤原嘉文、電子音楽を成田和子の各氏に師事。近年の発表作品はコンクレート作品から映像メディアによるインスタレ ーション、ライブコンピューターによるもの、室内楽、吹奏楽など多岐にわたる。作品は日本電子音楽協会定期演奏会、同特別演奏会、CCMC、ブルージュ国際電子音楽フェスティバル、モテュス国際電子音楽フェスティバル、GLOOVE-F(カ ナダ)等で紹介されている。本年度はヤマハ音楽振興会より助成を受け電子オルガンの 7.1 チャンネル空間音響制御の 研究に参加している。現在、昭和音楽大学、山梨大学講師、日本電子音楽協会、全日本電子楽器教育研究会会員。

足本 憲治
「エス – S」
【解説】音同士の距離感に注意しつつ制作しました。広がりやまとまりといった立体感と共に、体験時間の中での距離感といった当たり前といえば当たり前の事を再確認するような曲になったと思います。

【作曲者プロフィール】国立音楽大学大学院作曲専攻修了。自作品の発表の他、編曲多数。映画音楽などの商業的作曲活動も行っている。現在、国立音楽大学非常勤講師、日本作曲家協議会会員。また、2002 年より作曲家久石譲氏のアシス タントを務める。演奏家.com(www.enso-ka.com)主宰。

内藤 正典
「影」
【解説】影はあらゆるものに付きまとう。何かが存在するために、影は必要不可欠なものなのだろうか。影がないという状態があり得るだろうか。しかし、影はそれ自体では存在し得ない。その影が一人歩きを始めたら? また、音にも影があるのだろうか。 などと空想しながら作曲を始めた。主に、立体感、遠近感に重点を置いて。

【作曲者プロフィール】洗足学園大学音楽学部作曲専攻卒業。1998 年夏期アトリエで作曲を、2004 年夏期アトリエで演奏を学ぶ。夏期アトリエに参加。現在、都内を中心に室内楽や電子音楽の創作活動を行っている。

福原 聡太郎
[3:4]
【解説】当然ではありますが、シュトックハウゼンは偉大でした。心に響く音楽にはまだ出会えますが、人生に響く音楽にはなかなか出会えません。彼のような偉大な作曲家になるために、100 以上の実験を試みました。(コンピュータを使用しない、モノトラックを大事にするなど)

【作曲者プロフィール】慶応義塾大学政策メディア政策科修士課程を首席で修了。在学中より CCMC への参加をきっかけに、ミュージックコンクレートを始める。松任谷正隆、菊池成孔にポップスを師事。高間賢治にカメラを師事。筒井武 文に映画を師事。

安野 太郎
「ののじで」-あるいはバッハの魂に触れるとき-
【解説】この作品は 8ch のスピーカ間で鳴らされる音の定位が作曲の主なイデアの一つとなっている。実際の作品中では八角形に配置されたスピーカを五角形二つに分け、五角形の全ての経路における音像の移動を試みており、そこで鳴ら される音源は、スピーカ間のあらゆる移動経路のパターンをごく短い時間の波形に変換して出力しています。この試み は、波形のデザインという微視的な視点と音像定位などの巨視的な視点を同時に往復(同時という時点で往復ではない が)しそれら全てが関連しあっている超自然芸術の試みです。

【作曲者プロフィール】1979 年東京生まれ。ブラジル人の母と日本人の父の間に生まれる。{(+1)+(-1)=0} 東京音楽大学卒業及び情報科学芸術大学院大学(IAMAS)卒業。これまでに小池陽、西岡龍彦、成田和子、土屋雄、 三輪眞弘各氏に師事。方法マシンメンバー。近年の活動は、Ars Electronica や横浜県民ホール、演算するからだ展な ど。他ジャンルとの共同作業としては、横浜トリエンナーレ等で映像作品の為の音楽作曲や舞台作品との共作など。 12 月 14 日からはアサヒ・アートスクエアにて演劇ユニット「portB」との共作である舞台作品の発表を行なう。
webページ http://taro.poino.net/

2005 年 12 月 11 日(日)東京日仏学院エスパス・イマージュ

第1部 14:00 マルチ・チャンネル・スピーカー・オーケストラ・ライブ 〜フランス・アクースマティック作品の現在

ドゥニ・デュフール
“Suite en trois mouvements – 3楽章の組曲”
【解説】この作品は、2 つのまるい音(シャープなもの&粒子なもの)が交互に交差し、音のい動きがプリミティブ なメロディーを描く。シンプルない動きと、繋がって広がり、プクプクと孵化したような音が循環し、一貫性のある パーカッションのクレッシェンドと絡み合って展開されていく。この2つの丸い音のトラック(ドミニク・デュプイ『天 使の黙示録』より)をドゥニ・デュフールの手によって自由に再構成され、それぞれの「音」のコントラストの浮き出 た質感が空間的に表現されていく。

【作曲家プロフィール】アクースマティック、器楽作曲家として、ヨーロッパ中心に国際的に活動する。ピエール・シェフェール、ピエール・アンリ、イボ・マレックと仕事をし、2000 年まで、INA-GRM のメンバーとして活動する。 以後自ら主宰する MOTUS で、国際電子音響音楽フェスティバル「フュチュラ」(FUTURA・SYNTAX)、アクースマティッ ク・コンサート(LA NUIT BLANCHE・ACOUSMA RAVE)など年間 100 公演のコンサートのオーガナイズ、また、レーベ ル活動、エディション出版などを手がける他、リヨン国立音楽院、現在ペルピニャン国立地方音楽院の教授として多 数のレクチャー、研修など行う。これらの多くの活動はアクースマティック・ミュージックの後継者として、重要な 存在として支持されている。

クリスチャン・ザネジ
“Le paradoxe de la femme-poisson – 女-魚のパラドックス”より “Jardin sous l’eau – 水中の庭”
【解説】一隻のボートと2つの影、3人のセイレーン(ギリシャ神話の人魚)そして4人の水夫。そんなイメージからはじ まり、1998年7月マルセイユにてMichel Kelemenisの振付のために作曲された。この壮絶な一ヶ月間、私は毎日7人の ダンサーたちを徹底的に見て、ちょっとした動きや身振りに次ぐ身振りを合わせ、動きの理想的な流動性を求めて励 んだ。この段階的な工程を経て、曲のテンポはダンス(それは螺旋状であったり、伸びたり、静止したりまた爆発し たりする)のそれと結合したのである。(Christian Zanesi)

【作曲家プロフィール】ポー大学で学んだ後、パリ国立高等音楽院でピエール・シェフェールとギィ・レベルの各氏に 師事。1977 年より INA-GRM(フランス視聴覚研究所・音楽研究グループ)のメンバー。

ミッシェル・シオン
“La messe de terre – 大地のミサ”より“Gloria – グロリア”(映像付き)
【解説】この作品は、“La Messe de terre – 大地のミサ”2時間30分からの抜粋の1シーンである。意表をついた テキストと、エレクトロアクースティックで構成され、最も美しい美意識と、様々に変化する発奮(刺激)、狂った感覚が同等に現れ、チグハグな独特なセンスで織り込まれた物語的な作品である。小さな村のイメージに、美しい水 のアコーディオンの響きと通り過ぎる空気のような歌声に、ちょっと狂った何でもありな不安や衝突、グロテスクな うめき声などが対位法的に現れ、展開されていく。

【作曲家プロフィール】フランス国営ラジオ放送局にて、ラジオディレクターを務め、INA-GRM の文献出版責任者を担当する。また、1981〜1986『カイエ・ド・シネマ』の映画評論家を担当する。映像と音の関係についての研究、音楽、映画評論などの著書もたくさん出版している。主な著書『ジャックタチ』『デヴィッドリンチ』『映画にとって音とは 何か』『穴のあいたスクリーン』『オーディオヴィジョン』など。ジャンヴィゴ賞、クレルモンフェランド大賞、モン トリオール賞受賞。音楽作品では、耳のための映画、メロドラマ・コンクレートという作風で、物語性の高い作品の いくつかがある。代表作「レクイエム」など。

ダヴィッド・ベアー
“Connecté – コネクテ”
【解説】低音を生かしたアグレッシブな動きと、浮遊する空気のコントラストが抽象的でシャープな作品。

【作曲家プロフィール】ドゥニ・デュフールに師事。また、MOTUS レギュラーメンバーの演奏家としても、1997 年より活動する。ピエール・アンリ ミュージック・コンクレート50周年(モナコ)で受賞。アクースマティック演奏コ ンクール(トゥールーズ)受賞。DJ D-NICE として幅広いジャンルと交流をもち、ジェフ・ミルズなどとの共演、エレ クトロ・インプロヴィゼーションなどでもヨーロッパ中心に活躍している。

アクースモニウム演奏:鶴田 聖子
【演奏者プロフィール】空間音楽作曲家、アクースマティック演奏家、主にコラボレーションによる音楽制作を手がけ、CM、プロモーション映像音楽、ショー、舞台音楽を中心に活動する。また、空間インスタレーションなどの電子音響 を担当するほか、美術館、博物館の音響設計、空間音楽を手がける。1999 年より、アクースマティック・ミュージ ックを学び、文化庁新進芸術奨学生として留学、ドュニ・デュフール、ジョナタン・プラジェの各氏に師事。FUTURA、 SYNTAX 他参加。フランス、イタリアにて作品発表、演奏活動する。

アクースモニウム演奏:渡邊 愛
【演奏者プロフィール】3歳よりピアノ、12歳より作曲をはじめる。東京音楽大学作曲専攻を経て、現在同大学院2年に在籍。2003 年、東京音楽大学学長賞受賞。今までに作曲を西岡龍彦・尾高惇忠・小鍛冶邦隆・糀場富美子・西村 朗・細川俊夫、ピアノを堀江真理子・中嶋香の各氏に師事。2004 年、MOTUS 夏期アトリエに参加、ドゥニ・デュフー ル氏にアクースマティッ ク作曲を学ぶ。2005 年には同アトリエにてアクースモニウムによる演奏をジョナタン・プ ラジェ氏に師事。

第2部 15:30 音楽と映像 〜フィリップ・シャトラン展
ビデオ作品 “A propos du calcul exact de la spontanéité des images –画像の自発性における正確な計算について”

音楽作品 “work in fragments I”

第3部 17:00 作曲家によるマルチ・チャンネル・スピーカー・オーケストラ・ライブ
アニエス・ポワソン“Elle dormante Nos mères ne sont pas éternelles –彼女は眠る 母たちは永遠ではない”
【解説】両極端の感情が交錯し、不均衡が感覚に訴える。この耐えられない痛みに対照して、花束のような音がある。 恐らく彼女だけが暗示を理解できるであろう。掟なき生と死の狭間に、秘められたアイロニーが埋もれたままになっている。

【作曲家プロフィール】電子音響音楽の作曲と演奏、サウンド・インスタレーションを行い、ショーやコンサートで活躍する。1985 年よりフェスティバル FUTURA のプログラミングを担当している。

アクースモニウム演奏:志賀 浩義
【演奏者プロフィール】1974 年山口県生まれ、東京都在住、音響技術専門学校卒業、サウンド・エンジニア、作曲家と「Inner-Ear Project」発足。サウンド・インスタレーション等を制作。インターネット博覧会 愛知県パビリオ ン「遊びの企画会議」、遊びのプログラム開発をおこなうグループ「CAFE2002」メンバー。「INA-GRM」夏期アトリエ 2002、CCMC2003 参加。2003 年、神戸で開催された「Digital Music Festival 2003」にて、アクースモニウムで「夜 の虹(作曲:桧垣智也)」を演奏。現在、エンジニア業の傍ら、アーティストとのコラボレーション、ワークショッ プの開催等で活動中。

高原 聰子
「hallucination」
【解説】ガラス越しに見る世界は、真実でありながら、そのものではない。歪曲され、ときに幻想的でさえある。現実とは、ガラスのように、形があって無きがごとく、脆く、儚いものであるのかもしれない。Glass_ g・la・(e)s・(e)s_ソ・ラ・ミ・ミ_空耳。

【作曲者プロフィール】雅楽(笙)奏者。東京芸術大学音楽学部楽理科卒業。同大学院修了。笙演奏および雅楽合奏、左舞を故・多忠麿、芝祐靖、多忠輝、東儀雅季、宮田まゆみの各氏に師事。国内外の音楽祭、演奏会、FM 放送等に 出演。古典雅楽のみならず、新作、他ジャンルとのコラボレーションにも積極的に取り組む。GRM夏期アトリエ1999、 2000 年参加。FUTURA2001 出品。また作品はドイツのラジオ局 WDR にて放送されている(2001, 2003 年)。

仲條 大亮
「PPM」
【解説】タイトル「PPM」は、物理現象の近代的な解釈を意図した略称です。これは濃度をあらわす単位を兼ねた表記でもあります。現象学と心理学のポリフォニックなモンタージュとしてもよいでしょう。楽曲は小組曲として、多様 な読解ができるよう構成してあります。音響の歴史=聴覚的な物語を、呼吸するように聴く喜びを。自由に楽しんで いただければと思います。

【作曲者プロフィール】1971 年、北海道生まれ。東京在住。4 歳からオルガン演奏の教育を受け、10 歳からコンピュータのプログラミングを始める。学士(文学)、修士(比較文化)。専門は 20 世紀の歴史音楽学、音楽理論。 現在は国際基督教大学大学院博士後期課程に在籍、電子音響音楽作品の成立に関する博士論文を執筆中。

行田 朋弘
「S/G」

【作曲者プロフィール】1984 年生まれ。電子音響音楽の作曲を中心に活動。時間を様々な観点から解釈することに主な関心を寄せて制作している。即興演奏による可能性を追求するグループ「3rd person」の一員。電子音響音楽、 即興音楽などを扱うレーベル JUST MUSIC RECORD(http://just-music-rec.com)を現在運営する。
自身の HP は http://www17.ocn.ne.jp/ ~tgnuma/index.html

長瀬 元
「通行人と停留所 – Passagers et arrêt」
【解説】連続して舞踏を観る機会があって、この作品はちょっと影響されたかも。和の響きバブルではないけれど「社 会を導かんかな」思想丸出しの連中にうんざりしていたぼくにとって、受け手が自由に判断する比重が大きい点で、 近い位置にあると感じたから。決してダンスは想定しないが、重なりつつ移り変わる場面と孤立してとどまる何物か、 そのどちらかに視点を置くかで作品の感じ方が変わってくれていい。そううまくきこえたらの話だが。

【作曲者プロフィール】1963 年生まれ。学生の頃に個人レッスンで和声・対位法・音楽学等を習った以外ほぼ独学。 90 年代編集記者として音楽出版に関わり、音楽祭や交響楽 団、公共ホール等の媒体を手掛けていた。その後 CCMC2003 夏期アトリエに参加するなど創作活動をゲリラ的に進めている。

金井 勇
「前奏曲 – Prélude」
【解説】友人でもある詩人のトマ・ブランド氏が私のために書いてくれた短編詩「vertige(眩暈)」からインスピレイションを得て、「vertige(眩暈)」のタイトルでコンピュータと器楽アンサンブルのための混合作品を作曲し、2006 年 3 月に初演の予定であるが、その作品のための、文字通りの「前奏曲」として作曲した。電子音楽の無限な可能性 の中で敢えて限定された素材に対しシンプルな加工を施すことを念頭に、極めて禁欲的な内容に仕上げることを目標 としたコンクレート作品である。

【作曲者プロフィール】現在、東京音楽大学大学院(作曲専攻)に在学中。これまでに作曲を池辺晋一郎氏、指揮を汐 澤安彦氏、篳篥を西原祐二氏にそれぞれ師事。2002 年第 2 回JFC作曲賞コンクール入選。2003 年第 72 回日本音楽 コンクール作曲部門第 2 位入賞。2005 年第 16 回朝日作曲賞入選。主な電子作品には「誘発と感化」、「暮れ−到来」 など。他に「風の密度」(2006 年全日本吹奏楽コンクール課題曲)「誘発の形」、「ソロ・パーカッションのための『炎の宴』」、「オンドマルトノのための『氷の精霊』」、「吹奏楽のための『風の身振り』」などがある。

宮木 朝子
「Litho、そしてDubhlinnの瞳」
【解説】2005 年夏、パリにて制作,クレストのフェスティヴァルで自演した<Lithokronos3>と、秋に徳之島の野外闘牛場にて行ったダンスパフォーマンス用の音楽を再構成してリミックスを行う。<Dubhlinn の瞳>というタイトルは、パフォーマンスの立案者である今福龍太氏の詩からいただいた。密室の中で制作された電子音響が時に風のなかに散り消えてゆくことや、時には何の音も発することなく地下をふきわたる風の気配や地下水の音に耳を傾ける喜びも、 奄美を巡る旅の途上で知った。徳之島の闘牛場、牛の蹄によって掘られた中央のくぼみにできた水たまりに映る空。 虚空をうつし、虚空へと還ってゆくその瞳、そのまなざしの先を、想像している。

【作曲者プロフィール】2003 年、沖永良部島にて巡礼野外劇<南海のオルフェウス>(企画・演出/今福龍太)の音楽・ 音響を担当し、鍾乳洞や酒工場の中にてサウンド・インスタレーションを行う。2005 年、徳之島の野外闘牛場に てダンス・パフォーマンス(テキスト・企画立案/今福龍太 ダンス/中村達哉)の音楽を担当、自然音と多数の スピーカーによるサウンド・インスタレーションを行う。2004 年より NHK 技術研究所の立体音響研究に音楽・音響 制作協力。2005 年より国立天文台・四次元デジタル宇宙プロジェクト 3D 宇宙映像の音楽・音響を担当(東京・お台 場の日本科学未来館にて常設上映中)。洗足学園音楽大学、音楽・音響デザインコース講師。

柴山 拓郎
「in the blue sky」
【解説】in the blue sky の sky であるが、日本語にすると「空」である。 空に存在しているものが「air(空気)」で、不在を表す言葉が「空」っぽ、である。今回の作品も、そんな存在と不在の狭間のイメージによるものである。 その作品を空間に投影する。存在と不在の狭間としての、青く晴れわたった「空」の、希望に満ちた行き止まること のない深さに、どこまでも吸い込まれてみたいという願いを込めて。

【作曲者プロフィール】東京音楽大学大学院作曲専攻修了。94 年日本音楽コンクールに、95 年秋吉台国際作曲賞に それぞれ入選。曽我部清典、門光子、松居直美の各氏のCDに作品が収録されている他、音響デザインやインスタレ ーション等、美術作家とのコラボレーションも多数手掛ける。現在東京電機大学理工学部情報社会学科にて作曲・音 楽文化研究室を運営、音楽文化に関する研究や、音楽作品に留まらない新しい表現やその技法について後進の指導に あたっている。

CCMC2006

2006年2 月 18 日(土)

■ 公開講座 15:00「音と音楽」 講演者:岡本 久

■ 第1部 17:00  Motus 夏期アトリエ 2005 PARIS-CREST 制作作品コンサート

大畠 和也
Lumière noire 光 – 闇
曲目解説 相対する物の中にはその間がある。
光と闇の間には様々な色が存在するであろう。
音に対するイメージは人それぞれ違っている。 その像は自分自身が体験してきた色々な出来事が相互に絡み合って構成されている。また、経験不足によりその像がと ても曖昧な物になっているかもしれない。相対する物を見つけるにはその間隔を押し広げていくことでしか見つけられ ない。常に広がり続ける。決してふれることは出来ないであろう。

プロフィール 大阪芸術大学音楽学科音楽制作コース在籍。 作曲を田中久美子、上原和夫の両氏に師事。現在、クラシックの作曲と共に電子音楽の作曲にも力を注いでいる。

原田 豪
Montparnass N ゚X [Visual Remix]
曲目解説 この作品はフランスの MOTUS 夏季アトリエで制作されたものである。今回はその作品の断片を再構築し、テクノにす る。さらに映像を加えた。
少年は日本で殺人を犯してしまった。そして高飛びすべくフランスへと渡った。 厳しい現実から逃避する為に彼は芸術を始めた。そんな少年の苦悩を描いた。

プロフィール 1984 年生まれ。福岡県出身。高校2年の頃から打ち込みを始める。2003 年 大阪芸術大学芸術学部音楽学科音楽工学 コース入学。上原和夫氏の指導の下メディアアートに興味を示す。以後、独学でデザイン・映像を学んでいる。2004 年 インターネット音楽 DL サイト Muzie で総合ランキング 1 位を獲得する。九州大学『FREQ04』にて映像作品を上映。 2005年 檜垣智也氏、デュニ・デュフール両氏に電子音響音楽を師事。フランス『FTURA05』にて電子音響音楽を演 奏。イアマス『アルゴリズムとからだ展』にてノート PC1 台でライブを行う。

村田 光俊
Human in the Earth
曲目解説 今、世の中では戦争や紛争、また環境問題など様々な問題がありますが、この問題のすべての原因は人間によるもので す。これは地球と人間のリズムが合致していないゆえに起こっているのだと感じます。これを変えていけるのは人間に しかできないと思います。そしてその中でも「音楽によって変えていくことができるんだ」ということを表現したいと 思い作りました。

プロフィール 高校生からバンドを組んでドラム、キーボードをやってきました。大学からは DTM もやり始めました。今は Jazz に興 味をもって Jazz Piano をやっています。今年から社会人ですが、バンドを新たに組んで精力的に音楽活動して意向と考 えています。

大川 剛
華鳥風月 II
曲目解説 本作品シリーズ、「華鳥風月」は日本特有の四季の風景を表現した作品である。今回の「華鳥風月 II」では日本特有の夏の過ごし方である「音による涼」をテーマにして水琴窟の音色を用い暑さと涼しさを妖艶かつ、対比的に表現している。

プロフィール 大阪芸術大学音楽制作コース卒業。 作曲を吉良武、松永通温、大前哲、デュニ・デュフールの各氏に師事。 アクースマティックをデュニ・デュフール、ジョナタン・プラジェの各氏に師事。 2002 年福岡現代邦楽フェスティバル、作曲部門入選。 現在フランス国立ペルピニャン音楽院作曲専攻に在学中。

■ 第2部 18:30 作曲者によるアクースモニウム・ライヴ・コンサート

 葛西 聖憲
Etude 2006曲目解説  毎年この音楽会に出品させていただいてその都度新しい試みを盛り込むということで曲名を Etude としています。シン セサイザーの音に少し興味を持ったので、今回はそれを盛り込もうと作り始めたのですが、どうもしっくりしないので、 急遽、ヴァイオリンの音のみでの創作に切り替えました。ちょっと耳にきつい音素材のみでの試みです。

プロフィール 東京藝術大学音楽学部作曲科卒業、パリ国立音楽院の作曲,管弦楽法,和声およびフーガのクラスを1等賞にて卒業。 現在、同志社女子大学学芸学部音楽学科教授。京都市立芸術大学非常勤講師。

吉原 太郎
the airflow 〜空から
曲目解説 2004 年夏、テープレコーダーを片手に甲信越の山々を音を求めて放浪した。異なる場所で収録された受け身のみでしか 得ることのできない自然素材をもとに、訪れた地である複数の空間を統合しようと試みた。 本作品は昭和音楽大学でマルチチャンネル版初演後、CCMC2005(日仏会館ホール)、フテュラ国際電子音楽フェステ ィバル(南フランス)で再演、ACSM116 よりリリースの CD Nouvelles musiques concrètes vol.1 に収録。
演奏:檜垣智也

プロフィール 昭和音楽大学卒業、山梨大学大学院修了。 作曲を豊住竜志、藤原嘉文、電子音楽を成田和子の各氏に師事。
Ina-GRM 夏期アトリエ 2001 へ参加。作品は CCMC をはじめ日本電子音楽協会定期演奏会、ブルージュ国際電子音楽 創作フェスティバル(フランス)、フテュラ国際電子音楽フェスティバル(フランス)、電子芸術国際会議 2002(名古屋) 等で紹介される。2005 年にはブライアン・ E とのユニットでレイブプロジェクト GROOVE-F に参加(カナダ)。本年 度はヤマハ音楽振興会より助成を受け電子オルガンの空間音響制御に関する研究に参加。現在は久しぶりにオーケスト ラ作品を作曲中である。

柴山 拓郎
in the blue sky
曲目解説 in the blue sky の sky であるが、日本語にすると「空」である。 空に存在しているものが「air(空気)」で、不在を 表す言葉が「空」っぽ、である。今回の作品も、そんな存在と不在の狭間のイメージによるものである。その作品を空 間に投影する。存在と不在の狭間としての、青く晴れわたった「空」の、希望に満ちた行き止まることのない深さに、 どこまでも吸い込まれてみたいという願いを込めて。

プロフィール 東京音楽大学大学院作曲専攻修了。94 年日本音楽コンクールに、95 年秋吉台国際作曲賞にそれぞれ入選。曽我部清典、 門光子、松居直美の各氏のCDに作品が収録されている他、音響デザインやインスタレーション等、美術作家とのコラ ボレーションも多数手掛ける。 現在東京電機大学理工学部情報社会学科にて作曲・音楽文化研究室を運営、音楽文化に関する研究や、音楽作品に留ま らない新しい表現やその技法について後進の指導にあたっている

 岡本 久
私が聴いたものたち
曲目解説 日常生活において、あるいは特別な場所や状況の中で.いずれにせよ私はこれまでずっと様々な音に興味を持ち続け てきた。特にこの作品がそれらの音を集大成したものであるとか好きな音ベスト 10 で構成しているとかいうわけではな いが、記録に残したいくつかの音の中から気に入ったものを選び、存在していたときとは別の空間で響き合わせること が好きな私としては、そうした行為の結果を誰かに聴いてもらいたいとは思うものの、単に自己満足を得るだけのため に無理やり聴かせるものではありたくないと考えている。

プロフィール 大阪芸術大学音楽学科作曲専攻卒業。作曲を原嘉寿子氏、七ツ矢博資氏に師事。 和声法および対位法をサルバトーレ・ニコローシ氏に師事。卒業後、様々な作曲作品の発表活動を行うとともに、電子 工学やソフトウェア技術を習得。多様なコンピュータ・ミュージックの作品制作や研究など幅広い活動を行っている。 またマイクロコンピュータを用いた独自の電子楽器の設計・製作なども行い、それらを用いたサウンド・インスタレー ション作品の展示やステージ上でのパフォーマンス、映像などと組み合わせたマルチメディア作品に至るまで独自性の 高い多種多様な作品を生み出し続けている。 神戸山手短期大学表現芸術学科専任講師、大阪芸術大学音楽学科非常勤講師。

田中 司恩
新しく生まれる音
曲目解説 世の中の音は何らかの原因があってこの世に生まれ、力強く響き、そして静かに消えていく。それは絶えることなく無 限に続いている。そうした数え切れない音が生まれてから消えていく中で、私は一つの音に大きく感動させられた。 それは私の子供の誕生の瞬間の音である。産声を上げて生まれてくる子供の誕生は、まさにこの世に新しい音が誕生し た瞬間である。本作品ではこの子供の誕生の瞬間を新しい音の誕生のテーマとし、作品の制作を行った。
本作品は 3 つの部分から構成されており、全体を通して一つの大きな音の誕生を表している。
1.初動
2.共鳴
3.余韻

プロフィール 大阪芸術大学音楽学科音楽工学コース卒業。 学生時代に録音、電子音楽の制作を学ぶ傍ら、現代音楽の世界を知り興味を持つ。また自身によるパフォーマンス、サ ウンドインスタレーション、映像作家への楽曲提供など活動は多岐に渡る。 最近は自らディジュリドゥ奏者として、アーティストとのコラボレーションや、バンドの演奏に参加。またエンジニア としてインディーズバンドのアルバムの録音、制作を手掛ける。
大阪電子専門学校非常勤講師
大阪大学中之島センターシステムエンジニア

檜垣 智也
幽霊の歌(2006)
曲目解説 谷川俊太郎の詩「幽霊の歌」をテキストにしたこのアクースマティック歌曲は、prelude, ballade, blues, waltz, sere- nade, air, march の7つの部分から成り立っており、連続して演奏される。 私はこの“アクースマティック歌曲”シリーズで、様式化された音声表現による「言語」と「音」の新しい関係を探究 している。
詩の出典:谷川俊太郎「ONCE-ワンス 私の 20 代 1950-1959」(1996 年、集英社)
声の出演:東さわ子

プロフィール 1974 年、山口県生まれ。檜垣智也の仕事は作曲とアクースモニウム演奏から構成される。作品は器楽(「5つのハイク」 (2004))、電子音響音楽(「春のボレロ」(2005))、器楽と電子音響の混合作品 (“メランコリー”(2005))、サウンド・イン スタレーション(「取り替え可能な 12 のクリスマスの空音」(2001))と多岐にわたるが、いずれも、音の〈形態/モル フォロジー〉のエネルギー推移を用いた独自のダイナミズムに基づく、繊細で詩的な作品に仕上げられている。2003 年 より、国際アクースマティック芸術フェスティバル FUTURA(クレ)に参加、現代音楽プロダクション MOTUS(パリ)の アクースモニウム演奏チームにも加わっている。http://musicircus.net/

かつふじたまこ
秘密の待ち合わせ
曲目解説 音:かつふじたまこ 映像:大和川レコード
よく知ってるはずの自分ちの猫が、うちの塀を越えた時、知らない世界の猫になる。知ってるはずの知らない猫が、知 らない何かを待っている。それは秘密の待ち合わせ。近寄って行って抱き上げたら、知らなかった猫は知ってる猫にな るのだろうけど、「秘密」は「秘密」のままにしておくのもいいかな、と思う。(TK)
世界中のみんなが、”常に”誰かを待っているのかもしれない。所謂「待ち」の領域を超えて、時と場所を行き交う人々が 遂に出会う、その瞬間までのプロセスが、神様の仕掛けた「秘密の待ち合わせ」なのかもしれない。世間ではこれを「運命」とでもいうのかしら。(Y)

プロフィール 1973 年、大阪に生まれる。大阪芸術大学在学中より詩や言葉に興味を持ち、それらを用いたシアターピースの制作を始 める。卒業後、音響家として様々な舞台芸術の音響制作に携わる。一方、声や日常、非日常にちりばめられた音を紡い だ音作品を、国内外で発表。また、そよか、隅地茉歩らのダンス作品とも共演。
http://www.geocities.jp/tsuki_neco/

大和川レコード(YamatogawaRecord)
1979 年生まれ。大阪市立大学卒。阿佐田亘の活動名義。日常行為と表現行為の境界、社会とアートの繋ぎ目に触れる各 種メディア作品(映像、インスタレーション、サウンドスケイプの制作、パフォーマンス、地域プロジェクトなどに取り 組む。”個”としてのメディアの在り方を創作。 http://www.geocities.jp/endeavor0203/

2006年2 月 19 日(日)

■ 公開講座 12:30「コンピュータ音楽」 講演者:岡本 久

■ 第1部  14:30  CCMC 公募入選作品コンサート1

工藤 健
silent train
曲目解説  この曲のテーマは「音の形態模写」です。今回選んだモチーフは「列車」ですが、一見モチーフとはあまり関係がない ように思われる素材からいかに自分の持っている列車のイメージに近づけられるかを追求しました。静けさの中に浮か ぶ音から、皆さんの思い浮かべる「列車」を見つけ出していただければ幸いです。

プロフィール 1985 年生まれ。吉原太郎に電子音楽を師事。現在、昭和音楽大学短期大学部電子音楽コース在学中。

永野 隆満
葛藤
曲目解説 今回の作品はその典型とも言える曲である。人の心が揺れ動く様。目に見えず、ただ感じとる事だけがそれを表 現する唯一の術である。人は生きている限り、様々な困難に直面するであろう。その度に悩み苦しむ筈だ。 しかし、その心の『葛藤』をも乗り越えた先に見えるもの。それは新たな光であり、新たな自分への再出発とな るのでは無いだろうか。 今回精神的なものを音として表現してみた。その結果産まれた曲が『葛藤』となったわけである。

プロフィール 昭和音楽大学在籍。現在作曲家吉原太郎先生に師事。偶然から産まれた奇跡のサウンドをテーマに日夜音造りに 励む。

山田 美慧
Hitomi(東英絵の“ Chorion ”より)
曲目解説 2003 年から、KINKY というグループにてダンス・パフォーマンス作品を中心に制作を続ける。 “Chorion”というダンス作品(2005 年 10 月に上演)の為の楽曲を英絵に依頼しレコーディングした音源と、日常的に 集めていた音源とを使用して、音響作品としての“Chorion”を再構成した。
※ Chorion…(英・生物学) 絨毛膜 ギリシア語の”皮膚”に由来し、絨毯に似ている海藻のような柔らかい膜。胎児の皮膚の延長であり、栄養を吸収するもの。
それまでは己の肌で命に必要な物質を得ていたが、それを捨てて産まれた今でも、肌の延長に何か大きな存在を感じ、そこに常にアクセスしているような感覚があるように思われます。

金子 雄大
錆びた自転車
曲目解説 錆びた自転車に乗れるかな。
風は見方してくれるのかな。
空は何を知っているのかな。
気分はついてくるのかな。
うまく乗れるかな。

プロフィール 一般的な楽器を使用した楽曲を五線譜から発想する事を主体として、さらに、そこに表わしきれない何らかの<音>を 楽器に融合させる作品を発表している。最近は、音と映像の作品に取り組んでいる。

佐藤 亜矢子
たゆ たけ
曲目解説 この作品には7つの音素材が用いられている。
ひとつ、氷。洗面台の中、ボウルの中、少しずつ融けていく最中の微かな音、カラカラかき回す音。
ふたつ、ミニガムラン。調律の狂ったオモチャのガムラン。
みっつ、鳥笛。陶器で出来ており、水を入れて吹くと鳥の鳴き声のように鳴る。
よっつ、竹製の縦笛。数百円で購入した雑貨を尺八風に吹いてみた。
いつつ、マンドゥック。バリ土産。カエルの鳴き声のようにギコギコ言う楽器。
むっつ、うた。私の歌った適当な歌。内容は、無い。
ななつ、虫。夏、東北の夜。田んぼの横で録った音。 和のようで、異国のようで、国籍不詳の「静」の中で耳を欹てる空間を創作しようと生命力を持ったこれら音素材たち に手を加え、作品を構築した。

プロフィール 1981 年生まれ。神奈川総合高校卒業時の作曲作品にて初めて具体音を用いる。 2000 年洗足学園音楽大学作曲専攻シンセサイザー科に入学。在学中、民族音楽・楽器に目覚め、学内の民族楽器部主将を務める。
2004 年首席卒業後は、ヘアショーや、ハウス、アフリカンなどダンスの音楽を手がけ 2005 年より同大学院音楽研究科 に在籍。具体音を主体とし、民族楽器を取り入れた音楽作品を主に制作している。宮木朝子氏に師事。

及川 潤耶
Plastic Recollections
曲目解説 単一の発音体から限られた素材を操作し、音の刷り込み・音の回想が禁欲的に進行し内面の喪失感を懐古する。

プロフィール 1983 年、仙台市生まれ。 4歳よりピアノを始める。その後、ピアノ/エレキギターに没頭しロックバンド活動を経て現在、洗足学園音楽大学音 楽・音響デザインコース 3 年次在学中。これまでに作曲を狩野宗一、西岡龍彦各氏、ピアノを多田真一、福原圭三、狩 野宗一各氏に師事。
2004 年日本電子音楽協会演奏会にて宮木朝子氏の作品「Orfeu mix − for electronic organ, electric guitar and elec- tronic sound」を平沼有梨氏と初演。2004 年前田記念奨学金受賞。AES2005「学生のためのサウンドアウォード」優 秀賞受賞。松音会会員。

■ 第 2 部 15:30  CCMC 公募入選作品コンサート2

村岡 睦稔
第十九章五節
曲目解説 不安定な現代社会において、我々に課せられた最も重要なことは「思想」である。音楽理論でも、最高峰の技術でもな い。「思想」や「哲学」が著しく欠如した音楽がありふれている中で、「音楽の本質」を見出すのは難しい。では、どの ような思想を持てばいいのだろうか。その答えを聖書を頼りに探してみた。私はこの聖句になにか「鍵」があるような 気がしてならないのだ。

プロフィール 1981 年生まれ。大阪芸術大学音楽学科出身。現在は東京にて作曲活動の傍ら、楽器メーカーにてプロオーディオのアド バイザーとして外部委託契約締結。最近では Play station2 用ゲームの音楽担当、タレントへの楽曲提供等。、作曲領域 以外の活動としては、音楽雑誌「DiGiRECO」をはじめとする各種音楽雑誌でコラム、製品レビューを執筆している。村岡睦稔 web http://m2-tracks.com/

渡邊 愛
professor amibic
曲目解説  使用された素材はパリにて自ら録音したものを中心にしている。 曲はノイジーなシーンと声を主とするシーンの2つでかたちづくられている。 ただ声の扱いはいわば絶対的なもので内容としてのメッセージ性はなく、無骨な音を重ね連ねる作業を通じて、音に入 り込むことで自分を問い、追い込み、対 話する時間が重要であった。よって極めて私的な音楽である。
pro-tools のみで制作されたが、凝ったプラグインは殆どつかっておらず、原初的で直接的な感触を求めた。アクースモ ニウムの音響空間でいきいきとした律動をみせることを望んでいる。タイトルは制作時に傍読していた小説より拝借し た。

プロフィール  12 歳より作曲をはじめる。
東京音楽大学作曲専攻を経て、現在同大学院2年に在籍。2003 年、東京音楽大学学長賞受賞。現在、西村朗・細川俊夫 の両氏に師事。器楽/電子作品、ダンスとの共作や映画音楽など、創作活動は多岐にわたる。2004 年 8 月、MOTUS 夏期アトリエに参加、ドゥニ・デュフール氏にアクースマティック作曲を学ぶ。2005 年 2 月、東京におけるアクースマ ティック・ミュージック・フェスティバルで“a tes amours”を自演。同年8月にはMOTUSアトリエ演奏コースに て演奏をジョナタン・プラジェ氏に師事。アクースモニウムによるフェスティバル・ FUTURA にて演奏。今季の CCMC の東京コンサートにおけるマルチ・チャンネル・スピーカー・オーケストラ・ライブでは、フランスのアクース マティック作品を演奏した。

長瀬 元
諸々の循環:通過/停留 Circulations: passage/arrêt
曲目解説  ぼくはまだ初心者の部類に入ると思う。そのせいか無意識にであっても、取材した音のネタバレを恐れている。という か、使った音がたとえば思想・信条の面 で予期しない形にシンボリックな解釈をされるのが嫌。だから加工とコラージ ュを執拗にしてしまう。その結果がこの作品。ところで昨年 12 月 CCMC2005 東京で発表した《通行人と停留所 passagers et arrêt》は《諸々の…》に並行してできたもので、《諸々の…》を反面教師として万事抑え気味にした作品 だった。だから今回はその原点、元凶をやるこ とになる。《通行人…》の解説でも記したことだが、重なりつつ移り変わ る場面と孤立してとどまる何物か、そのどちらかに視点を置くかで作品の感じ方が変 わってくれていい。そううまくき こえたらの話だが。

プロフィール  1963 年生まれ。学生の頃に個人レッスンで和声・対位法・音楽学等を習った以外ほぼ独学。90 年代編集記者として音 楽出版に関わり、音楽祭や交響楽 団、公共ホール等の媒体を手掛けていた。その後 CCMC2003 夏期アトリエに参加す るなど創作活動をゲリラ的に進めている。

森田 信一
Udo
曲目解説 昨年のAcousmaticMusicFestivalのうち、2月21日に行われた、“Motus× Fuckaloop(HipHop)クロスオーバ ーライブとトーク”での議論は、大変興味深いものだった。アカデミックとダンスミュージックで、装置はほとんど共 通であるが、コンセプトのみの違いから出てくる作品の違いについての対話だった。

プロフィール 江崎健次郎氏に電子音楽を学ぶ。1972 年以降,同氏の主宰するグループ「音響デザイナー協会」に所属し,1973 年〜 1979 年まで“音展”(音の展覧会)に参加・出品。その後,東京学芸大学大学院で作曲を専攻。1984 年〜 1990 年,作 曲グループ「パッケージ 21」で作品発表。1990 年〜 1998 年「星の王国一座」,1998 年〜 2001 年 Titania で作品発 表。

■ 第3部 16:30  CCMC 公募入選作品コンサート3

パ音社
KABUKI TOWN
曲目解説  冬の盛り場をよく見てみる。景気はどうなのか?今年は冷えるのか?ポケットに手を入れた彼は歩きながら何を探して いるのか?新品のブーツで颯爽とくりだした彼女はどこへ向かっているか?どぶネズミが今嗅いだ、カラスがねらって いる、空気がふるえている。寒さに縮んだ顔が息をはきながらあふれ出してくる。街はまぶしい。ある日、山座がビデ オカメラを持って街に出、いつもの景色を注意してながめつつ、途中、警官に尋問をされ、ヤクザにいちゃもんをつけ られながら、収録した数々。会議の上、一条は画を編集、熊谷が音を加工、ある日の KABUKI TOWN を再現した。

プロフィール  はじめにひかりがあった。はじめにことばがあった。それは、パの音だった。”ある”ことの秘密を明かすための、はじめ の一歩として、まずは周辺の世界を見直すためにパ音社は結成された。現在社員は、山座寸知、一条司、熊谷淳の 3 名。

ryowta-kanasaki
人間
曲目解説 今回、マルチメディア作品としては処女作で、吐息、ため息、叫び声、笑い声等、人の発する音のみをサンプリング素 材とし作曲し、人間の迷い、葛藤、狂気、歓喜等、人間の内省的な部分を表現している。映像は実写による白黒作品と なっていて「人間は本能と理性のように対極により構成されてる。」という考えからきている。人間の感情や思考を音楽 と映像により昇華した作品となっている。

プロフィール Total Art Communication PLACEBO 代表。独自の哲学と世界観をもとに音楽、映像作品を生み出す。自身が主催の アートイベント RELAXN’では現代音楽、電子音楽、弾き語り、ピアノ、映像、絵画、漫才等、ジャンルにとらわれな い新しい発想により開催し好評を得ている。また VJ (Video Jocky) としても活動しており、VJ チーム Film Elephant の一員として Grand Cafe、Danceteria SAZA*E 等、大阪を中心にクラブイベントの映像を担当している。

宮内 康乃
過ぎ去りつつある絵画
曲目解説 これは映像と音楽のコラボレート作品である。映像とは一瞬一瞬過ぎ去っていく儚い絵画の集まりのようで、切り取ら れた瞬間の一枚一枚にその時の自己の内面が反映されているのかもしれない。映像が描き出す風景から想起される内面 の情景を音が重ねて描き出し、二つが合わさって初めて一つの「言葉」のようなものが生まれるのではないか、と私自 身は考えている。
映像:加茂 匠

プロフィール 1980 年生まれ。東京学芸大学 教育学部 音楽学科 G 類 作曲専攻卒業。作曲を山内雅弘、吉崎清富、ペーター・ガーン各 師に師事。現在、情報科学芸術大学院大学 メディア表現学科 スタジオ 2 在籍中。これまで作曲活動を行って来た中、映 像音楽に強く興味を持ち、様々な映画音楽や映像作家とのコラボレーション作品を制作してきた。現在自分自身の作曲 行為と表現方法について暗中模索中。

■ 第4部 17:00  CCMC 公募入選作品コンサート4

大畠 和也
YOIN 〜 SONATA 〜
曲目解説 人間は五感全てを使い色々なことを感じとる。
そこから、生まれて来るもは計り知れない。
言葉では表せない心の動き、そして感情は変化していく。
体が何かに包まれていくように。

プロフィール 大阪芸術大学音楽学科音楽制作コース在籍。 作曲を田中久美子、上原和夫の両氏に師事。
現在、クラシックの作曲と共に電子音楽の作曲にも力を注いでいる。

和泉 雅弘
空虚な歩み
曲目解説 この作品は、現実から離れ、空想の世界に浸る人間を描きました。 空想の中で、その人間は前に進もうとひたすら歩きます。しかし、歩いたところで現実は変わりません。 では、この歩みは無意味なのでしょうか。 確かに周りからしてみれば、無意味な行為にみえるでしょう。 しかし、その人間にとっては、とても大きな一歩となることもあるのです。 ですから、この空虚な歩みには何か意味があるのです。きっと。

プロフィール 1984 年生まれ。2003 年大阪芸術大学芸術学部音楽学科音楽工学コースに入学。 作曲を田中久美子氏に、電子音響音楽を檜垣友也氏に師事。尺八を湯浅富士郎に師事。

泉川 秀文
Purification − 浄化−
曲目解説 「或時、ひとりの僧あらはれたり。此の僧、笛を手に雨風波を呼び、あしきものをあらひながしたり。人々、其の僧を こも僧とよびたり。」
2005 年初夏、時雨の中、私はある山寺を訪れていた。夕暮れ、梵鐘の音を収録していた時、その美しい日本の原風景に 魅せられ、持ち合わせていた尺八を吹奏したくなった。そしてその時、普段、都会の喧騒の中で生きている私の内的発 想に重大な欠陥があることに気づき、間もなく本作品を作曲する運びとなった次第である。大まかには、導入から coda まで5つの部分からなっており、次々と変わってゆく場面それぞれにおける場の要素の有無と音の距離感、天然と人工 の対比が重要な要素になっている。

プロフィール 1981 年生まれ 大阪芸術大学音楽学科音楽工学コース卒業。研究生を経て現在、同大学院芸術制作研究科作曲研究領域に在籍中。大学 時は立体音響音楽のための音響システムを研究、製作。それを使用した立体音響作品、ライブパフォーマンスを多数発 表。現在は学内にアクースモニウムの設備が整うという幸運に恵まれ、アクースマティック・ミュージックの制作に力 を注いでいる。電子音響音楽を上原和夫氏に師事。

奥野 和憲
Composition VI
曲目解説 動物行動学者ジェーン・グドール氏の詩を用いた作品。

プロフィール 1980 年大阪生まれ。 大阪音楽大学短期大学部及び大阪芸術大学卒業。大阪芸術大学大学院に在籍中。
作曲を川島素晴氏、コンピュータ音楽を上原和夫氏に師事。 現代音楽作曲家・川島素晴氏の提唱する「演じる音楽/笑いの構 造」に大きな影響を受ける。 武生作曲セミナー、ドイツ・ダルムシュタット夏期講習、東京作曲フォーラムに参加第一回日本作曲家協議会作曲賞コ ンクール入選。京都三条ラジオカフェ FM79.7Mhz にて音楽番組「Radio Triangle」の制作・音楽・パーソナリティを務める。

かつふじたまこ
曇り空、白昼夢
曲目解説 私の頭はぐるぐる回る。あの日の夢の出口の先は、どこへつながってったのか。手引き車はコロコロと、あの子のあと を追ってった。私は独り、人込みの中。私の頭はぐるぐる回る。あの日の夢の出口の先は、どこへつながってったのか。 手引き車はコロコロと、あの子のあとを……..

プロフィール 1973 年、大阪に生まれる。大阪芸術大学在学中より詩や言葉に興味を持ち、それらを用いたシアターピースの制作を始 める。卒業後、音響家として様々な舞台芸術の音響制作に携わる。一方 2000 年パリ GRM 夏期アトリエ参加を機に、 声や日常、非日常にちりばめられた音を紡いだ音作品を制作、国内外のフェスティバル等で発表。また、そよか、隅地 茉歩らのダンス作品とも共演。CCMC2005 入選作『WRAP』が ACSM116 賞を受賞し、FUTURA’05 にて上演され る。http://www.geocities.jp/tsuki_neco/

森本 泰啓
過去へのレクイエム Requiem For The Past
曲目解説  当初、テーマとしては自分の中での忘れがたかったいろんな過去を改めて葬ることを「音」で表現するよう試案しまし た。作風もそのような感で、自らの解釈で構成したつもりです。言わば感情の産物でしょうか。本来は、作品構成とし てはもっと長尺なのですが、公募に応募するために 9 分弱で構成してみました。(笑) 故に作品としては未完です。 しかし、作品名だけで捉えた場合、これは方々な解釈が想定できるかと思います。それが今回のテーマの機軸にある「後悔」、「損失」等が招く「人間としての失活」といった「出来事の風化」についてであったり、または「瞬間の手前」 や「時間以前」など、「時」そのものであったり。
今後はそれらを踏まえて、同じ作名 = 題材において、それが持つ連続性の派生または一括化を発展させる試みを考えて います。 この作品の「音」の発生の源は「電子音」といわゆる「具体音」で構成しています。ここで聴ける「音」や、「音の鳴り 方」、「音の配列」は、先述通り作者自身の感情によるものであり、それは未発達で原始的であると思っています。

プロフィール  66 年 3 月生まれ。
12 歳頃にビートルズ(というよりジョン・レノン)の「レボリューション 9」を聴いた時、強い感銘を受け、自らも 「音」そのものを録りためてテープレコーダーを 2 台使い「音の採食」を楽しむ。しかし、リズムを取る事に興味を持ち15 歳でドラムを始めてから、「音の採食」は自分の中では埋もれて行くが、様々な音楽を聴いていく中で再び「音の彩 色」として雅趣(懐かしさ)と新鮮さを想い起こす。これがミュージック・コンクレートと言われ、歴史ある立派な芸 術であることを知ったのは 20 年程前で、以来作っては捨てを繰り返しながら今回、初めての電子音楽(と言えるかは疑 問であるが)を創作、出品。 少なからず影響を受けたアーティスト:ピエール・シェフェール、シュトックハウゼン、マイルス・デイビス、フラン ク・ザッパ。

■ 「2006 年度 ACSM 116 賞」発表と授賞式  18:30

■ 招聘作家 上原和夫、中村滋延 両氏によるワークショップとコンサート 19:00

上原 和夫
【ワークショップ】
「コンピュータ音楽の応用領域 〜LOHAS的側面」
ドレーク・ミュージック・プロジェクト(障害者支援のテクノロジー音楽)
環境へのアプローチ(サウンド・インスタレーション)

【コンサート】
1 Pont de l’Alma de Paris パリのアルマ橋(realized at INA-GRM)
曲目解説 この作品は INA-GRM のスタジオで 1998 年に制作された。タイトルはパリのセーヌ川にかかるアルマ橋の 地下鉄の駅名から引用したもので、現代と過去が交錯し、見事に調和したパリの街のイメージを表現するの に相応しいと考えた。音素材には街のノイズ、仮想環境としてのテレビ放送などから収録した音を用い、加 工編集を経てコラージュ風にモンタージュして完成させた。作品の前半はパリの街から得たイメージを、後 半はパリを代表する 20 世紀の画家の一人であったフェルナンド・レジェの絵画から得たインスピレーショ ンを基に作曲した。

2 Eclipse  INA-GRM 委嘱作品 (realized at INA-GRM)
曲目解説 この作品は 1999 年にフランスの INA-GRM(国立視聴覚研究所音楽研究グループ)の委嘱により制作され た。制作作業は主にラジオフランス内GRM116スタジオで行った。素材には四弦琵琶及び薩摩琵琶の語 りを用い、さまざまな加工、モンタージュを行った。これらの素材音の録音には薩摩琵琶奏者、那須錦鈴氏 の協力を得た。映像はコンピュータ・グラフィックスによるもので、映像作家の浦部裕幸氏の協力による。 作品は 2001 年にパリのオリビエ・メシアン・ホールで開催された GRM のシリーズ・コンサートで初演さ れた。上演には約 80 台を超すスピーカーを用いたアクスモニュウム・システムによって行われた。

3 Assemblage 2004
曲目解説 “Assemblage 2004”は自然環境をテーマにしたシリーズ作品として 2004 年に作曲された。作品は5つの 部分により構成されており、それぞれ自然音、人々の会話、琵琶音その他さまざまな具体音によって構築さ れている。音のデフォルメは比較的限定されたもので、できる限り原素材のもつフォルムを活かす形で制作 した。

4 Meteora II メテオラ II (映像及びライブ・パフォーマンスを伴う)
曲目解説 作曲:上原和夫 映像・システム:市川衛 パフォーマンス:阿部希右
この作品は3Dモーション・センサーを用いたライブ・パフォーマンス及びリアルタイムに生成されるCG 映像を伴うメディア・アート作品として構想された。音楽は予め制作されたアクスマティックによる部分と パフォーマーのアクションによってリアルタイムに生成される音響群から構成されている。パフォーマーは 両手に3Dモーション・センサーを内蔵したグローブを装着し、腕の動きや手の平の傾きなどから音の選択 及びヴェロシティやピッチの制御などを行う。 「メテオラ」は、ギリシャ北部の塔のように切り立った奇岩の風景とそこに建つ修道院群につけられたもの で、岩山の高いものは 400 メートルにも及ぶ。

プロフィール 1949 年生まれ。71 年渡米、73 年までニューヨークで創作、公演活動。73 年NYの現代芸術の拠点 The KITCHEN で個展。NYタイムズ紙で音楽評論家ジョン・ロックウェルの好評を得る。83 年ブールジュ国 際電子音響音楽コンクール入賞。84 年アルスエレクトロニカにて作品上演。90 年にミュージック・フロ ム・ジャパン・コンサート委嘱作品でニューヨーク州芸術評議会のグラントを得る。国際コンピュータ音楽 会議 ICMC1993 東京、95 カナダ以降 99 北京まで毎年作曲部門入選上演。ICMC94 コミッション賞審査員。 ICMC96 香港審査員。近年国際交流基金の派遣等によりフランス(IRCAM)、ポーランド、ブラジル、ロ シア、ブルガリア、韓国他で公演を行い好評を得る。
CDに「COSMOS I」(AIR)「Innovation in Contemporary Japanese Composition」(レオナルド社) 「禅問答」(Moon Bridge)「10 時間」(サンフランシスコ現代美術館)、著作に「コンピュータ・ミュージックの世界」(サイエンス社)、「コンピュータと音楽の世界」共著(共立出版)、「CG入門」共著(丸善)等が ある。
現在:大阪芸術大学大学院芸術研究科教授。日本コンピュータ音楽協会代表。

中村 滋延

【ワークショップ】
映像を伴ったコンピュータ音楽における響きの理論

【コンサート】
解 説 映像音響詩 Audio-Visual Poem について

映像音響詩とは私自身が制作した「映像を伴うコンピュータ音楽」を指す言葉であり,私自身による造語で ある。私は作曲家であるが,その映像をすべて自作する。現在のコンピュータのマルチメデイア環境がその ことを可能にしてくれる。したがって映像音響詩は映像を伴うものの、私にとってはその制作作業は作曲作 業そのものである。 なお、映像音響詩にはいわゆる「物語り」は存在しない。もちろん、隠された筋書きめいたものは存在する こともたまにはあるが、その場合でも鑑賞者がその筋書きを追いかけていくことは作者の要求するところで はない。上演時間は概ね 10 分以内と短い。 音楽作品としての映像音響詩の特徴は、言葉・モノ音・音楽が音響素材としてそれぞれ同等の価値で、区別 なく扱われるところにあり,加えて,音響素材が意味を持つところにある。

話し言葉は意味そのものである。 モノ音は、発音源が特定できた場合、具体的意味と結びつく。通常、発音源が映像で提示されることで、発 音源や発音動作が特定でき、それらに関わることがらがその音の意味になる。トントンというモノ音がドア をノックする映像とともに提示されれば、その音は「ドアをノックする」という意味を持つ。映像による 直 接の提示がなくても、人は記憶の中から発音源を想定し、そのモノ音に意味を見出そうとする。 音楽はオブジェ化されて登場する。この場合のオブジェ化は、音楽本来の構造を無視して、音楽を単なる音 響素材として扱うことでもたらされる。オブジェ化されると音楽は本来の構造とは関係なく、曲の途中で突 然始まったり、突然途切れたり、途中の断片が何度も繰り返されたりする。そうすることで音楽の外形が強 調され、外形的類似性からモノ音と同じような意味を持たされる。 こうした音響の意味は,同時に提示される映像の影響を受けて変化する。したがって音響だけではなし得な い音の意味を構築できるところに,映像音響詩制作の魅力がある。 映像音響詩における音響には意味性だけでなく、音楽性も存在する。モノ音に対しても、そこに音楽性を見 出して素材として利用する。例えば、川を流れる水音には「持続する音」という音楽性を見出す。急ブレー キの音には「短くて急激なクレッシェンド」という音楽性を、駆け足には「速いテンポの周期的な反復音」 という音楽を見出すだろう。そうした音楽性をより強調するために,素材となる音響に様々な変調を施すこ とも多い。 音響の音楽性も,映像の影響を受けて変化する。音響の音楽性は「時間」と深く関係しているが,そこに映 像の「時間」が絡んでくると,それはさらに複雑な変化の様相を見せはじめる。

1 映像音響詩《曼陀羅幻想》Audio-Visual Poem “Mandala Fantasy”
2 映像音響詩《ナーガ変奏曲》Audio-Visual Poem “Naga Variations”

曲目解説 これら二つの作品は映像音響詩の特徴をじっかりと意識して作られたものである。ともに 2005 年 3 月に完 成し,その直後に福岡市アジア美術館における「インターメディアスペース: sounding image, moving sound」(2005 年 3 月 10 日〜 13 日)で発表した。 《曼陀羅幻想》は曼陀羅の不思議な魅力を,既存の曼陀羅や作者の空想による曼陀羅を用いて自由奔放に描 いたものである。その映像パートは、一種のアニメーションである。実写映像を引用として用いている部分 も一部あるが、概ね、写真断片をキャラクターとして二次元上で動かすアニメーションの技法で作られてい る。 それに対して《ナーガ変奏曲》の方は実写映像が主に素材として扱われ、アニメーションの技法は表面には 出て来ない。素材は、カンボジアのアンコール遺跡に存在するいくつかのナーガ像と、アンコール遺跡の町 シェムリアップの日常の風景と、「記憶をたどる」ということを象徴するテレビモニターのホワイトノイズで ある。主要素材は、もちろん、ナーガ像であり、それが様々な変調を受けて(つまり変奏されて)出現する。 ナーガ像とは5つないし7つの頭部を持つ蛇神のことであり,天と地,聖界と俗界を繋ぐとされていて,カ ンボジアでは寺院の参道や入り口でしばしば目にする。 音響パートは、《曼陀羅幻想》では歌声の断片を素材化して用いている。つまり声の元の意味やニュアンスを 無視して、音としての外形を重視して用いている。この外形を映像素材の形や動きを際立てるために用いて いる。したがって音自体で音楽的持続を構築することは制作開始時には特に意識していない。とは言うもの の,作り進めるうちに,音楽的持続を形成するという思考法から私自身が抜け出せないことに改めて気付か された。しかしそれは欠点ではなく長所なのだと自身を納得させて作り上げた。 《ナーガ変奏曲》の音響パートで用いられている主要素材はアンコール遺跡やシェムリアップでのモノ音と しての「人の声」や「音楽」である。ここでは、まさにモノ音としての意味やニュアンスが重要視される。 それは例えば、子どもたちが群れて遊んでいる様子、遺跡に見入っている観光客の話し声、市場の喧騒、路 上で演奏される民族音楽、などであり、そうしたモノ音としての意味やニュアンスを表面に出して、映像と 絡み合うのである。他に、テレビモニターのホワイトノイズ、ところどころに現われるコンピュータの音響 合成音による音楽的断片などが、モノ音としての人の声を補うように出現する。いずれにせよ、ドライな音 の使用法の《曼陀羅幻想》に対して、《ナーガ変奏曲》の音の使い方は、意味やニュアンスを重視すると言う ことでウエットであり、情緒的である。それは、この作品が、アンコール遺跡への私自身の個人的な思いに 深く結びついているからである。 《曼陀羅幻想》は6つの部分から成っている。視聴者はこの部分の違いをはっきりと認識することが出来る。 映像のモチーフ・動き,音響のありように明確な差が互いに存在するからである。曼陀羅の原型イメージか ら曼陀羅的なものが形成されていくまでの過程(第1部分から第3部分),実存する曼陀羅から受ける自由な イメージ(第4部分),曼陀羅を生み出した風土や宗教的世界観についての自由な連想(第5部分),図形的 には曼陀羅の形をしていないが曼陀羅的世界を表すもの(第6部分),というように展開されていく。 《ナーガ変奏曲》の本来の構成は、アンコール遺跡の町シェムリアップの日常の風景と、ナーガ像をモチー フとした映像とが、交互に現れるというものであった。そして現われるたびに変調される(変奏される)。し かし、交互に現れるというのが、いかにも図式的になってしまったため、完成作品ではアンコール遺跡の町 シェムリアップの日常の風景をかなり省くことになった。ナーガ像の変奏にはかなり工夫を凝らしたつもり であり、この作品の魅力の柱になるように意図したものである。

3 映像音響詩《ラーマヤナ異聞,その2》Audio-Visual Poem “Another Story of Ramayana No.2”
曲目解説 2004 年にデジタル影絵劇《ラーマの影》(システム・映像:渡辺圭介),2005 年にデジタル影絵劇《ラー マヤナ異聞》(システム・映像:松尾高弘)を制作発表した。いずれも「ラーマヤナ物語」を題材にしたライ ブ・コンピュータ音楽である。 《ラーマの影》の上演システムは,ライトパネルの上でのパフォーマーの手の動きをビデオカメラで撮り, その映像を様々に変調してスクリーンに投影し,その手の動きを発音のためのトリガーに変えて音楽演奏す るものである。 《ラーマヤナ異聞》の上演システムは,パフォーマーの全身の動きを赤外線ビデオカメラで撮り,その動き を映像生成と音響生成のトリガーに変え,スクリーンに映像投影し,音楽演奏するものである。初演の際に は紗幕をスクリーンにし,パフォーマーの動きと映像が重なって見えるように演出した。 《ラーマヤナ異聞,その2》は《ラーマヤナ異聞》の音楽を下敷きにして映像パートを私自身がビデオ作品 として新たに作り直したものである。ライブ演奏のおもしろさが失われる代わりに,映像と音の精緻な結び つきを前面に出すことを意識した作品になっている。 「ラーマヤナ物語」はインド起源の神話的民話で,南アジア・東南アジア全域で広く親しまれている。それ らの地域での伝統芸能の多くが「ラーマヤナ物語」を題材にしている。その筋書きは主人公ラーマ王子の成 長譚である。比較的単純な筋書きであるだけに,地域や国によって様々なバリエーションが存在する。また, 特定の部分だけが拡大されて脚色されることも多く,表面的にはまったく異なった話になってしまっている 様な場合もある。この作品の筋書きは以下のようになっている。
第1部 森の中:国を追放されたラーマ王子とシータ姫が森の中をさまよう。
第2部 誘拐:シータ姫に懸想した魔王ラーヴァナは彼女を誘拐する。
第3部 嘆き:シータ姫の行方を案じてラーマ王子が悲嘆にくれる。
第4部 戦い:猿の将軍ハヌマーンがラーマ王子の味方になり,ラーマ王子はシータ姫を取り返すべく魔王ラーヴァナに戦いを挑み,ついにはラーヴァナを打ち負かす。
第5部 苦悩:シータ姫を取り返したラーマ王子であるが,シータ姫の貞操を疑い懊悩する。
第6部 死と再生:自身の潔白を訴えるためシータ姫は火の中に身を投げる。しかし神はシータ姫を蘇らせ,再びラーマ王子はシータ姫と結ばれる。 ただし,セリフもナレーションも字幕も一切使われず,また映像においては抽象的形象が中心になっている ために,その筋書きは象徴化されたものとなっている。ここは純粋に映像と音を楽しんでほしい。 なお,映像の素材として利用したのはカンボジアの大型伝統影絵劇スバエク・トム(Sbaek Thom)の影絵人 形の写真とその上演記録映像(筆者撮影)である。

プロフィール 1950 年大阪生まれ。同志社高等学校入学直後から田口はるみにピアノの手ほどきを受ける。1969 年愛知県 立芸術大学音楽学部入学。作曲を石井歓,中田直宏に,ピアノを山崎孝に師事。在学中より日本音楽コンク ール作曲部門2度の入賞(1971,1973 年)を果たし,1974 〜 76 年 DAAD 奨学生(西ドイツ政府給費生) として国立ミュンヘン音楽大学に留学。2年間,作曲を W.キルマイヤーに,現代音楽分析を D.アッカーに 師事。帰国後 1977 年愛知県立芸大大学院修了。その後,国際ガウデアムス作曲コンクール,日本交響楽振 興財団作曲賞,日本音楽集団作曲賞,「今日の音楽」作曲コンクール,国立劇場舞台芸術作品賞などのコンク ールの入選入賞多数。交響曲 3 曲,管弦楽曲 8 曲を含み,作品数は 100 曲を超える。なお,2006 年 10 月 12 日東京芸術劇場にて管弦楽作品《交響詩「ラーマヤナ・愛と死」》の初演を予定している。 多様な創作活動の中で際だつ点は,視覚的要素を構成に取り入れた音楽作品の存在である。視覚的要素とし て舞台上のパフォーマンスを扱ったミュージック・シアターと,視覚要素として映像を扱った映像音響詩の 二大領域で活発な創作活動を行っている。特に視覚的要素と聴覚的要素の結びつきにコンピュータを積極的 に応用することによって「音楽系メディアアート」というジャンルを確立し,注目を集めている。それらの 作品は ICMC(International Computer Music Conference)音楽部門(1991,95,97,2001,03 年),国際 メディアアート賞(ドイツ,1994,95,98 年),ライトイメージアート賞(イタリア,1997,98 年)などで上 演・上映されている。なお,ここ数年は東南アジアの伝統芸能とその素材となっているラーマヤナ物語に惹 かれ,それらを素材にした音楽系メディアアートを制作している。 これまで愛知県立芸術大学非常勤講師,同志社女子大学専任講師,京都造形芸術大学教授(映像・舞台芸術 学科),九州芸術工科大学教授(音響設計学科)等数多くの教育歴と,ドイツZKM(メディアアートセンタ ー)客員芸術家,日本音楽コンクール(NHK及び毎日新聞社主催)作曲部門審査員等を経て,現在,九州 大学大学院芸術工学研究院教授(音響部門)。

http://www.design.Kyushu-u.ac.jp/~sn/
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