CCMC2004

コンテンポラリー・コンピュータ・ ミュージック・コンサートCCMC2004

Ateliers et Concerts de Musique Électroacoustique CCMC 2004

2004 年 2 月 21 日(土) 22 日(日) 東京日仏学院 エスパス・イマージュ

Samedi 21 et dimanche 22 février 2004
Institut franco-japonais de Tokyo, Espace-images

主催 : 東京日仏学院
音と音楽・創作工房 116(ACSM116)

2004年2 月 21 日(土)

■ オープニング・コンサート16:30~
Concert d’inauguration

成田 和子 Kazuko Narita
吉原 太郎 Taro Yoshihara
土屋 雄 Takeshi Tsuchiya
菅谷 昌弘 Masahiro Sugaya
葛西 聖憲 Masanori Kasai
岡本 久 Hisashi Okamoto
上原 和夫 Kazuo Uehara

■ 映画上映 ミュージック・コンクレートのドキュメンタリー  18:30~
Films documentaires sur la musique concrète

1959 年「一人の男のための交響曲」 ピエール・シェフェール、ピエール・アンリ、ルイ・キュニ、モーリス・ベジャールバレエ団 « Symphonie pour un homme seul» Pierre Schaeffer, Pierre Henry, Louis Cuny, Ballet Maurice Béjart

1960 年「東洋 – 西洋」 ヤニス・クセナキス、エンリコ・フルチニョーニ  « Orient-Occident » Iannis Xenakis, Enrico Fulchignoni

1969 年「迷宮」 ベルナール・パルメジアニ、ピョートル・カムラ « Le Labyrinthe » Bernard Parmegiani, Piotr Kamler

■ ミュージック・クリエーション夏期アトリエ 2003 制作作品コンサート 19:30~
Concert d’Atelier d’été de Création Musicale 2003

清水 淳 Atsushi Shimizu
村木 俊裕 Toshihiro Muraki
長瀬 元 Gen Nagase
鶴田 聖子 Seiko T suruta
西岡 渉 Wataru Nishioka
齊藤 武 Takeshi Saito
平野 砂峰旅 Saburo Hirano
檜垣 智也 Tomonari Higaki

2004年2 月 22 日(日)

■ CCMC 2004 入選作品コンサート part 1 15:30~
Concert des œuvres sélectionnées CCMC 2004 1ère partie

須田 康子 Yasuko Suda
うぶかたさぶろう Saburo Ubukata
金子 雄大 Yudai Kaneko
竹田 薫 Kaoru Takeda
田中 司恩 Shion Tanaka
上山 真貴子 Makiko Kamiyama
神代 怜奈 Reina Kumashiro
マキ・マキ Maki Maki

■ CCMC 2004 入選作品コンサート part 2 17:00~
Concert des œuvres sélectionnées CCMC 2004 2ème partie

かつふじたまこ Tamako Katsufuji
石井 拓洋 Takuyo Ishii
高原 聰子 Satoko Takahara
内藤 正典 Masanori Naito
井澤 岳野 Takeya Isawa
武野 晴久 Haruhisa Takeno
森田 信一 Shinichi Morita

■ 「2004 年度 ACSM 116 賞」受賞式、レクチャー  18:30~
Remise de “ Prix ACSM 116 2004 ” et conférence

受賞作品発表および贈賞

レクチャー:ダニエル・テルッジ
「現在のフランスにおけるアクースマティック音楽創作」 conférence : Daniel Teruggi “ La créaion acousmatique aujourd’hui en France”

■ ダニエル・テルッジ作品コンサート 20:00~
Concert des œuvres de Daniel Teruggi

冬の一瞬(1993) Instants d’hiver

FRAJE,アンプルダンの色彩の記憶(2003) FRAJE, mémoires des couleurs de l’Ampurdan

曲目解説/プロフィール

1-1 成田 和子 Kazuko Narita
蛹(さなぎ) Chrysalide

曲目解説  “Chrysalide – 蛹”に託しているのは、目に見えないところで進行する微細な変動の表現である。眠っているように見える 蛹の内部で、刻々と変容している様子をイメージしてみた。素材となっている音はコンクレートな音が多い。音それぞ れの形態は、すでに変動を表しており、その度合いを強調してみるという方法を試みた。曲の構造は、時の進行と変容 の進行の2つの層の重なりを基礎とする。

プロフィール 1997 年より毎年、Ina-GRM ミュージック・クリエーション夏期アトリエの運営に携わる。 同志社女子大学学芸学部音楽学科助教授、東京音楽大学非常勤講師。

1-2 吉原 太郎 Taro Yoshihara
「土曜日の朝までなんて・・・」

曲目解説 毎週末、時に不本意ながら展開される私の日常、逃避活動に密着し、綴りました。

プロフィール 昭和音楽大学音楽学部作曲学科応用音楽コース卒業、同音楽学部研究生課程修了。山梨大学大学院修了。 作曲を豊住竜志、藤原嘉文、電子音楽を成田和子の各氏に師事。
日本電子音楽協会、全日本電子楽器教育研究会、日本音楽知覚認知学会会員。 昭和音楽大学講師、同短期大学部講師、山梨大学教育人間科学部講師。 現在は音を未来へ託す祝詞シリーズに没頭中。8ch にまで拡張された同シリーズの更なる進化に向けてハイブリッドマ ルチチャンネル環境を研究中。http://www.garaxy.com

1-3 土屋 雄 Takeshi Tsuchiya
トウキョウ・マトリックス

曲目解説 都市というものに関心を持ちはじめたのはいつごろからだったかはよく覚えてないが、多くの都市を訪れるたびにその 内部構造の差異というものに興味があった。今回、長年暮らしている「トウキョウ」という都市をテーマに選んで作品 を制作したのは、この空間に定着しているイメージとは違った、私はここ数年不思議とこの「トウキョウ」にある種の 癒しのようなものを感じているからである。この作品では単にそのイメージや現象といったものを音響詩的なもので表 現するわけではない。リアリゼーションにおいては非常に複雑な言語とも見えるこの「トウキョウ」という都市を構造 化している要素の一つである、その空間における人間の様相をアッサンブラージュ(集合)ではなくアキュムレーショ ン(集積)として表現したものである。
2004 年 1 月に作曲した 2ch のメディア作品。

プロフィール 1968 年生まれ。 東京音楽大学大学院修了。作曲を池辺晋一郎、西村朗、湯浅譲二の各氏に師事。また、IRCAM(フランス国立音響/現代音楽研究所)、コロンビア大学大学院音響研究所でコンピュータ音楽、電子音響を学ぶ。
第 13 回現音作曲新人賞、第 66 回日本音楽コンクール作曲部門に入選。
作品は CDMC、日本音楽集団、トランペット奏者曽我部清典、サックス奏者斉藤隆志リサイタルからの委嘱の他多数発 表されている。また主要作品は NHK-FM 等でも紹介されている。電子音楽分野での活動としては、神戸芸術工科大学 10 周年記念式典の音楽、石川県立音楽堂のチャイムの制作の他自作品、西村朗、野平一郎、松平頼暁作品のプログラミ ング、電子音響を担当する。
現在、東京音楽大学及び同大学院講師。

1-4 菅谷 昌弘 Masahiro Sugaya
Crazy Flower(幽霊溜まり)

曲目解説 乳児の脳を測定していると、様々な音の中でも母国語だけはすでに言語域での反応が現れるという。意味という言語機 能獲得以前に、周波数変化やリズムそのものが何か特別な音響として扱われている事にとても興味を惹かれる。
この Crazy Flower(幽霊溜まり)は尾山裕子さんの詩であり、彼女自信の声により表現された朗読だ。そのような意味 でこれが私の作品であるとは言えないのかもしれない。しかし「詩の朗読」という文脈から切り離し、これが音楽であ るという前提を示すために、作曲として扱っている。 ダンス作品のための音楽として制作したが採用されず、今回が初公開になる。

プロフィール 舞台作品の音楽制作を中心に活動。GONTITI の編曲、NHK テレビ、ラジオドラマの音楽作曲など行う。

1-5 葛西 聖憲 Masanori Kasai
エチュード 2004“オスティナート” Étude 2004 “ostinato”

曲目解説  シーケンサでソフトシンセサイザーの音を操作し素材を作成し、それを再構成することにより音楽を構成しました。 生の音を使わないで作ってしまった初めての作品。同じ音形が音色を変えて繰り返されます。

プロフィール 同志社女子大学教授、京都市芸術大学非常勤講師。

1-6 岡本 久 Hisashi Okamoto
Reconstruction

曲目解説 私はよく音素材を収集するため、録音をしに様々な場所へと出かける。そして録音したものを持ち帰り、後日改めてそ の音を聞き返して見ると、そのときの自分が鮮やかに蘇ってくる。その場から持ち帰ったものは音だけにしか過ぎな い。けれど、そのときに見たものや聞いたもの、匂いや味、触感など五感のすべてと、そしてそのときに感じていた気 持ちまでが再現される。不思議なことにその蘇る感覚は、録音してからむしろ時間が経てば経つほど鮮やかなものとな ってくるのである。 人はよく写真を撮りそれをアルバムに残し思い出とするが、私にとってこうした音の記録はそれと同じような意味を持 っている。もちろん録音したものを作品制作のために利用はするが、私自身の感じたものを再現するものでなければ、 それらの音は、私にとってはあまり大きな意味を持たない。私の創る音響作品は、そうした私自身の思い出の一部を、 人に伝えるために再構築したものなのかも知れない。

プロフィール 大阪芸術大学音楽学科作曲専攻卒業。作曲を原嘉寿子氏、七ツ矢博資氏に師事。和声法および対位法をサルバトーレ・ ニコローシ氏に師事。卒業後、様々な作曲作品の発表活動を行うとともに、電子工学やソフトウェア技術を習得。多様なコンピュータ・ミュージックの作品制作や研究など幅広い活動を行っている。またマイクロコンピュータを用いた独 自の電子楽器の設計・製作なども行い、それらを用いたサウンド・インスタレーション作品の展示やステージ上でのパ フォーマンス、映像などと組み合わせたマルチメディア作品に至るまで独自性の高い多種多様な作品を生み出し続けて いる。
現在、神戸山手女子短期大学表現芸術学科専任講師。

1-7 上原 和夫 Kazuo Uehara
アッサンブラージュ 2004 Assemblage 2004

曲目解説 かねてより、掛替えのない地球の自然環境をテーマに作品作りに取り組みたいと考えてきました。CCMC 2003 にて上 演の“AQUA”は水の循環をテーマとし、2002 の“ECLIPSE”は宇宙の自然現象をテーマとしたものでした。今回の「アッ サンブラージュ」では地球環境の多様な音を素材として創作に取り組みました。(この解説を書く時点では作品制作は 進行形ですが・・・)地球には豊かな自然環境が生み出すさまざまな音、都市が生み出すエネルギーに溢れる音、人々 の叫び、声など多彩な音に満ち溢れています。この不思議に満ちたサウンドを作品として再構築したい、との想いで音 のアッサンブラージュに取り組みます。

プロフィール 72-73 年ニューヨークを拠点に創作・公演活動。73 年 N.Y.で個展。83 年ブールジュ国際電子音響音楽コンクール入 賞。84 年アルスエレクトロニカにて作品上演。90 年 N.Y.州芸術評議会のグラントを得て作品上演。ICMC93, 95, 96,97, 98, 99 作品入選上演。ICMC96 作品部門審査員。近年、国際交流基金の派遣等により欧米、アジア各国で公演。 2001 年の GRM のコンサート・シリーズで委嘱作品上演。80 年代より国際音楽祭を企画・プロデュース。著作に「コ ンピュータ・ミュージックの世界」(サイエンス社)CDに「COSMOS I」、「禅問答」など。 現在、大阪芸術大学教授、日本コンピュータ音楽協会代表。 uehara@osaka-geidai.ac.jp

映画 ミュージック・コンクレートのドキュメンタリー
Films documentaires sur la musique concrète

2-1 1959 年「一人の男のための交響曲」 ピエール・シェフェール、ピエール・アンリ、ルイ・キュニ、モーリス・ベジャールバレエ団
1959 « Symphonie pour un homme seul » Pierre Schaeffer, Pierre Henry, Louis Cuny, Ballet Maurice Béjart

解説 20 世紀の作品およびミュージュック・コンクレート作品として最も重要な位置をしめる作品である。1955 年からモー リス・ベジャールとそのバレエ団による上演がこの作品を広く知らしめることとなった。ルイ・キュニの監督による。

2-2 1960 年「東洋 – 西洋」 ヤニス・クセナキス、エンリコ・フルチニョーニ 1960 « Orient-Occident » Iannis Xenakis, Enrico Fulchignoni

解説 この映画は 1960 年に、ユネスコがにヤニス・クセナキスとエンリコ・フルチニョーニに委嘱し、カンヌの映画祭で上 演された作品である。博物館において、様々な文化を源とした芸術作品を比較し、遠い古代からの影響を明らかにして いる。作曲家クセナキスは、その後、同じタイトルの音楽作品を発表し大成功をおさめている。

2-3 1969 年「迷宮」 ベルナール・パルメジアニ、ピョートル・カムラー 1969 « Le Labyrinthe » Bernard Parmegiani, Piotr Kamler

解説 1960 年、フランス・ラジオ放送に、映像と音における実験的な創作活動を活性化するために研究局が創設された。パル メアジとカムラーのコラボレーション作品であるこのアニメーション映画は、1972 年にオーストラリアのメルボルンで 初上映された。視覚形態、色彩と音の関係をテーマにしている。

3-1 清水 淳 Atsushi Shimizu
picotement

曲目解説  picotement(ちくちくする感じ)は、小鳥がつつく、刺す picoter から派生した語で、フランスの哲学者ロラン・バルト ーは芸術作品の強度 intensité を現すものとして用いました。タイトルには、それを聴く(観る)人々の心のひだに触れ るような、そして心の中に消えないひっかき傷を残せるような作品を作りたいという思いを込めました。

プロフィール 1975 岐阜県に生れる 。1999 東京藝術大学美術学部彫刻科卒業 。2001 東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了 。現在、東京藝術大学彫刻科非常勤講師を勤める。
個展
2002 「アートスカラシップ 2001 現代美術賞最優秀賞受賞作家展」exhibit LIVE – I(東京)
グループ展
2000 「フィリップモリスアートアワード 2000 最終審査展」恵比寿ガーデンホール/ルーム(東京)
2001 「TAMAVIVANT 2001 聞こえますか—美術の脈動が」多摩美術大学/都営大江戸線都庁前駅(東京)
2001 「垂直の時間 彫刻—過去・現在・未来—」東京藝術大学大学美術館陳列館(東京)
2002 「GIFT / WINTER SHOW」SCAI THE BATHHOUSE(東京)
その他
2001 アートスカラシップ 2001 現代美術賞清水敏男部門最優秀賞受賞

3-2 村木 俊裕 Toshihiro Muraki
VOICE

曲目解説 ※結論は<power>が存在してほしいと願う〜アンバランスである〜 ただ毎日がテレビの前で過ぎる〜反復∞〜送信の氾濫〜受信の強制〜奇形現実〜全部ナクナッチャエ♪♪〜TOKYO ON / OFF PROJECT 〜

プロフィール 1977 愛知県生まれ。2000  東洋美術学校視覚伝達デザイン科卒業 卒業制作にて最高賞受賞 銀座にて個展”アカマルニホン”ギャラリー檜 JACA ビジュアルアート展入選。2001  デザインオフィス入社 同年退社。空間デザイン、グラフィックデザインを手掛ける。2002  東洋美術学校給費留学にて渡仏 1 年間パリ滞在。2003  パリにてグル−プ展”EXPO Romanesques ! 03”ギャラリー CINKO。2004 パリにてグル−プ展”EXPO Romanesques ! 04”Comptoir du Marais 開催予定。 現在はグラフィックデザイナー・アーティストとして活動。神奈川県在住。

3-3 長瀬 元 Gen Nagase
ファトラ:ミトログラフィ(がらくたによる神話記述) fatras : mytholographie

曲目解説 音楽出版業界で下請けやってた頃「コンピュータに詳しい」なんてデマを流されたので、誰も信じちゃくれないだろう けれど、コンピュータと音響機器「だけ」を使って作曲したのはこれがマジ最初。でもって夏期アトリエの限られた時間の中で、ある意味偶然生み出された音を気の向くまま積み重ねていったら、こんな風なストーリーができた: あるとき まほうつかいが がらくたのやまにやってきて よこしまな まほうをかけました。すると おれたくぎや さびたあきかんや ちぎれたくさりが はじめて じぶんのおもったとおりに うごけることにきがついて おどりだ したり おとをたてたりしはじめました。そしていつのまにか ひとつにあつまって なにか おおきなうごくものに なり まちにむかって あるきだしました。でも まほうはすぐに ききめをなくして おおきななにかは またもと の がらくたのやまにもどってしまいました。でも そのときのことを がらくたたちは いまも わすれないでいる のです。いつか また ……なんてね。金属音が多少キツ目に入っているので、苦手な方には最初に謝っておきます。初めてなんだから勘弁し て。

プロフィール 1963 年東京生まれ。学習院大学仏文科在学時より作曲と和声法を有馬禮子氏、音楽学を西原稔氏に師事。同学卒業後一 時音楽から離れたが、1991 年〜2002 年にかけて、編集記者として『ムジカノーヴァ』『MUSIC TODAY BIANNUAL』、埼玉芸文財団の機関広報誌など音楽関係の出版に関わる。03 年頃から創作活動に専念、潜りの芸術文化ゴロを自 称する。

3-4 鶴田 聖子 Seiko Tsuruta
香りの記憶 La mémoire olfactive

曲目解説 ふとある香りから、ある記憶が鮮明に思い出される。全く予期なく、えっどうして今?ここで?思いもよらなかった記 憶のフィルムが突然動きはじめる。それは景色だったり、人だったり、その香りでいつも自分の思いだす何かだった り。光の強さや気配や、音や色や気持ちが鮮明になって、奥深くにある記憶が蘇る。また、もう一度、その場所に行き たくなったり、すごくその人に会いたくなったり。この香りに出会わなければ、ずっと忘れられていたかもしれないと いうような気がして、本当に嬉しくなったり。香りが、ふいに、とても個人的な、自分の中にある記憶のオリジナルフ ィルムのスイッチを突然ONにする。一度引き出された頭の中にある記憶の時間は、すごく短い瞬間の出来事を、とて も長く何度も繰り返されるほど魅力的にかえたり、今、昔の時間を自由に行き来したり、その頃の時間にスッと自分が はいってしまったり。自分の頭の中にはいった記憶の時間は、とても自由になって、いろいろな記憶が混じりあった り、全く違うことを思い出したりして、また新しく封印される。またもしかすると、いつか触発されるかもしれない。 不思議な香りの記憶。魅力的だからこのまま深く考えないで、また、いつかふっと出会う香りではじまる記憶のフィル ムを楽しみにしていようと思う。

プロフィール 独学にて電子音楽の作曲をはじめる。 空間音楽、映像音楽、ショー、舞台音楽を担当する。
主な仕事:AQUACHIARA ファッションショー音楽、川瀬敏郎[花の晩餐] 舞台音楽, MIND SCAPE MUSEUM 企画展空間音楽、ORIBE 茶室空間音楽、内海清美源氏物語館常設館空間音楽などを担当する 1999, 2000 年 INA-GRM 夏期クリエーション参加
2001, 2002 年 国際電子音楽フェスティバル FUTURA 参加
2002 年 渡仏 電子音響音楽アコースマティックの作曲法、演奏法をペルピニャン国立音楽院にて、DENIS DUFOUR, JONATHAN PRAGER 各氏に師事。
50 個のスピーカーオーケストラ演奏による演奏コースを研修生として参加。
パリコンサートにて LIONEL MARCHETTI ”MUE”を演奏。
2002 年、 2003 年アコースマティックコンサート SYNTAX 2.2 2.3、3.13.2 作品新作発表(演奏とともに参加) 現代音楽コンサート AUJOURD’HUI MUSIQUES にて、アコースマティック作品を演奏とともに参加。 現在もなお、フランスにて修行中。

3-5 西岡 渉 Wataru Nishioka
コントレール courant-jet

曲目解説 土日は必ず何処かに出かける。川か山か、それでも人の手が入った所に行く事が多い。山と山の間、遠くに民家が小さ く見えるような、何処までも続く田んぼの間のアスファルトを 50 cc のバイクで走る。この乗り物は好きだ。何処か行 った事のない、私の知らない所に行ってみたくなるのだ。しかし人や街を避けて出かけるはずなのに、どうも人の気配 のある所に行ってしまう。 今度は土日より少し長い間出かける事にした。私の全く知らない所だ。言葉も通じないらしい。それは何故か大丈夫だ ろうと思う。後になってそうでもないという事が少し分かる。荷物を持って空港へ、手続きをして飛行機に乗った。 飛行機に乗るのは初めてだ。時速何百キロというスピードは感じない。ただ、ぶち当たる空気と、翼がそれを切るのを 感じた。この乗り物はあっという間に何千キロも飛ぶ。暗い機内の中で、窓の外ばかりずっと見ていた。

プロフィール 1980 年生まれ。東北芸術工科大学在学中。 映像や音を使ったインスタレーションを制作する中、即興演奏、音楽制作を始める。その中で多チャンネル再生の持つ

空間に可能性を感じ、多チャンネル音響作品を制作。同時にビデオ作品のために音楽を提供している。 現在、自転車を使ったインタラクティブ作品を制作中。

3-6 齊藤 武 Takeshi Saito
交差する命路 Alterné de passage

曲目解説 パリ市内や大学宿舎の様々な音の中から興味あふれる音を採取し、日本人である自分を再認識したり、また世界共通の 情感のようなものを表現したかった。スタジオで編集した音を(夢、夜の世界)、戸外で採取した音は(生、昼の世界)としてそれぞれが交差するように構成した。ただ厳格に区分したわけではなく、それらを繋ぐパイプとして、命の 源である水を一貫した音のテーマとして様々に変容させて用いている。

プロフィール 東京芸術大学大学院修了。1989 年第 5 回名古屋文化振興賞(作曲部門第 1 位入選)、2001 年韓国嶺南現代音楽祭招待 作曲家、2003 年インディアナポリス大学招聘作曲家、東アジア現代音楽祭参加、ミュンヘン音楽大学などでも作品が高い評価を得る。現在宮崎大学助教授、日本作曲家協議会会員、九州作曲家協会会員。主な作品に、歌曲集「悩みはイバ ラのようにふりそそぐ」(日本作曲家協議会出版)などがある。

3-7 平野 砂峰旅 Saburo Hirano
深淵と水面… Depths to Surface…

曲目解説 深淵の世界に微かにゆらめく光。深淵から水面へ。水面をたゆたう声、錯綜するさまざまな音。そして再び深淵の世界 へ。
INA / GRM のスタジオ 116 でしか録音できないスタジオの響き(低域のフィードバック音)そして日本の民謡をモチ ーフにした歌、ベネチアの小運河の水音を中心に構成した小品。 歌:菊池 悠子(Yuko Kikuchi)

プロフィール 九州芸術工科大学音響設計学科在学中より、ビデオ、実験映像のサウンドトラックの制作を始める。卒業後、コンピュ ータミュージック、インタラクティブアートなどを手がける。伊奈新佑氏や、小杉+安藤氏らとのコラボレーションによるマルチメディア作品を数多く制作している。 現在、京都精華大学芸術学部 デザイン学科 助教授として教鞭をとる。
第 1 回 Ina-GRM ミュージック・クリエーション夏期アトリエ参加に続き 2 回目の参加になる。

3-8 檜垣 智也 Tomonari Higaki
時のための座標軸 I Les coordonées pour le temps I

曲目解説 僕の見たある夢をきっかけに、この作品「時のための座標軸 I」を作曲した。僕の見た夢とは、可逆的な時の中で、正し いモノの並びが分からなくなるものだった。うまれるずっと昔のまだ人間が今の言葉を持つ前のうめきのような声の表現と唄、記憶の中にある淡い音色の調子っぱずれな夢のピアノ、そして、今現在、耳の横で大きな無神経な雑音をあ げ、まるで思考の邪魔をするドライヤー。それらが脈略なくあらわれ、僕の正しい記憶とその順序をかき乱し、不安に させた。 僕は、「時のための座標軸」シリーズで、記憶を整理し、正しい順序に並びかることを試みようと思う。まず最初に、 僕の記憶の混乱をそのもののを認め、そのイメージを写し取った。(それがこの作品だ)次に、大切な記憶を失わない ために、それらが散らばった白い紙に座標軸を書き、関係性を整理する。(時のための座標軸 II)そして、それをいつ でも新しいモノが書き込めるように、それを手許においておこう。 なんのために、僕達は僕達自身のことを記録し、整理しようと思ったのか? 思い出へのノスタルジーだけのためでなく(それもあるだろう)、その時の正確な自分を知るための方法の一つとして、それが「今」へ繋がっている確かな証拠として、そして「未来」へ繋がる動力の一つとして、僕は記憶をできるだ け正しく記録し、整理していこうと思う。
なお、今回は志賀浩義氏に演奏していただきます。

プロフィール 1974 年山口県生まれ。作曲をデュニ・デュフール(国立ペルピニャン地方音楽院)、岡坂慶紀(愛知県立芸術大学大学 院)、七ツ矢博資(大阪芸術大学)、アクースモニウムをジョナタン・プラジェ各氏に師事。第 5 回ラジオアートコン クール入賞(2002 / La muse en circuit)。第 2 回セルジー・ポントワーズ作曲会議入選(2003)。器楽作品とアクー スマティック芸術を中心に発表しながら、アクースモニウムの演奏活動を行っている。MOTUS メンバー(アクースモ ニウムの演奏担当)。パリ在住。 WEB <http://www.sound.jp/higaki/>

志賀 浩義(Hiroyoshi Shiga)
1974 年山口県生まれ 東京都在住 音響技術専門学校卒業 サウンド・エンジニア
作曲家と「Inner-Ear Project」発足。サウンド・インスタレーション等を制作。インターネット博覧会 愛知県パビリ オン「遊びの企画会議」、遊びのプログラム開発をおこなうグループ「CAFE2002」メンバー。「INA/GRM」夏期アト リエ 2002、CCMC2003 参加。2003 年、神戸で開催された「Digital Music Festival 2003」にて、アクースモニウムで 「夜の虹(作曲:桧垣智也)」を演奏。 現在、エンジニア業の傍ら、アーティストとのコラボレーション、ワークショップの開催等で活動中。

4-1 須田 康子 Yasuko Suda
ゆらゆらぐらぐら

曲目解説 地に足は着いているけれど、でも心はプカプカ浮いているという人が誰でも直面する、している矛盾を私達の普段何気 なく聞いている音を組み合わせることで表現してみたかった。
初めの「プワーン」という音は電車の警笛の音で何も考えずたまたまとった音だったけれど、加工したり重ねたりした 事で意外に面白くなったので主の音としてもってきた。人の声は曲に面白さと緊張感を出したかったので半ば強制的に 友人たちに協力してもらい録音した。色んな方々の協力により初めての作品にしてはなかなか楽しいものになったかな と思う。

プロフィール 1985 年生まれ。富山市出身。現在神戸山手女子短期大学表現芸術学科 1 年生。今年の目標はジャンルにとらわれない曲 を(出来れば)沢山書く!

4-2 うぶかたさぶろう Saburo Ubukata
臨界

曲目解説 ミクロコスモスに内在する物理的な臨界の様を表現した作品、という訳ではない。 抽象事物においては構成要因となる聴取者の感性が根本媒体であるのであり、それを助長するために提示される表題としての「臨界」である。 制作には、五種類のみの音素材を使用した。

プロフィール 1983 年生まれ。東京都世田谷区出身。昭和音楽大学作曲学科 3 年次在籍中。 アカデミックな作曲を学ぶかたわら、映像を伴うアルゴリズミックコンポジションも実践中。
音楽のつくりかたを矢内和三・由雄正恒・吉原太郎氏らにおそわる。 http://sound.jp/t-lab/

4-3 金子 雄大 Yudai Kaneko
定 – SADAME –

曲目解説 「ナ ゼ 人 間 ガ イ キ テ イ ル ノ デ ショ ウ カ ?」 「人 間 ガ 生 キ テ ル 事 ニ ハ 何 ラ カ ノ 意 味 ガ ア ル ノ デ ショ ウ カ?」「何 カ 使 命 感 ガ ア ル ノ デ ショ ウ カ?」 「猿 ガ 進 化 シ テ 本 当 に 人 間 に ナ ッ タ ノ デ ショ ウ カ?」 『憧 レ ハ 時 間 ヲ 超 エ ル デ ショ ウ カ?』 「霞 ト 霧 ハ ド チ ラ ガ 濃 イ ノ デ ショ ウ カ?」

プロフィール (19xx〜 ) 目黒区出身
一般的な楽器を使用した楽曲を五線譜から発想する事を主体として、さらに、そこに表わしきれない何らかの<音>を 楽器に融合させる作品を発表している。最近は映像を取り入れた作品も実験的に取り組んでいる。 作曲を豊住竜志、電子音楽を吉原太郎両氏に師事。

4-4 竹田 薫 Kaoru Takeda
imagery
曲目解説 音の持つ想像力に注目して制作しました。音の描く物を感じてみて下さい。

プロフィール 昭和音楽大学 音楽学部 作曲学科 電子音学コース 4 年 電子音楽を吉原 太郎氏に師事。

4-5 田中 司恩 Shion Tanaka
合成の現実と時間

曲目解説 本作品の音が表す世界は、満ち足りた静寂の場所。その静かな空間に現実のざわめきが入り交じろうとする。 この空間の想像された理由は分からないが、確かに存在する現実感がある。目眩にも似た浮遊感は、時を刻む音と共に静寂に帰す。静寂の闇の中を、次の場所を求めてカラクリの灯りが彷徨う。いくつもの灯りが現れ、消えて行く。 そこに辿り着いた時、現実は時間に逆らい進み始める。そこに残されたのは終わりを弾き鳴らす冷たい爪痕。そして静 寂。全ては合成の現実と時間の表す静寂である。

プロフィール 1978 年生まれ。大阪市在住。大阪芸術大学音楽学科音楽工学コース卒業。 学生時代に録音、電子音楽の制作を学ぶ傍ら、現代音楽の世界を知り興味を持つ。また自身によるパフォーマンス、サウンドインスタレーション、映像作家への楽曲提供など活動は多岐に渡る。 最近は自らディジュリドゥ奏者として、アーティストとのコラボレーションや、バンドの演奏に参加。またエンジニア としてインディーズバンドのアルバムの 録音、制作を手掛ける。
大阪電子専門学校非常勤講師
大阪芸術大学非常勤副手

4-6 上山 真貴子 Makiko Kamiyama
流れる 落ちる

曲目解説 この世界は音に囲まれている。音は、どんなに意識して耳を傾けていても、意識せずにいても、私の周りを漂い、流 れ、そして通り過ぎていってしまう。それはまるで、時に逆らうことなくさらさらと流れ落ちていく、砂時計のようなものだ。その中から選ばれた数少ない音の集まり、それが音楽であるのだと私は感じている。 今回の制作にあたり、どうしても私の生まれた環境の「音」を用いたかった。それは、流れ行く時間の中で着実に過去 のものとなっていく「音」たちを私の心の記録に留めておきたかったからかもしれない。たとえこの「音」たちが過去 の生活のごく一部でしかなかったとしても、この「音」に囲まれて過ごしたあの日々を私の身体が忘れることはない。 「音」を「音楽」へと変化させていた時間、それは流れ、落ちていく時をほんの少しだけ巻き戻そうとする、ささいな 悪あがきの時間であったのだろう。

プロフィール 1978 年生まれ。山梨大学教育人間科学部音楽教育専攻卒業、現在同大学大学院教育学研究科 2 年次生。作曲を藤原嘉文 氏に師事。電子音響、ミュージック・コンクレートを成田和子氏、吉原太郎氏に指導を受ける。

4-7 神代 怜奈 Reina Kumashiro
7 gates

曲目解説 祇園精舎の詞をテーマとし、「有」と「無」、混沌から調和へ至る 7 つの段階を表現しようと試みました。
Plug-in で処理された音を音響的要素で組み立ててしまいがちな作曲手法においていかに「詞」を表現するかを課題とし て取り組んだ作品です。

プロフィール 東京音楽大学教育学部卒業 教育学部でピアノ、声楽の他、邦楽演奏家コースを選択。
在学中、薩摩琵琶を中川鶴女先生、また対位法を成田和子先生に師事。 在学中に引き続き、薩摩琵琶を中川鶴女先生に師事。

4-8 マキ・マキ Maki Maki
アナメリック ANAMÉRIQUE

曲目解説 “アナメリック”(7 分 57 秒)は私がマルセイユ地方国立音楽院に在学していた時に作曲した作品であり、DJ、そしてラ ジオ番組制作者として長いあいだ活動してい時期の、私の基本的なツールであった CD に敬意を表する作品である。タ イトルはアナログとデジタルという言葉を組み合わせたものである。作曲するにあたり、CD やビニール・レコードの音 など、様々な装置が再生する音のみを用いた。“Futura”など多数のフェスティバルや、GRM(音楽研究グループ)のア クースモニュームで演奏されている。なお、今回は志賀浩義氏に演奏していただきます。

プロフィール  写真家、ラジオ番組制作者、ミュージシャン、DJ、そして作曲家。 マキ・マキの作品の数多くが国際的なフェスティバルで演奏されている。フランス、ベルギー、日本のフェスティバルにおいて、アクースモニユーム(スピーカーのオーケストラ)の演奏家として知られる。フランスや海外のラベルで、 20 枚以上の CD が出版された。バール・フィリップ、リュック・フェラリ、エリック・M.、ミッシュル・ドネダ、ノ エル・アコテらと活動を共にする。

志賀 浩義(Hiroyoshi Shiga)
1974 年山口県生まれ 東京都在住 音響技術専門学校卒業 サウンド・エンジニア
作曲家と「Inner-Ear Project」発足。サウンド・インスタレーション等を制作。インターネット博覧会 愛知県パビリ オン「遊びの企画会議」、遊びのプログラム開発をおこなうグループ「CAFE2002」メンバー。「INA/GRM」夏期アト リエ 2002、CCMC2003 参加。2003 年、神戸で開催された「Digital Music Festival 2003」にて、アクースモニウムで 「夜の虹(作曲:桧垣智也)」を演奏。 現在、エンジニア業の傍ら、アーティストとのコラボレーション、ワークショップの開催等で活動中。

5-1 かつふじたまこ Tamako Katsufuji
ごはん!-I need some food.-

曲目解説 彼が私の膝に擦り寄って甘える。「ああ、おなかがすいたのね。」と、お皿を手に取り無意識に爪でコツコツと叩く。 「あら?いい音するじゃない。」と、マイクロフォンの前でしばしお皿と戯れる私。と、たまりかねた彼が叫ぶ。「ご にゃ〜ん!」「ああ、ごめんごめん。」

プロフィール 1973 年、大阪生まれ。大阪芸術大学音楽学科在学中より詩や言葉に興味を持ち、テープ作品を作りはじめる。2000 年、GRM 夏期アトリエに参加。CCMC ’01, ’02(東京) FUTURA ’01(パリ) Digital Music Fes ’03(神戸)などで作品を発表するほか、ダンスや芝居とのコラボレート作品も手掛ける。また、『月猫音市場』を屋号とし、様々なステー ジパフォーマンスのサウンドエンジニアリングを生業とする。 http://www.geocities.jp/tsuki_neco/

5-2 石井 拓洋 Takuyo Ishii
AquaNode

曲目解説 笙とコンピュータによる「水と青い光の空間」を想定したサウンドデザイン。本作では、例えば、自然とテクノロジ ー、或は、和と洋といった、異なる要素による交点<node>で生まれる、はかなくもダイナミックな美を強く意識し、そ れを手がかりとしてシンプルに全体を構成した。Cycling’74-Max/MSP や MOTU-DP3 によって様々な信号処理が施さ れた音素材が使用され、多くの層状の素材の上に、水のような流動的な素材が重なり、穏やかで、ある種の耽美な音空 間が展開してゆく。又、現代における自然の美とテクノロジーの美との共存共生への願いから、W.Wordsworth の詩の 朗読も音素材に用いている。<<AquaNode>>とは制作者による造語である。

プロフィール 1971 年北海道生まれ。音楽制作者。2000 年東京芸術大学作曲科卒業。現在までに 2001 年東京芸術大学プロモーショ ンビデオ音楽担当、立川国際芸術祭 2002 オープニングセレモニー音響担当、2003 年第 4 回環境芸術学会大会にて作品発表を行う。その他、企業広告ビデオ BGM、業務用音楽データ制作、Web 用サウンド素材等も手掛けている。東京芸 術大学 AMC 及び武蔵野美術大学非常勤講師。

5-3 高原 聰子 Satoko Takahara
en route

曲目解説 この作品は 2003 年夏から秋にかけて収録した音を中心に制作した。車のエンジンや工事の音など、日常的な街中の喧 噪の他、旅先で拾った鳥や虫の声、川のせせらぎの音などを用いた。まさしく行き当たりばったりに出会った音たちの再構築である。 作品制作を意識すると、より一層「耳を澄ます」ことにエネルギーを傾けざるを得ない。すると新たな発見も多く、ご く日常の、身の回りの音風景も異なる「観点」ならぬ、異なる「聴点」からとらえている自分に気づき、非常に興味深 い。

プロフィール 雅楽?)奏者。東京芸術大学音楽学部楽理科卒業。同大学院修了。笙演奏および雅楽合奏、左舞を故・多忠麿、芝祐靖、 多忠輝、東儀雅季、宮田まゆみの各氏に師事。国内外の音楽祭、演奏会、FM 放送等に出演。古典雅楽のみならず、新作、他ジャンルとのコラボレーションにも積極的に取り組む。GRM 夏期アトリエ 1999、2000 年参加。FUTURA2001 出品。また作品はドイツのラジオ局 WDR にて放送されている(2001, 2003 年)。

5-4 内藤 正典 Masanori Naito
ENVIRONMENT

曲目解説 ミュージックコンクレート作品を制作するときは、いつも自分の身の回りにあるあらゆる音を採集するところから始ま るが、今回は身近な自然界の音を素材に選んだ。
ここ数年は、敢えて“いらない素材”を用いる、というネガティヴな発想で作曲をすることにより、素材を別な角度から 見直し、新たな創作を試みてきたが、今回はまた別な方向を探ろうと考えた。 元の素材と、それを加工したもの、更にその素材を模倣して電気的に作り出したものを重ねていくことにより曲が発展 していく。素材の扱いは構築的ではなく連想的であり、多数の音を重ねている部分も多いが全体的にはモノフォニック である。

プロフィール 洗足学園大学音楽学部作曲専攻卒業。1996 年より作曲家集団“MINUS SIX”に加盟。1998 年に第 2 回夏期アトリエに参 加。
現在、都内を中心に室内楽や電子音楽などの創作活動を行っている。

5-5 井澤 岳野 Takeya Isawa
夏の終わり、ブランコの下に蜜柑が一つ

曲目解説 夏の終わり、ブランコの下に蜜柑が一つ 夏の光に照らされ何日もそこに置かれた蜜柑。その黄色い皮に包まれた球体の中には、過ぎ行く時が残したいっぱいの思い出とともに夏の生命が溢れている。 この曲は一昨年、夏の終わりとともに逝ってしまった猫のチコに捧げられる。

プロフィール 昭和 35 年千葉生まれ。桐朋学園大学作曲科卒業。 平吉毅州,三善晃氏に師事する。現在母校および明治学院大学でソルフェージュ、音楽理論において後進の指導にあた る。

5-6 武野 晴久 Haruhisa Takeno
Broken machine

曲目解説 私の住む一宮市は、かつては織物の工業都市であった。今でも市内のあちこちに工場跡と見られる建物が散在してい る。稀にではあるが、機械の重く力強い音を耳にすることがある。SLの機関車を彷彿とさせる重量感がある。かつて は日本の経済を支え成長させてきた功績を思うと、ただの騒音として聞き流すことができないような愛着に似た感情を 覚える。今、新世代の機械はスマートで静かに新しい生活を創りつつ、かつて人間にしか出来なかったような仕事も正 確にこなしてしまう。もう活躍することのない頑固で不器用な機械は、日本のあちこちで、ただ朽ち果てる時を待って いる。

プロフィール 愛知県立芸術大学卒業。同大学院音楽研究科及び研修科修了。Ina GRM ミュージック・クリエーション 2000 に参加。 近年のコンピュータ作品には 2000 年「Two Sounds」、2001 年「Trip」、2002 年「Beat of the wind」がある。現 在、愛知県立芸術大学、名古屋芸術大学などで後進の指導にあたる。

5-7 森田 信一 Shinichi Morita
Ayame

曲目解説 コンピュータの発達に伴い,ミュージックコンクレートや電子音楽の制作が徐々にコンピュータ化されてきたと思いま す。この“Ayame“でも,素材音を採集し,それを波形編集ソフトで加工した後,サウンドのマルチトラックソフトで組み上げる方法をとっています。 特殊な設備や環境がないと,電子音楽やコンピュータ音楽の制作に関わることができないという状況から,徐々に技術 が発達し,それによって誰にでも機会が与えられるようになっくる。そこで初めて、技術的問題に煩わされることなく 音楽の内容に集中して制作することができるというような変化が、これまでにいくつか起っているのではないでしょう か。

プロフィール 江崎健次郎氏に電子音楽を学ぶ。1972 年以降,同氏の主宰するグループ「音響デザイナー協会」に所属し,1973 年〜 1979 年まで“音展”(音の展覧会)に参加・出品。その後,東京学芸大学大学院で作曲を専攻。
1984 年〜1990 年:グループ「パッケージ 21」で作品発表。1990 年〜1998 年:星の王国一座,1998 年〜2001 年: バンド Titania で作品発表。

7-1 ダニエル・テルッジ Daniel Teruggi
冬の一瞬(1993) Instants d’hiver

曲目解説 私にとって冬は、後ずさりをする季節のように感じる。冬の間に考え企て、実行に移る。そしてそれらが実を結ぶこと を期待する。ここ何年かの冬は、引き出しに入りっぱなしになっていた計画や、日の目をみなかった音楽が機運を得る 時期となった。アイディアや完成しかけの音楽が、冬の仕事の大切な瞬間となった。引き出しを開けてみると、物忘れ のほこりが積もりはじめていて、期待に反して、使い古しの擦り切れて垢だらけの音があった。でも新たな芽となりそ うなアイディアの気配はあった。私はこれらを長いこと観察し、音の過去や自分の過去に思いを馳せ、なぜこれらが帰 結に至らなかったのかを考えた。新しい文脈でこれらに息吹きを与えてみると、バラバラだった音が均整を取りはじめ た。音はそれぞれの物語性を乗り越え、新たな瞬間を得た。音の存在は現在のものとなり、過去は未来へ移行した。冬 の現実的な瞬間を表すこの作品の多様性は、さまざまな源や状況、循環性、そしてオマージュにある。

7-2 ダニエル・テルッジ Daniel Teruggi
FRAJE,アンプルダンの色彩の記憶(2003) FRAJE, mémoires des couleurs de l’Ampurdan

曲目解説 私は年に何度も北カタロニア地方に訪れる。サルバドール・ダリが住んでいたところである。この地方の土の色や風 は、風景に奇妙な存在感や輪郭を与える。“FRAJE”は“JAFRE”のアナグラムであり、この作品が初演された町である。 その時は日没、この土地の風景が見渡せる高い塔の上であった。この作品は描写的な、または寓話的な要素も持たな い。一種の組曲であり、時には舞踏的、または内省的な面を持つ。色彩感がそれぞれの楽章を際立たせている。

プロフィール 1952 年アルゼンチンに生まれる。1977 年よりフランスに在住。作曲家、研究者、フランス国立視聴覚研究所(INA)の研 究と実験部門のディレクターと音楽研究グループ(GRM)のディレクターを兼任する。国際現代音楽協会(SIMC)のフラ ンス支部の会長も勤める。
パリ第 8 大学の芸術とテクノロジーの博士号を有する。パリ第 1 大学にて“音と視覚芸術”のセミナー、パリ第 4 大学に て“新しいテクノロジー”のセミナーを担当する。
60 曲を超す作品は、メディアに固定された電子音響音楽作品、小編成のアンサンブルとテープ、あるいはリアルタイム 音響加工作品などである。ヨーロッパやアメリカで CD が出版されている。アクースマティック音楽や音響空間構成、 音響認知心理学に関する多くの論文を発表している。
電子音響音楽作品
SPHÆRA(Eterea, Aquatica, Focolaria, Terra),MANO A MANO(Jean Schwarz と共作),INSTANTS D’HIVER,GESTES DE L’ÉCRIT,TEMPO PRIMO,VARIATIONS MORPHOLOGIQUES,FUGITIVES VOIX,IMAGES SYMPHONIUQES, THE SHINING SPACE,SYMPHONISCHE TRÄUME,GIRA GIRA
混合作品(器楽とテープ)
E COSI VIA(ピアノとテープ),LE CERCLE(ピアノ、フルート、クラリネットとテープ),WINDTRIP(サキソフォ ン、ホルン、クラリネット、テユーバと YamahaDX7),XATYS(サキソフォンとコンピュータ Syter),SYRCUS(パ ーカッションとコンピュータ Syter),TEMPO DI BASSO(サキソフォン、コントラバス、バスーンとテープ),SAX- TENUTO(サキソフォンとテープ),GESTES ANCIENS(リコーダー四重奏とテープ),REFLETES EPHEMERES(16 の楽器とテープ),CRYSTAL MIRAGES(ピアノとテープ),PHONIC STREAMS(ピアノ、パーカッションとテー プ),EST(ソプラノ・サキソフォンとテープ),STRUGGLING(パーカッションとテープ)
レコード目録
E COSI VIA, Computer Music Currents 8, Wergo 2028-2 XATYS Ina-GRM INA C 2000
SYRCUS – SPHÆRA Ina-GRM, INA C 1014
MANO A MANO, Célia Records CL 9313 VARIATIONS MORPHOLOGIQUES, Agon
SUMMER BAND – INSTANTS D’HIVER, Ina-GRM
IMAGES SYMPHONIQUES, CRYSTAL MIRAGES, FUGITIVES VOIX, THE SHINING SPACE, Sargasso Records SCD 28033 STRUGGLING, Gastaud
VOIX LEGERES SUR LES FLOTS, Aclama records
RITUEL ELECTROACOUSTIQUE DE L’APPRENTI, Muse en Circuit 02